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小学生カテゴリにおける育成に必要な考え方(1)

つい先日、リガーレ仙台ジュニアの小学生チーム(U 12)が公式戦に初めて参加し、準優勝しました。私自身も昨年4月よりコーチング等で関わらせていただいたこともあり、またU 12のコーチとも日々チームの状況やチームの目指すべき方向性についてディスカッションをしてきていたこともあり、大会で結果が出たことは大変うれしく思いました。

ただ、結果が出たことに対する喜びもありますが正直それ以上に、チームとして大切にしてきたこと、当大会に至るまでのプロセスを振り返ってみると、そこにとても高い価値があると感じられたため、それらのことをこの記事に留めておきたいと思います。

チームとして大切にしてきたこと

ポジションを固定せずに、すべてのプレーを経験する

まず、チームの大きな方向性として、ポジションを固定化させずにバレーボールのすべてのプレーを経験するという点を大切にしてきました。日本では、小学生カテゴリにおいてフリーポジション制が採用されており、ローテーション制というバレーボールを特徴づけるルールが免除されています(フリーポジション制について詳しく知りたい方は下記の記事を参照してみてください)。

しかし、フリーポジション制のもとでは、試合での勝利を最優先するとどうしても身長の高いプレーヤーが前衛だけでプレーしたり、バレー経験年数の長いプレーヤーがコート中央でほとんどすべてのボールをレシーブするといった現象が起きがちです。これを私は勝手ながら「フリーポジション制によるポジションの固定現象」と呼んでいます。そして、この現象の問題点は下記の2つに集約されます。

  1. 神経系が著しく発達する時期に経験できるプレーが限定される。

  2. プレー経験の長い(または能力の高い)プレーヤー以外のプレーヤーの「バレーボールをプレーする楽しみ」が奪われる。

バレーボールの導入時期でもある小学生カテゴリにおいてポジション特化やプレーの特化することはプレーヤーの将来の可能性をコーチ自らが摘む獲る行為だと私は思っています。

当チームでは、経験年数や身長、学年など一切関係なく、すべてのプレーを練習することを前提としたプログラムが組まれています。

スモールサイドゲームをベースにした練習をする

スモールサイドゲームとは、少人数、小スペースで行うゲームのことを指します。当チームは、準備・ウォームアップからクールダウンまで込みで2時間の練習を週に2回から3回実施していました。2時間という時間の中で毎回約30分間程度のスモールサイドゲームを2on2や3on3をベースとして実施していました。
スモールサイドゲームを練習プログラムの根幹に据え置いている理由は下記記事の題名にもある通り「ゲームで学び、ゲームを学ぶ」ことがプレーヤーにとって最重要であると考えているためです。

コーチは練習プログラムを組む際には、コート人数やコートサイズなどを中心に制約を加え、変化をつくることで(エコロジカルアプローチ※興味のある方は下記記事を参照ください。)、プレーヤーはそれらの環境に適応しようと試行錯誤をしながらプレーします。

そうした試行錯誤の中でプレーヤーは自らの最適解を見つけ出していきます。当チームにおけるスモールサイドゲームでは、コーチからの指示やティーチングはほとんど行われることはありません。スモールサイドゲームの途中には数度、それぞれのプレーヤー間で話し合う時間が設けられ、コーチが設定したテーマについてディスカッションしたり、ゲームでの振り返りを行ったりしています。

型を教え込むことはしない

当チームのコーチングでは、スパイクフォームやレシーブフォームなど、唯一の正解(型)はないということを強く意識しています。当然ながら、プレーヤーは運動経験の多寡や身体の発達度合い、筋肉のつき具合など一人一人まったく違っています。そのため、当チームのコーチングの考え方として、自分にとって最適なプレー動作は無数の試行錯誤を重ねていく上で自ら掴み取っていくものであるというものがあります。
ただ、一方でそれぞれのプレーを上手に行うために最も合理的だと思われる動作原理というものは存在しており、それは現時点でかなり具体的に言語化されています(現時点で最も体系的にまとめられていると思われるものが下記の書籍となります)。

コーチはこうした動作原理について学び、理解して、これらをできる限りシンプルに説明したり、最も重要と思われるキーワードを活用しながらティーチングするように意識しています。

小学生カテゴリにおける育成に必要な考え方(2)へ続きます。

バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。