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ミュトスの雨<神へ捧げるソネット>#103

佐佐木 政治

神よ あまりにも錯綜したあなたの枝の難儀 そこで目覚める恍惚よりも 
あなたに打ちのめされる気持ちで ぼくらはここでこそ身体を沈める
あなたとの一切の関係が 断ち切れたところでさえ
あなたの毛布は いつもぼくらの横臥の上にやさしくかぶせられているのだ

深夜にせっせと書きつづられる ぼくらの詩(うた)は
哀願した言葉の爪をさらに研ぎ澄ます あなたへの恋文
敗北からたえず姿勢を立て直し 永遠に土つかずのあなたのランプのもとで
一張りの布が 真摯なぼくらの芸を呼びもどす

ぼくらのヒフが あなたのアレルギーで波立つ この瞬間
あなたの深渕が ぼくらのほや無しランプを冷やしている
いづれにしても かけがえのない賭か 時間の爪を染めているのだ

他者はいつもさびし気に 鏡の中だ
お互いの戸惑いをかくしながら 見つめ合っている
霧の中ではいっそうのためらいが きわだつ後ろ姿となって


父・佐佐木政治
昭和6年長野県飯田市に生まれる。飯田高松高校卒業後、大学で仏文学を学ぶことを断念、木曽にて印刷業を営む。生涯、詩を詠み、本を作る。亡くなる二年前に脳梗塞で麻痺や認識障害を患うものの、動かない手を駆使して最後の詩集「神へ捧げるソネット」を手作りした。


>>>>>>>いつもフォトギャラリーから素敵な写真を使用させていただいています。感謝してます。ありがとうございます。<<<<<






亡父の詩集を改めて本にしてあげたいと思って色々やっています。楽しみながら、でも、私の活動が誰かの役に立つものでありたいと願って日々、奮闘しています。