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ミュトスの雨<神へ捧げるソネット>#90

佐佐木 政治

絶え間なく照らす耕地を あなたの意思の波が押しよせて 
ぼくらは睡る時間とてない
あなたの暗黒に抱かれて睡る あの無防備なベッドが 
渚の砂浜にひき上げられて 攻防の物語にさらされている
蒼宮の傘の下では 儚い暗黒の被膜を剥がされているのだ

ぼくらはたえず うつらうつらと あなたの風と波の音を夢の中に連れ込む
ぼくらの睡りは たえず河口で大洋に注がれて ゆきつもどりつする
現実と夢のあわいで 遠いむかしの子守唄を聞く
過去が未来に巻き込まれて 明るい花束を流れに浮かべる

おゝ どんなあなたの沈黙も ぼくらの静寂を洗い流すことはない
深ければ深いほど かの星たちの叫びが湧きあがる
沈黙が あなたの饒舌で輝くのだ

そのときこそ ぼくらはあなたのベッドに身を投げて
あの無防備なものの中に まるごとの夢を捧げるのだ


父・佐佐木政治
昭和6年長野県飯田市に生まれる。飯田高松高校卒業後、大学で仏文学を学ぶことを断念、木曽にて印刷業を営む。生涯、詩を詠み、本を作る。亡くなる二年前に脳梗塞で麻痺や認識障害を患うものの、動かない手を駆使して最後の詩集「神へ捧げるソネット」を手作りした。


>>>>>>>いつもフォトギャラリーから素敵な写真を使用させていただいています。感謝してます。ありがとうございます。<<<<<<  


亡父の詩集を改めて本にしてあげたいと思って色々やっています。楽しみながら、でも、私の活動が誰かの役に立つものでありたいと願って日々、奮闘しています。