2022/09/04(日)

彼女は午前中からお母さんと出かけてしまい、僕は一人、家に残った。

いい空とジメジメした不快な空気がベランダの洗濯物を包み込んで、汗ばんだ膝の裏を手のひらで拭っては、植物に水を与えた。

新しく始めたアルバイトは孤独な時間が多くて(職場の方々はいい方ばかりだが)、黙々と作業をしていると、不意に、

「おいおい、世界中に僕一人かよ。」

という気持ちに襲われる。窓のない建物からはどこからも外の様子を伺えず、唯一ある1時間の休憩のみが外界との繋がりを感じられる時だ。

商店街へと自転車を走らせて、スーパーの格安弁当を買う。アーケードにはそれぞれ好きな格好をして、好きなスピードで歩く人たちがいる。各店の前を通る度、そこだけから冷房の効いた空気に撫でられる。

ベランダからの景色は日曜日の少ない車を乗せて伸びる国道と、コインパーキング。

気長な日曜日にしようと始めた洗濯と掃除で結局汗をかいてしまった。短パンのウエストが不快に感じる。

冷たいシャワーを浴びる。

「世界中に一人かぁ。」

日曜日の何もない昼間、窓のないお風呂場で脳天から水の下に潜った。

気晴らしにどこへ行くこともなく、ベトナム戦争のルポを読む僕の頭には、その前に読んでいた文化人類学の生々しさが残っている。きっと、次に読む本の途中ではベトナムの生々しさを抱くことになるはずだ。

「洗い流そう、洗い流そう。」

ミントの香りが頭皮を包んでいく。泡をできるだけ多く立てて飛行機が迷えるくらいに分厚い空を作った。

ミニタオルでなんとか体を拭き、水道水を一気に体に流し込んだ。背中の汗が踝まで伝って落ちそうだ。

リビングに戻った。あらかじめ付けておいた冷房が僕をギュッと抱き締めてくれる。

いい空とジメジメした不快な気温、文化人類学とベトナム戦争。

世界に一人の日曜日は、一気にその汗をクールにして次の一手を僕に求めてきているようだった。

・・・

今日も夜が来ました。

Good night.

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