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ミュトスの雨<神へ捧げるソネット>#85

佐佐木 政治

ときとして 言葉は無愛想だ 
ぼくらにおかまいなしに流れてゆく
ときとして 言葉は無関係の罠を張る
夜空に漲る沈黙の(或いは饒舌の)星となって

おゝ何とその身近な殷賑
笹の葉をすべる結露のように
左右に走りたがる
あふれる涙のように熱くなり ゆがむ

しかし しっかりと枝に結わえられ 
我が身ほどは熱くならない

問うすべもない

遠さはむしろこの地上にある
いやらしい距離は すぐ脇の物影にひそんでいる
人間の言葉は 殊にいやらしい


父・佐佐木政治
昭和6年長野県飯田市に生まれる。飯田高松高校卒業後、大学で仏文学を学ぶことを断念、木曽にて印刷業を営む。生涯、詩を詠み、本を作る。亡くなる二年前に脳梗塞で麻痺や認識障害を患うものの、動かない手を駆使して最後の詩集「神へ捧げるソネット」を手作りした。



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亡父の詩集を改めて本にしてあげたいと思って色々やっています。楽しみながら、でも、私の活動が誰かの役に立つものでありたいと願って日々、奮闘しています。