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母の教え。

先日、というか少し前、うりもさんのスタエフを聴いていて、両親のことを思い返していた。

誰がどう見ても仲良し家族ではあるけど、年に数回ちゃんと喧嘩もして、距離を置いたり、それが長引くこともある。スタエフを聴いた時はちょうどその時だった。



母親は自分の親をとても大切にする人だった。熊本で生まれ育った母は京都出身の父と結婚してから京都へ来た。

熊本に住む母の父、つまり僕のおじいちゃんは畑で獲れた野菜などをよく送ってきていて、母はその度にとても丁寧にお礼の電話をしていた。

熊本まで家族で遊びに行き、京都へ帰ってきた時も、無事に家に着いたことの報告とお礼の電話を必ずしていたことを覚えている。それが夜中でも明け方でも必ずすぐに電話をしていた。親に無事を知らせることが親孝行だと言っていた。おじいちゃんはどんな時間でも必ずその電話に出ていて、親になった今ならその気持ちがすごくわかる。

ある日、いつものように大きな段ボールで荷物が届く。しかしその中には野菜や果物ではなく、チキンラーメンやサランラップや乾電池などがたくさん詰め込まれていた。

母がいつものようにお礼の電話をした時、この食材をどうして送ってきたのかを尋ねていた。するとおじいちゃんは、

「安かったから」

と、一言そう答えたらしい。母は泣きながらお礼を言っていた。小学生の僕にはその涙の訳がわからず、どうして泣いているのかを聞く。

「スーパーで安い物を見つけただけで、遠い街で暮らしている我が子を思い出してくれて、行動に移してくれる優しいお父さんを持った私は幸せ者だから」

たぶん、母はそんなことを言っていた。当時の僕にはまだ理解ができなかったが、これも今ならわかる。

おばあちゃんは僕が幼稚園の頃に亡くなり、おじいちゃんは田舎の大きな家で一人で暮らしていた。母には妹と弟がいるけど、みんな熊本を出て暮らしていた。

僕は新しい家族生活が壊れて、一人暮らしになった。一人暮らしは初めてで、大変なことも今まで甘えて育ってきたこともたくさん知る。その中でも我が子をいつも想う。でも、後回しにしてしまうこともあったり、なかなか行動に移すことは難しいと感じることもあり、時々このことを思い出す。


母とおじいちゃんの関係性が良かったのだと、ある程度大きくなってから思うようになる。母の弟や妹には、おじいちゃんはそんなに荷物を送ったりはしていない様子だった。

きっと、母の言う親孝行、無事の知らせやお礼の電話をきちんとしていたからなのだろうと思う。


母は京都の街をほとんど知らず、移動手段は基本的に自転車だけ。行動範囲がとても狭かったが、おじいちゃんとおばあちゃんの命日と誕生日だけは、綺麗な格好をして電車に乗って高島屋に行っていた。

綺麗な花とおじいちゃんが好きな焼酎、僕と妹にはモロゾフのチーズケーキと551の豚まんや御座候を買ってきていた。

そんな親想いの母から、親子というものを教わっていると思う。僕も親孝行する姿を息子に見せておこうと、離婚する前も、面会交流の時も実家には行くようにしている。


離婚前、こんなことがあった。

元妻と子供と実家で夕食を食べていた時、元妻が自分の亡き父親のことを少し小馬鹿にしながら話していた。そして◯◯◯さんと、自分の父親を名前でさん付けで呼んでいた。母が嫌な顔をしながらも我慢しているのが見えていたが、母は思わず口にしてしまう。

「死んでいなくなってもお父さんはお父さんって呼んであげなさい。誰のおかげでここまで大きくなれたと思ってるの。ちゃんと感謝しなさい」

突然強めの口調でそう言った母に、元妻はぽかんとしながら、

「そんなに怒ることですかね?」

と、少し困った様子で笑いながら言った。すると母は、

「我が子として迎え入れてるから言ってるの。他人やったら、この人は親不孝者で絶対に我が子にも大事にされない人やなって放っておく。あなたも子供に感謝されたいなら親に感謝しなさい。そんなふうに呼んだらダメ」

そんなことを言った。母の考えもわかるけど、いきなり強めの口調で言われた元妻が困ることもすごくわかるのですぐにフォローに入ろうとしたが、元妻は静かに泣き始めた。

元妻は父親だけでなく学生時代に母親も亡くしている。忘れていた母の愛が寂しさに直撃したのだろうか。

「…お母さんありがとう…お父さんごめんなさい」

と、素直に静かに呟き泣き崩れた。母はそんな元妻を見てもらい泣きする。まだ4歳くらいだった僕の息子は、大好きでいつも優しいおばあちゃんが真剣に怒ったことにびっくりしたのか、何も言わずに静かに座っていた。僕はというと、



なんだこのリーズナブルなヒューマンドラマは…



と、思わず笑いそうになる。





…ん?٩(๑❛ᴗ❛๑)۶


だってね、仕事から帰ってきて疲れてて、ご飯食べてる時にそんな展開になったらね…普通に笑っちゃうよ。

変な空気感に耐えられなくて立ち上がった僕に、

「しんちゃんも座ってちゃんと聞いてなさい」

と、なぜか僕を叱った母。
僕は照れ隠しでふざけてみた。

「おかあさん、いつも、ありがとう」

卒業式風の棒読みでそう言ってみた。すると母はなぜか涙を流した。


リーズナブルじゃねぇな。これはチープだ。
なんてチープなヒューマンドラマだ。

そう思った。





今度、母が好きなパンでも買って行こうと、ついでにまぁお父さんにもなんか適当にお菓子でも買って行こうと思った。親とは仲直りできました。


どうも、企画が終わってから記事にする男です。
うりもさん、ありがとうございました。

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