miércoles, 30 de agosto de 2023

「夜、という名前を猫につけようと思うんだけど」

寝る前のベッドの上で、僕らはそれぞれ両サイドに陣取りながら本を読んだり、スマホをいじったりしていた。
彼女は子猫のショート動画をいくつもスクロールしては、悶絶するように笑い、そして僕に見せてきた。
僕はページを捲ることができずに、もう20分は同じ行をなぞっていた。

「夜?この間は、菜種、じゃなかったっけ?」
「うん、変えた」

彼女はまた違う動画を見て悶絶した。

「黒猫が欲しいの?」
「ううん、普通のやつ」
「普通?」
「うん、普通の。猫、っていう猫」
「で、名前が、」
「夜」

夜は全てを取り込み、そして凝縮させる。
日中の数え切れない雑踏、胸中にある無数の雑念。
それらをまるっと凝縮させて、消すのだ。

「私が夜にぎゅっと顔を埋めるでしょ。そしたら、全部夜が吸い取ってくれるの。」

彼女はリセットされ、夜に抱かれて朝を迎える。

なかなかいいロジックとネーミングだ、と思った。

僕らは慢性的に疲れているのだろう。
夜が暗くてよかった。
見て見ぬフリを許してもらえる気がするから。

夜が実際に我が家に来てくれたら、僕らは夜を二つ手に入れることになる。

悪くないかもしれない。

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