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わからない

秋の午後、日射しがやわらかく縁側を包んでいる。

古くからの友人が、奥の台所でお茶の用意をしている。

庭にトンボが舞う。

コスモスが風に揺れる。

友人の好みは日本茶だけれど、私のリクエストで紅茶を用意してくれている。

ベルガモットの香りが漂ってくるので、それと知る。

どこかで子どもの声がする。

昭和の歌謡曲を口ずさみたくなる。



友人がゆっくりお茶と茶菓子を運んでくる。

「いきなりでごめん」

「いや、一人でいても暇だもの」

紅茶に光が射し込んで反射がまぶしい。



「そういえば。この前」



ここから先彼女は、先日会った誰かが口にした、「私への攻撃」を丁寧に再現した。



人はなぜ、その場に不似合いな、必要性もない、それでいて殺傷力のある言葉を使うのだろう?

自分が言っているのではない故の責任の不在。

受けた相手は、無防備なだけに、傷が深いことも分った上なのだとして。

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