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エッチングとドライポイントと歩行。

 銅版画の技法には、マスキングを施した銅の板を腐食液によって溶かし凹凸を間接的に作る、いわゆるエッチングと言われるものと、銅よりも硬い金属の針や刃などで直接凹凸を作るやり方があります。その中でもドライポイントという技法は原始的でありながらとても魅力的な線の表情を得られます。
 素材と素材の出会いが強調されて立ち上がるところはTree In Progress にはぴったりの技法だと思いました。

和紙に刷ってみました。
ごく繊細な線から、滲んだ深みのある線まで。
エッチングが濃さを腐食時間に置き換えて頭で考えるのと対照的に、ドライポイントは力の強弱によって感覚的に表現出来ます。
向かって左に持っているコルクが真ん中の持ち手になっているかっこいい道具。
「ポイント」と言います。
京都、西本願寺の逆さイチョウのドローイングから。
砂入りの楮紙に、菖蒲。


荒地のヒマワリ。

 エッチングの掻き心地は、舗装された道をスニーカーで散歩するような感じ。抵抗感は全くない。むしろ進む道をしっかり意識しておかないと、ふらふらとどこまでも行ってしまう。
 ドライポイントは、荒れた道を裸足で歩くような緊張感があり、歩きづらい。常に足元を気にしながら恐る恐る一歩を出したり、大胆に踏み込んでみたりと、一筆(一裂き?)ずつに意識が集中する。
 上記の印象は、ドライポイントを制作してからエッチングはそうだったんだなぁと感じたこと。
 描く(掻く)瞬間の抵抗感、緊張感は素材に大地を感じるという事でもあるのかもしれません。
 ヒマワリはもう少し刷りで詰めたいな、と感じました。

続く。

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