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紙に刷られた銅版画/紙には残らないその工程から・・・。

◎温故知新
  
 時折報道されるデザイナーや画家の盗作問題。それはSNSで手軽に好みの画像が入手出来るようになった現代らしいニュースかもしれません。
 作家のテーマや技法。その独自性は、解釈や視点のこだわりを突き詰めた表現からなるものです。それは突然現れるのではなく、様々な要因が絡み合って現れてくるもので、その交差点にたまたま立ったのが自分だったという風に感じることすらあります。
 そういう意味では全ての作品はそれ以前のみならず、それ以降の作品とも繋がっています。この交差点からはこんな風に見えたよ、という視点そのものが出来ていく過程こそが作品なのかも。

「空鏡」Sky mirror ガラス絵 


◎銅版画とそれぞれの技法  

 今展は、ある共通点のある2人が開催する展覧会です。 
   元々はどちらの作家も銅版画という古典技法を学び、発表してきました。その後各々がその制作経験を活かしたオリジナル(と言って差し支えないであろう)特殊な技法を生み出しました。
 酸と銅板の化学反応である「腐蝕」。融解と消滅により逆説的に形が生じていくその工程に魅せられた小柳は、腐蝕銅レリーフ。   
 ニードル(針)で暗いワックスを掻き落とすこと、そこから覗く金属の輝きに着目した私(齋藤)は、ガラス絵(多層ガラス絵)
 これらの発想の一因は、明らかに両方ともが銅版画を生み出す際に格闘する銅版との対話の中から得たもの。版画として紙に刷られてしまえば全く表舞台には上がらない一つ一つの工程。しかしそれは、無限の可能性に満ちています。ただ版画を作るための通過点に過ぎないと捉えるか、道中楽しむか、はその作家の「オリジナリティ」と深く関連しています。結果を求める線分的な動きでは、そこに独自の遊びが生まれる余地はありません。
 今展では、それらの技法で制作された作品を中心に、銅版画も展示致します。同テーマ、別技法で表現された計40点以上の作品を楽しんでいただきたいと思っています。  

「波を走る」Run the waves 多層ガラス絵(4層)部分

◎私の作品の技法  

 私、齋藤悠紀(さいとうゆうき)の技法は主に「多層ガラス 絵」です。ガラスの裏側から塗布した暗い色のワックスを針で掻き落とし、描き残された絵を積層し一点の作品に仕立てます。絵の具の代わりに主に箔を使用します。多くの絵画と異なる点は、絵同士の影が落ちたり、色が反射し合い、角度やスポ ットライトの当て方によって幻想的な姿を見せることです。今回は大きいサイズとしては初の5層にも挑戦しました。正面からの写真一枚だけでは伝えるのに無理がありますが・・・↓


「月歩」Walk in the moon 多層ガラス絵(5層)


◎私の作品テーマについて  

 来年の干支でもある兎は、人の暮らす里と神や動物の棲む山 (自然)を身軽に行き来する、境界を超えるものとして捉えられてきた歴史があります。鳥獣人物戯画絵巻の作者もひょっとするとそんな夢想をしながら筆を走らせた結果、兎が人間のように見えたのかも。  
 イースター・バニーは異教の女神として正教会では排除されました。そこから、「秩序から外れた存在」としての性格が付与されたそうです。慌て者と怠け者、両面のイメージがあり、昔話の中のトリックスターとしての活躍は枚挙にいとまがありませ ん。   
 私はそんな兎を、変容する時空表現の鳥獣人物戯画絵巻への連想、また人間から見た文化的な性格イメージの引用として描いています。


「夜行へのいざない」The temptation of the night lines 多層ガラス絵(3層)部分


作品お問い合わせはこちらから。

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