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「スーパーマリオブラザーズ ワンダー」の感想

 以下の文章は全て個人的な見解です。権利者の方々による指摘や、個人的な気付きによって、予告なく変更・削除する可能性があります。
 また、視界が狭い人間なので、色々とご指摘いただければ幸いです。



前提

  • 全ステージクリア。

  • マルチプレイずみ。

  • エキストラステージは未クリア。

  • ストーリーのネタバレはないが、ゲーム内容に言及するため、一部ステージやバッジの端的な内容が含まれている。



感想

2Dマリオシリーズの役割

 久々の2Dマリオシリーズの新作であり、従来から引き継がれている要素が多いが、本作からの要素として、ワンダーフラワーというギミックが導入されていたり、ゾウマリオのような新しいパワーアップが実装されている。

 また、オンライン/オフラインのマルチプレイにも力を入れており、オンラインでは特に緩い連携を目指した実装がされている。


 そんな新作をプレイして最も感じたのは、マリオの役割を徹底して提供しようとしている、ということだった。

 研究や統計があるわけではなく、個人的な経験談でしかないのだが、幼少の頃にマリオシリーズのような(プラットフォーム)アクションゲームに触れてこなかったプレイヤーは、比較的アクションゲーム全般が苦手になる、という印象がある。

 年齢と関連があるかはわからないが、文化的にも幼少期にこれらのゲームに触れることは、ゲーム文化全体にかなり大きな影響を与えているだろう。そういう意味でも、3Dマリオシリーズよりもさらにわかりやすい(3D酔いなどの問題も発生しにくい)2Dマリオシリーズの新作が継続的に発表される影響は大きいと考えられる。

 実際、あらゆる要素がわかりやすさを重視しているように感じる。

 また、万が一理解できなかったとしても、時間をかけていけば理解したり、クリアしたりできるようになっており、それがゲーマーにとっての物足りなさに繋がっているとしても、ゲーム初心者の方を向いてデザインされていると感じたし、そうであるべきだとも思った。



マルチプレイの面白さ

 そうやって、普段ゲームに触れていないプレイヤー、あるいは、ゲームに初めて触れるプレイヤーにとって重要だと思われるのは、マルチプレイの実装だ。家族や友人に誘われて、というのはよくある入口の一つだ。

 このマルチプレイの実装もぬかりなく、個人的には1人でプレイしている時よりも楽しいように感じた。


 まず、キャラクターが色々と選べるようになっている。

 性別や種族が異なるキャラクターから選べる、という基本は当然押さえていて、その中でもキャラクターごとに性能が異なる。

 たとえば、一部のキャラクターはダメージを受けてもゲームオーバーにならない仕様になっており、ゲームがかなり楽になる。また、ヨッシーはその以前からの特性を受けついでおり、吐き出しなどもできるので、より易化されていると考えられる。

 外見と性能が結びついてしまっているために、たとえば、ルイージでダメージを受けない状態でプレイしたい、という欲求にこたえることはできなくなってしまっているが、マリオシリーズ全体の認識との統合や、パワーアップシステムとの兼ね合いも考えると、良い選択だと感じる。


 また、復帰もしやすい形になっている。

 落下や接触などをしてしまった場合、幽霊のような形になり、その状態ではブロックなどをすり抜けられる。そして、他のプレイヤーなどと接触することで復活することができる。これは以前のマリオシリーズから似たようなシステムが存在してはいたが、プレイへの障壁が軽くなっていると同時に、盛り上がる瞬間もつくっている。

 オンラインモードでは、同じステージをプレイしている他のプレイヤーがゴーストのように表示されている(接触はできない)ことがあるのだが、このプレイヤーがこのゴーストになった場合にも、接触することで復活させることができるし、その逆もしかりだ。

 こういった限られた場での復活のし合いなどで不思議な絆が生まれる瞬間は、昔のMMORPGのようで興味深く感じられた。


 このような形でわちゃわちゃ遊べることが肯定されており、幼くても兄弟や友人たちと楽しく遊べるであろうことは想像に難くなく、実際、大人同士でも十分に面白いやり取りができる。

 また、これは配信などでも面白い瞬間をつくりやすい、という側面も無視できないだろう。



バッジシステム

 キャラクターは1つのバッジを付けることができ、その能力を得ることができる。これは、異なる種類のものを一括したシステムになっているのだ。


 まず、追加のアクションを追加できるバッジが基本になっている。たとえば、帽子をグライダーのように使用できるようになったり、任天堂的に言えばフックショットができるようになったり、という形だ。

 これはステージに攻略に様々なバリエーションを追加している。また、これらのアクションを装備する、つまり、これらが排他的であることによって、複雑性の増加を抑え、プレイとデザインの双方にメリットがあると感じている。


 次に、ボーナスのバッジがある。たとえば、普段は存在しないブロックが現れたり、一部の地形を無効化したり、という形だ。

 これによって、一部のギミックが苦手、ということがあっても、そのステージだけ対応するバッジを使うことができ、クリアしやすくなっている。また、一応、上のバッジとの排他的になっているので、問題なさそうな時には他のバッジを試すことで、補助輪を外すようなこともできる。(単純にボーナスバッジよりもアクションバッジの方が実はクリアしやすい、ということもあると思っており、その試行がしやすくなっている)


 また、逆に制限を課すようなバッジも存在する。たとえば、ずっと走っている状態になったり、姿が見えなくなったり、という形だ。

 これも、デザイナー側からの縛りの提案、という形になっており、プレイヤー自身が縛りを考えるよりも、よりプレイしやすいだろう。

 また、挑戦心の強いプレイヤーは、そのデザイナーからの挑戦を受けて立ち、クリアしたい、という欲求に繋げることもできる。


 このように複数の役割を持っているものを1つのシステムとして実装し、わかりやすく伝えている。



リズムプレイ

 プレイしてみて面白いと感じたものの一つは、音楽に合わせてプレイするようなワンダーやステージだ。

 音楽のテンポというステージとは本来無関係なものが片方の軸に存在し、選択を迫れるのは楽しい、根源的な楽しさもある。音楽を合わせやすいというデジタルゲームの長所を上手く使っている。

 去年話題になった「Hi-Fi RUSH」や「クリプト・オブ・ネクロダンサー」などもそうだが、このようなリズムに合わせたアクションゲームというのは近年、色々なアプローチが試されている分野であり、良いゲームが生まれる土壌があるように感じた。



おしゃべりフラワーの価値

 個人的に本作で最も気に入った仕様は、おしゃべりフラワーの存在だ。

 単純にこのようなシュールな存在や台詞が個人的に大好き、という点も大きいが、ゲーム的な機能としても面白いと感じられた。


 役割の一つとしては、単純に賑やかしだと考えている。

 周囲を見ている限り、最近の子供は『ゲームをプレイする』前に『ゲーム実況を観る』という体験の方を先に行うのではないだろうか。

 ゲーム実況では、実況者(YouTuber / Vtuber など)の反応やコメントなどがゲームを彩っており、リアクションやフリ、オチなど、色々な感情体験が付与され、過大化されている(その良し悪しは別として)と考えられる。

 そうした時、思ったよりもゲームプレイがあっさりしている、と感じられる可能性はあるだろう。

 こういった時の賑やかしとして、つまり、ゲーム側が用意している観客・実況のようなものとして機能していると考えられる。

 また、実況者がこのゲームを実況した時には、このフラワーをきっかけにして、盛り上がりや、やり取りが生まれることも想定され、そういった意味でも存在する価値があるだろう。


 他の役割としては、ヒントとしての存在が挙げられる。

 存在しているだけでも注目を集めることができるし、その台詞にヒントを持たせることができるだろう。実際、そのようなことは多かった。

 また、この時、これが単なる賑やかしとして『も』存在している、ということが大事であるとも感じる。

 たとえば、バイオハザードの新作における『黄色』が話題になったことは記憶に新しい。これは、昇降ができる場所に黄色い目印があるのが、露骨すぎるという話で、似たような話は昔からよく議論されている。

 要は、ヒントが存在する必要は一定数あるが、それが露骨すぎると馬鹿にされているように感じたり、というデメリットが生まれる、というものだ。

 本作は比較的初心者に向けたゲームなので、わかりやすくなってはいるが、上述したような賑やかし、つまり、ゲーム構造には直接的に影響を及ぼさないフレーバーの役割と、ヒント、つまり、ゲーム(の解答)に直結する役割を兼任していることによって、単純な目印ではなくなり、デメリットを緩和できる、という可能性を感じた。


 最後に、これは第四の壁を突破しやすい存在であるとも感じる。

 基本的にストーリーとは関係のない存在(本当に誰? 何なんだよ……)であり、比較的自由な言動が許されている。

 任天堂は、第四の壁にそこまでこだわりがあるメーカーではない、という認識ではある(たとえば、キャラクターの台詞によるアクションの説明とかに普通にAボタンみたいな内容が含まれている)が、やり過ぎると色々と問題があるだろう。特に、近年はアニメ映画がヒットしたこともあり、キャラクター性も強まっていて、こういうメタな台詞を言わせにくいのもある。

 その点、この意味不明な花は『Rボタンを押そう!』というような内容を言った後に、『Rボタンってなんだ?』というような小ボケをかましても問題ない。これも前述の『賑やかし』と『ヒント』の側面があるから、両立するような役割となっている。


 このようにちょっとした役割であるが、それを兼任させ、あるキャラクターに集約させることで、シナジーや、独特の魅力が生まれているように思う。次作にも似たようなキャラクターが登場して欲しい。



ワンダーの弱さ

 プレイしていて、真っ先に思ったことは、とはいえ、言うほどワンダーではないな、ということだった。それはどうしてなのか、考えていきたい。


 まず、上述しているように、初心者へ向けて、わかりやすく、という点が優先されている、ということだ。

 ワンダーというのは、ステージ上に存在しているワンダーフラワーというアイテムを取ることによって、ステージが変化し、その変化したステージの先にあるワンダーシードを獲得することを目的とした小ゲームが開始されるメカニクス、という認識だ。

 その性質上、基本的にそのステージをアレンジするような形となるため、思ったよりも大きな変化は見られない。ビジュアル的に大きく変化しても、結局、やることは2Dアクション(とはいえ、その中でも色々と振れ幅はあるが)であるため、(感情としての)ワンダーを感じることはなかった。

 また、基本的にはアイデア集という形で使い切りが多く、全体的に繋がりがある、という形ではない(贅沢な話ではあるが)。逆に言えば、だからこそ、ワンダーという括り(フレーバー)にされていると言える。

 とはいえ、上述の通り、このゲームはマリオの新作であるからこそ、ワンダーを本当に感じられるようにするような大きすぎる変化、奇抜なステージは向かないと思うし、あくまで一定のプレイ感で進んでいく2Dプラットフォームに、ちょっとしたスパイスとして機能するビジュアルや、ミニゲーム、という形の現状の実装が一番良いだろう。


 マリオの新作としては十分な出来、十二分に役割に答えていると感じられる作品だ。今度も2Dマリオシリーズが定期的に発表されることを望む。

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