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「ニュートン」銅版画制作動画/腐食

 この制作動画も含め、今回のシリーズ Tree In Progress は自らの撮影ではなく、カメラマンに撮影をお願いしました。
 技法ハウツーのような説明動画や、過度にポップな感じではなく、あくまでも現場のリアルを感じられるような方向性で、とだけお願いしてスタート。
 細かいことは何も言わず相手のセンスに完全にお任せ。

 その中でも今回のこの動画には度肝を抜かれました。一見何も変化がない腐食液の表面をただ撮影するなどということは、決して、「銅版画を制作する人間」には発想すらしないでしょう。

 あるよく晴れた日、自分が腐食液の中に銅版を入れ、家の中に入るといつまで経ってもカメラマンは入って来ない。どうしたのかと思っていましたが、そのまま再度腐食を上げに行ったらなんとまだ彼は撮り続けている!
 驚くと同時に、彼の眼差しそのものがカメラの撮影というものにダイレクトに現れているのだ、とすぐに感じられました。
 行為と行為の合間の水槽に張った腐食液の表面。そこには空を流れる雲が映っていることでしょう。天気が反射したその水面の下では激しい化学反応が起き、金属の板が溶け出し凸凹がまさに刻みつけられている。
 その流れの中に、一瞬私の手が加わり版が出来る。この動画から学ぶことは多いと自分自身が感じました。

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