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「街コロライフ」の感想

 以下の文章は全て個人的な見解です。権利者の方々による指摘や、個人的な気付きによって、予告なく変更・削除する可能性があります。
 また、視界が狭い人間なので、色々とご指摘いただければ幸いです。



前提

  • 街コロシリーズを初めてプレイ。

  • 4人プレイのみ。



感想

ダイスをトリガーとして拡大再生産のゲーム

 「カタン」に影響を受けていると思われる、拡大再生産のゲームだ。

 各プレイヤーは自身の手番でダイスを1個か2個(選べる)振り、その合計の出目を宣言する。その出目に応じたカード(各カードには、数字が1~2個書かれている)を持っていれば、その効果が発動する。

 これによって、(ゲーム用語としての)金銭を獲得していき、勝利点の付いているカードを集め、特定の点数以上になれば勝利だ。



生産機会の少なさ

 生産施設のカードの中に、4つの種類が設定されている。

 一つが自身のターンの出目にしか対応しない緑のカードで、一つが皆のターンの出目に対応する青のカード、一つが妨害効果(出目を出した相手から資源を奪う)を持つ赤のカード、残りが特殊な条件・効果を持つ紫のカード、といった具合だ。

 そのような条件なのだが、プレイしてまず思ったことは、ダイスによって特定の出目が出る機会がかなり少ない、とよく感じる、ということだった。

 たとえば、「カタン」では、建物(開拓地・都市)を建てた場合、それによって関係が生まれる出目は2~3個あるのが普通だ。ゲーム開始時から開拓地を2つ建てれらることもあり、基本的に5±1個程度の出目に関連した状態でゲームがスタートすることになる。(逆に言えば、そのせいで「カタン」は初期配置が重要な選択であるゲームになっている)

 一方、こちらは3枚のカードを獲得してからプレイすることになるのだが、単純にその半分であり、あまり動作しない印象を抱かせる。加えて、上述したように、他のプレイヤーがその出目を出しても機能しないもの(あるいはその逆)もあり、余計に生産する機会が少なく感じられる。

 また、「カタン」の場合、開拓地を建てるのは、色々な理由(陣地の早取りや、資源・出目の種類、港など)があり、その土地の出目だけが支配的な印象であるわけではない。そのため、たとえば、『8鉄』のために建てたはずの開拓地で、まったく鉄を生産しないようなことがあっても、その他の利益が得られることがほとんどで、あまり無駄をした、という印象は抱かず、単純にランダム性を嘆くような形になる。

 しかし、本作においては、出目と効果が書かれているカードそのものを獲得するわけであり、それが機能しなかった時の印象が強くなる。

 加えて、本作では、紫のカード以外の効果がかなりシンプルになっており、基本的には金銭を生産するだけだ。もちろん、他のカードによる強化などもあるが、基本的に、その期待値は比較的容易に計算出来てしまい、カードの獲得に対しての期待感をあまり抱けなかった。



カード効果によるゲームプレイへの影響

 上述したように、生産の機会自体は少ないのだが、生産施設のカードのコストはかなり低く、基本的には各手番で獲得すること自体はできるような調整になっている。つまり、「カタン」のように初期配置でミスってダイスを振る機械になるようなことはなく、徐々にだとしても、順当に拡大していくことが可能になっている。

 緑や青のカード効果はほとんど単純で、単に金銭を得られるだけだから、それを貯めていって、勝利点や特殊効果のカードを購入する流れだ。

 しかし、この流れを乱していくのが、赤のカード、そして、『運命のいたずら』という特定のカードだ。

 赤のカードは、その出目を出したプレイヤーから金銭を奪うことができるのだが、その効果が強化できるようになっている。特定のタグのカードを集めることによって、強力にすることができるのだ。

 しかし、緑や青のカード自体はそのようになっていない。結果として発生するのは、発動機会の少ない緑や青のカードでせっかく集めていった金銭が、自身の手番の出目によっては、そのほとんどが奪われる、というような体験であり、見ていてあまり良いものだとは思えなかった。生産力よりも、妨害力の方が高い経済になってしまい、期待感が持ちにくい。


 そういった経済の中でも最も強烈なのは、『運命のいたずら』というカードであり、これは自身の手番で、その出目(6)が出た場合、このカードを他のプレイヤーのカードと交換できる、という効果になっている。

 これがかなり強烈な抑止力になっている。

 3勝利点を得られるようなカードはかなりコストが大きく、獲得が難しいが、このカードによって簡単に奪うことができてしまう。また、カードの生産を強化するようなものや、シナジーがあるものもあるが、これにより、妨害が容易にされてしまう。

 なんなら、これの存在によって、たとえば、各プレイヤーが3勝利点の建物を持ってしまうと、複数枚一気に発動して、ゲーム勝利の閾値を超えてしまうようなことすら、簡単に想像できるし、実際にそうなった。

 もちろん、このカードは巡っていく効果としてデザインされているし、そのような勝利点の振り子がこちらに振れた時に勝利できるように、地道な勝利点稼ぎが効いてくる、という側面はあるのだが、『運命のいたずら』の効果が発動した瞬間に勝利する(あるいは、勝利できる)という状況が発生しやすく、ランダム性による勝利だという印象を残してしまう。

 また、このカードが存在することで、強い1枚のカードを獲得する、というような行為が弱くなるので、ゲーム展開が弱くなっているように思えた。

 このカードの影響を逃れるようなカードもあるのだが、コストが重く、前述した赤のカードの影響もあって(もちろん、他プレイヤーの動向やランダム性にもよるが)、そこまで金銭を貯めるのは容易ではなく、そもそも、勝利への閾値も高いわけではないので、金銭がそのような数値になる前にゲームを終わらせることができる(実際にそうなるかは同卓したプレイヤーにもよるだろうが)ので、カウンターとしての意味を感じにくかった。



初心者に向けるための構造とは

 おそらくだが、このような構造は、初心者に向けてデザインされたもののように思える。

 フレーバーとしても、ゲーム的な役割としては金銭ではあるものの、フレーバー(あるいはトークンの形)として『ハート』になっているし、ゲーム全体としても、『都市計画』のようなゲーマーよりと感じられるものではなく、『人生』という一般向けの(あるいは「人生ゲーム」を想起させるような)フレーバーになっている。

 カードの効果がシンプルなのも理解のしやすさには向くし、『運命のいたずら』のようなカードを導入して振れ幅を大きくし、その場の盛り上がりのようなものを重視したからなのではないか。

 街コロシリーズは何作かすでに出ているし、それでもまだプレイしていない人に向けた作品である、と理解することができる。


 ただ、それが上手くいっているかと言えば、疑問符が付くプレイ感だ。

 ゲームに慣れていないからこそ、ハートや趣味というような概念的なものよりも、金銭や建物というような物質的なものの方がやっていることが理解しやすいように個人的には思えるし、『街コロ』というタイトルとも乖離が少ない。『街コロライフ』というタイトルで、『ライフ』の方にフレーバーがよっているというのは、少々把握しにくさがあるように思う。

 また、前述した赤のカードや『運命のいたずら』のようなカードは、ゲームに慣れているプレイヤーこそは何も感じない(経験上よくあること)と思うが、慣れていないプレイヤーにとっては、悪い意味で大きく捉えれてしまう可能性も高い。ランダム性に依存する赤のカードはまだしも、対象を選べる『運命のいたずら』は、その危険性がより高いだろう。

 もちろん、拡大再生産のゲームは、序盤のちょっとした行動で差が付き、それが大きな影響を持つことから逆転しにくい、というような全般的な特徴がある。これは初心者向けとは言えないから、単純なゲーム構造を維持したままで、それを破壊するためには、大きなランダム性やインタラクションを導入する、というようなデザインになっている可能性が高いとは思う。

 しかし、それは逆に、拡大再生産の素直な楽しさを消してしまっているように思うし、そもそも、従来の街コロシリーズが十分に初心者にも受けていたことも考えると、このような変更が必要だったのか、あるいは元々持っていた構造と相性があまり良くないのでは、というのが率直な感想だ。他の街コロシリーズの作品もプレイし、その差を確認したいと思っている。

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