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ミュトスの雨<神へ捧げるソネット>#94

佐佐木 政治


神よ 夜ごと あなたへ向けて書くラヴレターのようなものが ぼくの詩なのです
しかし 千年も待ったところで あなたから色よい返事がもらえるとは思わない
そんなことは 夙にわかってはいても せっせとぼくは書く
この世にぼくが生まれ出た 証拠でもあるかのように

遠い遠いむかし 何人かの女の子からもらったラヴレターは
ひょっとしたら あなたからの返事の代筆だったのかもしれない
しかし ぼくは余り熱心ではなく その返事をせっせと書きはしなかった
いまは十分に後悔しているつもりだけれど

ただあなたのような得体のしれない たった一人だけに的をきめて書くことが好きで
複数のラヴレターをもらったぼくは その返事にとまどったに違いない
あるいは書きようがなかったのかもしれない

いまごろ こんなことを告白する奴の馬鹿さかげんを
おくめんもなく披露する男の なんという哀れさ  しかし
馬鹿な奴ほどひたすら ひとすじの道以外にかかわろうとはしないのだ



父・佐佐木政治
昭和6年長野県飯田市に生まれる。飯田高松高校卒業後、大学で仏文学を学ぶことを断念、木曽にて印刷業を営む。生涯、詩を詠み、本を作る。亡くなる二年前に脳梗塞で麻痺や認識障害を患うものの、動かない手を駆使して最後の詩集「神へ捧げるソネット」を手作りした。



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亡父の詩集を改めて本にしてあげたいと思って色々やっています。楽しみながら、でも、私の活動が誰かの役に立つものでありたいと願って日々、奮闘しています。