ミュトスの雨<神へ捧げるソネット>#88

佐佐木 政治

神よ!
あなたは喋りたがらない

いや ひょっとして 
あなたは語りかけているのかもしれない
たえず 

雨のように
時間のシャワーのように
風の音となって
河の流れる音となって
或いは又
超音波となって

われわれの小さな耳の外で
あなたはささやくのかもしれない

或いは又
他者によって 
不在のものによって
われわれ自身の中の 
見えないエコーとなって
予感によって

あなたの声の中を
歩いているのかもしれない

まず あなたは 朝焼けの雲となってやってくる
歴史の一頁はいつも 
われわれにとっては封切りの庭だから
おごそかな闇の中から 五彩の瑞雲がたなびく

われわれは 二度と同じ朝を迎えない


父・佐佐木政治
昭和6年長野県飯田市に生まれる。飯田高松高校卒業後、大学で仏文学を学ぶことを断念、木曽にて印刷業を営む。生涯、詩を詠み、本を作る。亡くなる二年前に脳梗塞で麻痺や認識障害を患うものの、動かない手を駆使して最後の詩集「神へ捧げるソネット」を手作りした。


>>>>>>>いつもフォトギャラリーから素敵な写真を使用させていただいています。感謝してます。ありがとうございます。<<<<<<  



亡父の詩集を改めて本にしてあげたいと思って色々やっています。楽しみながら、でも、私の活動が誰かの役に立つものでありたいと願って日々、奮闘しています。