斉藤パナマ

89年生まれ。海外から帰国し、新しい街で暮らし始めました。主夫は色々と考える時間がある…

斉藤パナマ

89年生まれ。海外から帰国し、新しい街で暮らし始めました。主夫は色々と考える時間があるので、こちらを再開することにしました。何か新しいこと、探しています。 saitopanama@gmail.com

マガジン

  • 帰国した主夫、新しい街の記録

    毎日更新していきます。 ゆっくり無理なく。それでいて、少しずつ真摯に厳しく。

最近の記事

jueves, 31 de agosto de 2023

「思ったよりシュッとしてないね」 サーフィンをして、コーヒーを挽いて、バイクに乗って、ギターを弾く人。 と、聞いていたもんだから、写真を見て思わず口に出してしまった。 「ねぇ、それは外見差別じゃない?」 「でも、外見を抜きにして生きていけないでしょ、僕らって」 ぼてっとした体型とスポーツブランドのロゴみたいな眉毛をした男性の写真を見せられた僕は、自分の意見にどうしても疑いを持てなかった。 「でね、彼はドラムも叩けるの」 さらに僕は自分の意見に確信を持った。 別に太

    • miércoles, 30 de agosto de 2023

      「夜、という名前を猫につけようと思うんだけど」 寝る前のベッドの上で、僕らはそれぞれ両サイドに陣取りながら本を読んだり、スマホをいじったりしていた。 彼女は子猫のショート動画をいくつもスクロールしては、悶絶するように笑い、そして僕に見せてきた。 僕はページを捲ることができずに、もう20分は同じ行をなぞっていた。 「夜?この間は、菜種、じゃなかったっけ?」 「うん、変えた」 彼女はまた違う動画を見て悶絶した。 「黒猫が欲しいの?」 「ううん、普通のやつ」 「普通?」 「

      • martes, 29 de agosto de 2023

        「どのツールを探しても出てこないから、ショートメッセージ送ってるんだけど、見れてる?」 これに関しては、僕のせいだ。 海外に出て日本の携帯を使ったり使わなかったりして、5、6年が経った頃、仕事もプライベートも上手くいかなくなったタイミングがあり、日常の糸がこんがらがってきた。 顔がニキビだらけになってきたのをいい機会として、全てを一旦停止させ、煩雑な砂利が水槽の底に沈澱するまで何もしないことにした。 ログアウト、履歴削除、アンインストール。 社会から距離を取るのに、この

        • lunes, 28 de agosto de 2023

          「家を燃やしてしまえばいいじゃないか」 と、本気で友人が言うものだから、僕は飲んでいたコーヒーを吹きそうになった。 あるいは、 「何もかもがうまくいかない、そんな気がする」 と、相談した僕のせいだったかもしれない。 極端で荒削りな相談事には、それ相応の答えが返ってくるということなのだろう。 安いホステルでは水シャワーしか出ないし、高いレストランではパンが上品に食べ放題であるということと、同じ匂いがする。 「何もかもが嫌になったんだろ。そんな時は、マッチを点けて、絨毯に落

        jueves, 31 de agosto de 2023

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        • 帰国した主夫、新しい街の記録
          200本

        記事

          domingo, 27 de agosto de 2023

          お昼寝をする時、彼女はいつも何もかけずに横になり、そして2秒で眠りにつく。寝ついた瞬間、フガフガと口を動かし、そのあとはただスヤスヤと眠り続けるのだ。 今日も僕の家に来た途端、勝手にタンスから服を引っ張り出して身に付けると、それが最初から自分の服であるかのように寝室から現れ、 「じゃ、少し横になるからね」 と言って、ソファで眠った。 それでご機嫌なら、そんなに素敵なことはないと思う。 昔、検察官だった彼女はお酒を飲まない。 「こんな風になったのは初めてなんです」 「

          domingo, 27 de agosto de 2023

          sábado, 26 de agosto de 2023

          空が重たく曇っていた午後、祖父が倒れたと連絡が入った。 僕はスパゲティを食べていた。 誰のためでもない、自分のためだけに茹でたスパゲティだった。茹でた麺をフライパンに移した時にはすでにもうその鍋は綺麗に洗ってしまい、そして軽く乳化させた麺をお皿に移した後にはすぐにそのフライパンも洗い切ってしまうほどに、出際よく作られたスパゲティだった。 日本は夜の3時だった。 ここは昼の1時だった。 ドラマチックな着信音、震える声、時差を超える吐息。僕がもらった連絡はそのどれでもない、一

          sábado, 26 de agosto de 2023

          miércoles, 23 de agosto de 2023

          窓を開けてくるのを忘れた 家の空気は今、完全に停止しているだろう 「この音は換気扇?」 「いや、冷蔵庫だよ」 「そう。2人は仲良し?」 「換気扇と冷蔵庫が?」 「えぇ」 「あぁ、仲良しさ」 昨夜の話を思い出す 窓閉め切ってシーツに包まっていた 空気を動かしていたのは僕ら2人だけだった 枕を使わずに君は横になっていた シワになった服を脇に寄せて、ベッドランプをつけた 小さな羽虫が一匹、行き場のないまま天井の周りを彷徨っていた 彼もまた空気を動かしていた 今はまだ、窓

          miércoles, 23 de agosto de 2023

          miércoles, 23 de agosto de 2023

          シャンタンの練り粉をスプーンで削った アイスクリームみたいに 僕の皮膚も同じように削ってみた 「あなた、血管がすごいね。血が青いみたい」 と、彼女が言っていたからだ スプーンで削った皮膚の裏から溢れたのは 真っ青な血だった 彼女の言った通りだった そして床に落ちた僕の青い血は、溶けてどこかへ消えていった 誰にも本当のことを言えない僕の本当のところのように 溶けて消えていった

          miércoles, 23 de agosto de 2023

          lunes, 21 de agosto de 2023

          余った調味料をくれると言った君は、その中のいくつかの写真を送ってきた。 どれも本当に中途半端に残っていて、まるでそれらはどこにも行き場のない老人たちのように思えた。 僕は、マスタードとみりんと料理酒を選ぶことにした。 明日、その三人の老人が家に来るだろう。 新しい居場所で、すぐに命を終わらせるために。 短編小説集を昼休みに読んだ。 話の内容はあまり覚えていない。手持ち無沙汰になる食後の30分間、誰よりも誠実に寄り添ってくれる。 余計に午後の仕事が嫌になるけれど。 無駄な

          lunes, 21 de agosto de 2023

          domingo, 20 de agosto de 2023,

          「週末は、坦々麺かソーキそばを作ろうと思うんだ。でも、」 「でも?」 「どっちを作ろうか、全然決められない」 「そんなの簡単よ」 彼女の家のソファはアフリカゾウくらい大きくて、僕らは互いに反対側に足を投げ、頭をくっつけるようにして横になっていた。 「どっちも作ればいいのよ」 「だけど、そんなこと」 「いいの。どっちかを選ぶなんて、まずその時点でスタートを間違えていると思わない?二者択一を放棄するの。どちらをも選ばず、でもそこに居続けるの」 wow、二項対立からの脱構築だ

          domingo, 20 de agosto de 2023,

          viernes, 11 de agosto de 2023

          連絡を待つことに対してポジティブかどうか、という議題があそこまで盛り上がるとは思っていなかった。 夕方から始まった飲み会は、もうとっくにピークを過ぎ、このままヌルッと解散するかという時間だった。正直なところ、もう帰りたくなっていた僕は、お腹も一杯でお酒の味もしないくらいに口の中はいろんな味が充満していて、誰がこんな話をし始めたんだろうと恨めしく思いながら、それを思い出せないくらいに酔っ払っていた。 可能性のある限り僕はできるだけ、「ある」方に賭けたいし、それは一つの希望を持

          viernes, 11 de agosto de 2023

          domingo, 06 de agosto de 2023

          「どうして粉薬の方を先に飲むの?まず水を口に入れて、それからそこに流し込めばもっと楽なのに」 2人して風邪を引いた僕らは、声を錆びつかせて床に座っていた。鼻が詰まっているのに鼻水は全く出なくて、彼女は咳をしすぎたせいで腹筋が縦に割れ始めていた。そして僕は少し頬がこけた。 元は彼女が持って来た風邪だった。彼女はそれを治すために僕の家に滞在し始めたのだ。 「風邪、絶対に移したくんだけど、でもどうしても来たくて」 と、ガシャガシャした声で話していたのを覚えている。 そして、

          domingo, 06 de agosto de 2023

          domingo, 30 de julio de 2023

          レモネードを飲もうと近所のカフェに来た。 ワイングラスに浮かんだレモンスライスがクラゲの頭のように見える。ゆらゆらと交差点の脇をすり抜けて、そのまま彼女の中の奥の方まで入っていってしまえと思った。 昨夜、 「みんなにもそうやって言ってるんでしょ」 と、彼女は言った。 そして、僕が 「そんなことはない」 と、言い返してもあまり響いていないようだった。 週末は、金曜日も土曜日も自堕落と放埒を100%の純度で享受してしまったから、皺寄せとしての今日はなかなかハードボイルドなものだ

          domingo, 30 de julio de 2023

          domingo, 23 de julio de 2023

          「It's nothing, it's nothing」 と、しきりに呟いていた彼は、医学部の学生で、休学して旅に出ているんだと話していた。ヨーロッパの東の、小さな国の古い街を彼はとても気に入っていたらしいけど、ちょっと空気を入れ替えないと息が詰まりそうだったらしい。 「で、旅の後でそこに戻っても大丈夫なのか?また詰まるだろう、息」 と、僕が聞くと、 「うん、でもそしたらまたどこかに行けばいいよ。It's nothing, it's nothing」 と、ウィンクをした。

          domingo, 23 de julio de 2023

          domingo, 17 de julio de 2023

          何かを求めて外へ飛び出してきた。僕は1日だって考えることをやめたことはないし、今後もそれは続いていくはずだ。それに、僕は葦でもないし、銅像でもない。生身の人間として、動的にずっと生きていくしかない。 悲しみに明け暮れていたわけでもない。長い間、海外で暮らしてきて、そして帰国した。そして一年半くらいの日本での生活を送った。それは僕にとって懐かしく、しかし同時に挑戦という意味合いも含まれていた。学生が終わってから、日本でまとまった期間を過ごすことが初めてだったからだ。 疲労を

          domingo, 17 de julio de 2023

          2022/09/04(日)

          彼女は午前中からお母さんと出かけてしまい、僕は一人、家に残った。 いい空とジメジメした不快な空気がベランダの洗濯物を包み込んで、汗ばんだ膝の裏を手のひらで拭っては、植物に水を与えた。 新しく始めたアルバイトは孤独な時間が多くて(職場の方々はいい方ばかりだが)、黙々と作業をしていると、不意に、 「おいおい、世界中に僕一人かよ。」 という気持ちに襲われる。窓のない建物からはどこからも外の様子を伺えず、唯一ある1時間の休憩のみが外界との繋がりを感じられる時だ。 商店街へと