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ミュトスの雨<神へ捧げるソネット>#104

佐佐木 政治

なぜ 忘れなければ 言葉は出てこないのだろう
打ちのめされたもののあとでこそ 
言葉は生きいきとよみがえる

言葉が残っていては むしろ
広場には不浄の匂いがたち込める
うち消された言葉のあとにこそ一本の山百合が残る

傘はひらかれねばならない 
その中に言葉を囲うものとして
雨が言葉をぬらす前に
傘は言葉の色どりをたしかめる

言葉をぬらすまいとして
傘は高々とひらかれねばならない
あなたの時間の雨を 
遮断しなければならない


父・佐佐木政治
昭和6年長野県飯田市に生まれる。飯田高松高校卒業後、大学で仏文学を学ぶことを断念、木曽にて印刷業を営む。生涯、詩を詠み、本を作る。亡くなる二年前に脳梗塞で麻痺や認識障害を患うものの、動かない手を駆使して最後の詩集「神へ捧げるソネット」を手作りした。


>>>>>>>いつもフォトギャラリーから素敵な写真を使用させていただいています。感謝してます。ありがとうございます。<<<<<

亡父の詩集を改めて本にしてあげたいと思って色々やっています。楽しみながら、でも、私の活動が誰かの役に立つものでありたいと願って日々、奮闘しています。