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パターンではなくプレー原則を。

サッカー、バスケ、そしてバレーボールといったチームスポーツ球技のインプレー中を一言で表現するならば『カオス』である。一瞬先は常に何が起こるか分からない。そんな予測不可能な状態において、プレーヤーとして、そしてチームとしての最適解を出し続けることがゲームに勝利するためには求められる。

そのために必要なのは『パターンではなくプレイ原則』だと言いたい。

『パターン』と『プレー原則』

パターンとは「型」である。もう少し詳しく説明するならば「一定周期の中で繰り返される型」と言えるだろう。

これに対して、プレー原則とはパターンとは似て非なるものである。一言で言うならばプレー上での行動規範・判断基準と言えるものである。

パターンに従ってプレーする場合の最適解は「1」もしくは「0」である。想定していたパターンがゲーム中に起こるならば、それに対する最適解は1つである。そして、想定していないパターンがゲーム中に起こったならば、そこでの最適解は「0=なし」とも言えるだろう。

しかし、プレー原則に従ってプレーする場合は大きく違ってくる。最適解はプレーヤーの数だけあるとも言えるだろう。原則という行動規範の沿ってさえいれば、どのようなプレーをしても良いのである。もっと言うならば、最適解は無数に存在しているとも言えるだろう。

パターンで動くプレイヤー

パターンに従ってプレーするとはどんなものだろうか?

おそらくそのプレーヤーは特定の状況下(パターン)でしか、有効なプレーをすることができないだろう。自身が想定する範囲外のパターンが目の前に出現した際には、自身で判断してプレーすることができない。なぜならパターンで動くプレーヤーは基本的に思考停止しているからである。本来、思考力をもっていたとしてもパターンを埋め込められることを繰り返しているうちに、ロボット化していくのである。

また退屈な反復練習を何回も繰り返すことによって、かなり多くの複数パターンを身に付けたと思っていたとしても、ゲームの瞬間瞬間の判断の中で最適パターンを選択し実行することができるか?という疑問も残る。

プレー原則で動くプレイヤー

プレー原則に従ってプレーすると言うと、「プレーヤーの思考やクリエイティビティーがプレー原則によって制限されてしまうのではないか?」と思う人もいるかもしれない。

しかし、それは間違いである。

ゲームで勝つために必要な一定程度の制限(プレー原則)によって、プレーヤーのクリエイティビティーは発揮されるのである。

スポーツから少し離れるが、こんな例はどうだろうか。

スティーブ・ジョブスが創業したアップルという会社がある。創業当初、画期的な新しいコンピューターを創ることに成功したが、その開発に必要とされる資金や人材等、十分な環境が揃っていたとは言い難かった(実際、創業時のオフィスは自宅ガレージであった)。しかし、様々な制限の中で彼の創造性が爆発して世界を変えるようなコンピューターが生まれたとも言える。

もし、当初から潤沢な資金があって優秀な人材を雇えるような環境が揃っていたとしたらどうだったのだろうか。制限があったからこそ、彼は自分の創造性を存分に発揮できたとも言えるのではないだろうか。

プレー原則という一定の制限によって、それぞれのプレーヤーが持つ味(創造性)が発揮されるというものだ。そして、プレーヤーはプレーを重ねる中で思考し、さらに自身のクリエイティビティーを高める。また、相手チーム目線から見てもパターンではなく、各プレーヤーの持つ味がある想像的なプレーに対応することは難しいだろう。

プレー原則規定の重要性

本記事では、「パターンではなくプレイ原則を」というテーマで書いてきた。

しかし、大前提として規定される「プレー原則」がプレーヤーの思考やクリエイティビティーを最大限引き出せるようなものであることが極めて重要である。

ゲームでの勝利に結びつかないようなプレー原則はもちろん言語両断であるが、プレーの自由度を著しく損なうような制限の強いものであってもいけないし、チームに所属するプレーヤーの持ち味を消し去ってしまうようなものであってもいけないと思う。

また、育成カテゴリーにおいてプレー原則を設定するのであれば、上位カテゴリーに上がった際に通用しないような期間限定的なプレー原則や、あまりに特徴的なプレー原則というものも好まれないうように思う。

プレー原則の設定には、そのチームの、コーチの、そしてプレーヤーの哲学や理念というものが表れてくるというものである。


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