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自然に身体をなじませること

◆こんにちは。小学校教員のねこぜです。夏休みに登山をしてきました。約10年ぶりの北アルプスの女王燕岳です。燕岳の山頂にある山小屋「燕山荘」のオーナーである赤沼さんのお話が素晴らしかったこと、そして登山をしながら思考整理したことをアウトプットしていきます。


1.自然と身体

 登山は自然を最も身近に感じさせる素晴らしい体験だと改めて感じました。ごつごつした岩肌や大木の根、木道などを片道4時間ほどかけて登ります。周りに生えている木々や、飛び回る虫、聞こえてくる鳥の声は標高が高くなるほどにその様相が変化していきます。北アルプスでは2500メートルを超えると森林限界を迎えます。一気に高い樹木がなくなり、高山植物が姿を現します。自然を身近に感じ、自然の変化を楽しむことができます。

 そのような自然の中に身を置くこと。これが今回強く感じたことです。自然を感じながら、歩く。その過程の中で、汗をかき、足を運び、呼吸する…山に身体を溶け込ませるような感覚です。特に山頂は気温が低く、夜は上着が必要です。夏の暑い日にクーラーをつけて快適過ごそうとするのとは対照的です。それだけではありません。暑い日にクーラーをつけて室内温度を下げる。これは自然をいじって人間に合わせています。

 一方で、山頂の寒さに耐えるために上着を羽織る。これは、自然に身体を合わせています。自然に身体をアジャストさせていくと言ってもいい。山を登りながら身体を自然になじませていく感覚。こうしてみるといかに普段の生活が自然を遠ざけよう、自然を改編しようとしているかが分かります。身体を自然になじませる感覚をこれからも大事にしよう、そう強く思えた登山でした。

2.自然と心

 前述した山小屋「燕山荘」のオーナーである赤沼さんのお話を聞くことができました。登山のマナーや安全管理についての話や、燕山荘の100年の歴史についてのお話も伺うことができました。赤沼さん自身50年、燕山荘に従事しているそうです。お話の中心にあったのは「感動する」ということです。
 登頂した人にしか分からない感動があります。これは身をもって体験しました。山頂からの眺め、夕日や朝日の輝き、満点の星空、雲海…これらは美しい写真でも十分感動できますが、やはり厳しい山道を登ったからこそという味わい深いものがあります。そして、心が感動することでポジティブになれます。笑顔になり、感謝の思いも芽生え…見知らぬ登山客との会話もはずむ…そのようなプラスの連鎖が「感動する」ことに秘められていると仰っていました。
 また、赤沼さんは「自然には何一つ同じものはない」と述べられており、これは養老孟司先生の主張と同じだなと感じました。山の見せる表情もまた、違っているのです。
 北アルプスの山々で見られるものとして、雷鳥という鳥とコマクサという高山植物があります。50年前には、燕岳で雷鳥など全く見られなかったそうです。というのも登山客のマナーが悪く、ゴミのポイ捨ても当たり前にあったのだとか。そこから絶えず環境への配慮を呼び掛けたり、山荘の方々が毎日清掃活動に繰り出したりすることで雷鳥が姿を見せるようになりました。今では、人間慣れした大変珍しい特別天然記念物であると言われ、外国の研究者も観察にきたほど。これだけ人間慣れしているのも日本人が情を尽くし、守り抜いてきたからこそだろうと結論付けられたそうです。次に、コマクサは一輪咲かせるのに20年かかるそうです。その間に、小さくて見えにくい芽(株?)が踏み荒らされることが何度もあり、今群生するようになったのも登山道以外は歩かないようにという呼びかけ、マナー向上によってだそうです。
 このように、自然を慈しむ気持ちを受け継ぐこともまた大事なことであると赤沼さんの話を聞いて感じました。とはいえ、自然を大事にしようという気持ちは何となく当たり前のように流布されています。そこにいかに実感を乗せられるか。それにはやはり、自分の身体を自然になじませる経験、自然に感動する体験が必要なのだろうと考えます。貴重な夏休み、自然を感じる時間を取ることができてよかったです。

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