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執筆実績:外国人技能実習制度の問題点と課題

※5年以上前の情報に基づく記事です。

外国人技能実習制度は、現在の人手不足の日本にとって、なくてはならない制度です。現在、外国人労働者の数も右肩上がりで増え続け、そのうちの多くの割合で外国人技能実習生として来日し、貴重な労働力となっております。
しかし、その有効性ゆえに様々な問題や課題を持った制度ともなっていることは忘れてはいけません。特に外国人技能実習制度を利用して外国人労働者を雇用することを考えている経営者の方は、特にその問題点を認識しておく必要があります。
外国人技能実習制度の問題点と課題についてまとめてみました。

外国人が日本を訪れる機会が増えた

まず、外国人技能実習制度の問題を考える前に、日本に来る外国人の数について考えて見たいと思います。
街を歩いていても、観光などで来日したと思われる外国人の数は、数年前とは比べ物にならないぐらい増えていると感じることはないでしょうか?
日本語ではない言葉を話している人たちを見かける機会も随分増えたと感じます。
これは、政府や地方自治体が観光を主力産業とすべく、海外の国々に日本の観光をアピールしていることが成功しているためです。
場所によっては観光地に訪れる人の大半が外国人というような場所も珍しくなくなってきました。
それだけ外国人が日本を訪れているということになります。

今の日本は外国人の働き手がいないと成り立たない社会になっている

外国から見ても日本は身近な国になってきているため、日本で働きたいと考えている外国人、時に中国、東南アジアの国々の人が増えています。
それと並行して、現在の日本では、人口減少による人手不足が深刻化し、業界によっては日本人で働く人が見つからないというようなところも出てくるようになりました。
しかし、現在の日本の入国基準では、単純労働を行うための在留資格は存在しません。いくら人手が足りないからと言って、ちょっとした仕事を手伝ってもらうために外国人を連れてくるというのは、現行の入国管理法では違法となります。
それでも、人手不足と日本人の人口減少をカバーするように成立したのが、外国人技能実習制度となります。

外国人技能実習制度は、期限付きで日本の技術を学ぶ制度

外国人技能実習制度が成立した目的は、人手不足を解消するということとは別のところにあります。
2年から3年の期限付きで日本の職場で経験を積み、母国へ帰国して母国で習得した技能で働きその国の発展に寄与するという、国際貢献が目的でした。
その目的のために来日して、日本で働きながら技能を学ぶという名目で多くの外国人労働者が働くようになりました。
その中には、日本で働くために借金をしたり、母国に家族を残して来ている人もおり、必死で働き大きな戦力となる人も多くいました。
もともとは、国際貢献が目的だった制度だということをまずは説明しました。

外国人技能実習制度を利用したコスト削減

外国人技能実習制度は、雇用契約は実習生を受け入れる企業と行いますが、雇用関係に関する多くのことを監理団体が管理しています。
そのため、簡単に転職することができないというのが外国人技能実習制度の特徴です。
また、知り合いのいない異国の地でなかなか簡単に次の仕事が見つかるというものでもありませんので、実習生の受け入れ企業の経営者が有利な雇用関係となります。
外国人技能実習生に長時間労働を行わせたり、残業代を支払わなかったりなどの違法労働を行っても、実習生は受け入れざるを得ない状況となってしまいます。
こうした状況が出来てしまうと、外国人技能実習生を受け入れると、日本人を雇用するよりも安く済むというイメージができてしまいます。

外国人技能実習生の失踪

外国人技能実習生が、こうした過酷な労働に耐え切れずに失踪してしまうケースもあります。しかし、受け入れ先の企業は新たな実習生を監理団体より受け入れるため、欠員はすぐに埋まります。
そのため、外国人技能実習生の労働環境が改善されず、使い捨てのような状態になってしまうという問題があります。
それとは別の問題で、日本に来たいために外国人技能実習制度を利用する、いわゆる失踪目的の就労も大きな問題となっております。
一度外国人が失踪してしまうと、見つけ出すのは非常に困難です。また、不法滞在する外国人は、まともな職に就けずに犯罪に加担するということも考えられます。
技能実習生として来日して、失踪後に不法滞在として見つかった場合も、技能実習で受け入れた企業や監理団体にはペナルティはありません。
外国人技能実習生の失踪は本人の責任となっており、例え違法な労働のために失踪しても、企業や監理団体にはおとがめなしということになります。

過酷な労働による自殺

外国人技能実習制度は、実習生にとっては逃げ場がない制度と言えます。受け入れ企業が非常に良心的であれば全く問題がないのですが、不法労働を強制するような悪徳企業だった場合、技能実習生は転職することもできず、監理団体にクレームを入れることもできません。
自分の置かれた立場に絶望し、自殺してしまう外国人技能実習生もいることが大きな問題となりました。
現在、こうした自殺は労災として認定され、外国人技能実習生であっても日本人と同じ扱いを受けることができるようになっています。
こうした自殺も、外国人技能実習制度特有の問題で、実習生を日本人以上に追い詰めてしまうという実態があります。

農業、畜産などでの外国人技能実習生の長時間労働

外国人技能実習制度は、農業や畜産などの業種にも適用されております。
多くの場合、労働契約を結ぶ際に労働時間や一日の休憩時間、休日などを規定します。
これは労働基準法に基づく取り決めですが、農業、畜産と言った自然を相手にする業種は、この労働時間にそぐわないということで、適用除外業種となっております。
このため、一日8時間以上働かせた場合でも、時間外賃金を支払わなくても、農業に関しては労働基準法違反とはなりません。
この事実を逆手にとり、農業分野では、外国人技能実習生への残業代未払いの長時間労働が大きな社会問題となりました。
ある地域では、外国人労働者を長時間酷使して、雇用主である農家はいい暮らしをするといった現在の奴隷制度などと言われて、国内外から大きな批判を浴びたこともありました。
この問題も外国人技能実習制度が始まったことと、農業が労働基準法による労働時間の適用が除外されているという二つの制度が折り重なって起きてしまった不幸と言えます。

外国人技能実習制度のイメージが悪い

これだけ多くの問題が発生し、その都度制度改善を繰り返しているとはいえ、外国人技能実習制度に対する世間のイメージは悪くなってしまいます。
例え、制度を悪用していないということを受け入れ企業や監理団体が強調しても、一部の悪いニュースのインパクトが強すぎて、なかなか払しょくすることはできません。
単純に外国人の人手を借りたい、日本人と同じように雇用したいと思っていても、外国人技能実習生を受け入れるということで、「何かまずいことをしているのでは?」と疑いの目で見られてしまうというデメリットが出てしまいます。
これらは、制度を悪用した企業や雇用主、監理団体の責任であるということは言うまでもありません。外国人技能実習制度は、有効な制度のため利用したいと思っている人たちの足を引っ張ることにもつながります。

外国人技能実習制度は問題点や課題が多いが、改正もされている

外国人技能実習制度は、確かに問題点やこれから解決されるべき課題も多く存在します。しかし、主幹省庁の厚生労働省はこの制度を廃止するということは言っておりません。これは、現在の日本にとって、外国人技能実習生は大きな労働力として見ている証拠とも言えます。
その代わり、外国人技能実習生も日本人と同じように雇用するよう、受け入れ企業や監理団体に呼びかけを行っています。
また、制度改正により、悪質な監理団体は監理団体資格の取りやめを行うなど、雇用側の規制強化により、制度の継続を行おうとしております。

外国人技能実習制度により、労働力を確保しよう

外国人技能実習制度は日本の技術力を世界に発信する国際貢献の制度であることをまず認識しましょう。
外国人労働者も日本人労働者と変わらない権利を持っています。これは法律により規定されています。外国人労働者であるから不当な扱いをしてもよいという理由にはなりません。
これから先、日本人労働者だけでは社会を回せない時代が来ると言われています。外国人労働者を上手に活用し、来るべき人材不足に備えましょう。
そのためには、制度の問題点や課題を認識し、不幸の連鎖を断ち切らなければなりません。


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