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「ファイナルファンタジーXIV」の極コンテンツに挑戦してみての感想(あるいは戦闘システムに関する感想)

 以下の文章は全て個人的な見解です。権利者の方々による指摘や、個人的な気付きによって、予告なく変更・削除する可能性があります。
 また、視界が狭い人間なので、色々とご指摘いただければ幸いです。



前提

  • 攻略などの情報ではない。

  • アップデートなどで状態が変わる(変わった)可能性がある。
    あくまで、暁月のフィナーレ環境・コンテンツにおける感想となる。

  • 1 年半ぐらい FF14 を続けてきたが、この間初めていわゆる高難度コンテンツに挑戦したので、その時の気持ちを忘れないようにする内容となる。

  • ついでに、下記の以前の記事には収まらなかった戦闘システムに関するメカニクス的な内容を含めた感想となる。

  • あくまで、そのような構造をしているという話をしているので、実体としてそうなっているかどうかは別の話である。



感想

極コンテンツとは

 「ファイナルファンタジーXIV」は現代的な MMORPG で、様々な遊び方を許容しているゲームではあるが、その中心的なコンテンツとして、バトルコンテンツがある、ということには異論がないだろう。

 その中でも高難度のコンテンツとして、極・零式・絶といった 3 種類(+α)の高難度のコンテンツが用意されており、それぞれの難度は異なる。

 高難度と一口に言っても、難度の差は歴然としていて、極はこの中ではかなり優しい方で『メンバーを固定して、長い期間練習を繰り返し……』という遊び方をしなくても、ある程度はクリアできるようになっている。(もちろん、同じ極の中でもコンテンツによって難度の差はある)

 とはいえ、基本的には初見でもクリアできるようになっている一般コンテンツと比べれば、何度もゲームオーバーを繰り返すことを前提としているコンテンツではあり、高難度の括りには属している。



戦闘システムのおさらい

 ここで、FF14 の戦闘システムに関して、簡単におさらいをする。

 各プレイヤーはタンク・ヒーラー・DPS のいずれかに属し、高難度コンテンツは、基本的にそれぞれが 2 + 2 + 4 の計 8 人パーティで行う。

 この 8 人でボスを倒す、ということが目的になっている。

 その中で、大きくやることは以下に分類される。


 まず、自身のロールの役目を果たすことだ。

 詳細は後述するが、タンクは自身の体力を管理し、ヒーラーは敵の攻撃によって凹んだ体力を回復し、DPS は自身のスキルを上手く屈指し、大きなダメージを相手に与える必要がある。


 次に、ギミックをクリアしていくことだ。

 これも詳細は後述するが、敵が繰り出してくる攻撃は多種多様で、それを上手くクリアしていかなければならない。時間に追われる中で様々なギミックをクリアしていく様は良くも悪くも『脳トレ』と言われることがあるが、ちょっとしたパズルを解くようなことをする感覚に近い。


 最後に、ダメージを与えることだ。

 DPS の場合、ここがロールの役割と重複するのだが、他のタンクやヒーラーもダメージを与える必要がある。そのためには、自身の攻撃をよどみなく続ける必要があり、相手の攻撃がないからと言って、何もしなくてよいということにはならないのだ。

 重要になってくるのは、リキャストという仕組みで、一部のスキル・アビリティは一度使用すると、一定時間の後にまた使用できるようになる。つまり、それらを使用可能になるたびになるべくすぐに使用し、何度も使用することや、それを如何に効果的に使用できるかが大事になってくる。

 高難度コンテンツでは、一定時間に一定以上のダメージを与えられなければ、全滅技が使用され、ゲームオーバーとなってしまう。つまり、時間というのが事実的な根幹リソースである、ということになり、ギミックを処理しながら、これを上手くダメージに変換しなければならない、ということだ。


 これらを行うのが、本作の戦闘システムの根幹であると考えている。

 よって、高難度コンテンツでは、これらの精度もより、高いものが求められることになる。

 極コンテンツでは、そこまでシビアでもないのだが、こういったことをほとんど意識せずに遊べる一般的なコンテンツとは大きな隔たりはある。

 自身が操作するキャラクターのスキルをしっかりと把握し、ロールの役割を果たし、ギミックを適切に処理(時には体に覚えさせて)し、攻撃を途切れさせないようにすることが重要になる。これらの難度がどんどん上がっていくと考えることもできるだろう。



ロールごとの構造の違い

 上述のように、ロールごとで行うことが異なるため、それに適したスキル構造をしており、ジョブごとの隔たりをある程度は均している。これによって、ロールの枠さえ合っていれば、(ある程度は)好きなジョブで遊べるようになっており、ジョブを気軽に切り替えることのできる本作が成立していると感じる。よって、ここでは、各ロールの構成に関してみていきたい。


 まず、タンクは、パーティ全体の体力としての役割を担う。

 攻撃スキルは『単純なコンボ+継続バフ』のような構造がメインで、これに加えて、少しだけリソース管理がある。

 タンク固有のメインの役割となるのは、防御バフの使い方で、これを上手く使用することで、体力の減少を抑え、ヒーラーの負担を軽くする(ことで、全体の火力を高めることができる)。

 フルパーティ(8 人パーティ)では、メインタンクとサブタンクに分かれてコンテンツに対応する。敵のメインの攻撃先は1人なので、それを担うのがメインタンクで、そうでない方がサブタンクだ。

 サブタンクが何をするのか、というのはコンテンツによって異なる。

 たとえば、スイッチを行うことがある。スイッチとは、敵の攻撃先を切り替えることだ。敵が強力なデバフをかけてくることがあり、その後でも攻撃がメインタンクに飛んでしまうと、受けきれることができなくなる。そのためにヘイト(敵の攻撃対象を決めるパラメータ)を管理し、対象を切り替えるようなギミックがある時がある。

 他にも、メインタンクにバフをかけたり、雑魚敵の引きつけなどを行う。


 次に、ヒーラーはパーティの体力の回復を担うロールだ。ゆえに最もアドリブが求められるロールと言ってもよいだろう。

 そのため、攻撃スキルの構成はシンプルになっており、継続ダメージの時間管理や、ちょっとした必殺技を使うぐらいで、そこまで複雑性はない。

 一方、回復や軽減のスキル・アビリティは潤沢に用意されており、それらを如何に効率良く使用していくのかが大事になってくる。

 ギミックの処理のミスは、ダメージとして表現されることが多く、それをフォローする必要があるため、リスク管理を行う必要があるロールだ。


 最後に、DPS は他のプレイヤーとは比較的独立しているロールだ。

 もちろん、ちょっとした回復や、バフを行える DPS もおり、純粋な DPS から、サポートよりの DPS まで幅が広く、これはジョブによって異なる。

 しかし、基本的にはダメージを最大化するために、自身のスキルを上手く回していくことを求められることになる。

 また、体力も低いため、ギミックをミスすると、そのまま死亡することに繋がりやすいので、その点を注意する必要もあると言える。



乗算によるダメージ計算によって生まれる構造

 バフが基本的に乗算であるため、面白い効果が生まれていると感じる。

 まず、攻撃に対するバフなのだが、これはダメージ量で考えると 1 を超える数値の乗算なので、なるべく集中させたい。

 たとえば、10% のバフが 2 つある場合、それを重ねて攻撃した方が、それぞれをバラバラに使用するよりも強くなる。

 つまり、これを 1 ダメージを 2 回与えたとして、簡単に説明すると、

1 x 1.1 + 1 x 1.1 = 1.1 + 1.1 = 2.2(重ねなかった総与ダメージ量)
1 x 1.1 x 1.1 + 1 = 1.21 + 1 = 2.21(重ねた総与ダメージ量)

 となり、後者の方がダメージ量が大きいわけだ。

 この例では微々たる差ではあるが、実際は、様々なバフが重なり合うことになるため、その差は意味のある差にはなる。パーティ全体にバフがかかるのであれば、それも上手いことかみ合わせて攻撃したい。

 この集中をバーストと呼び、これが面白い。


 また、これとは逆に防御バフ、つまり、ダメージ量に関して、1 を下回るバフであるのならば、重ねない方がダメージの合計は低い。簡単に言えば、

1 x 0.9 + 1 x 0.9 = 0.9 + 0.9 = 1.8(重ねなかった総受ダメージ量)
1 x 0.9 x 0.9 + 1 = 0.81 + 1 = 1.81(重ねた総受ダメージ量)

 というわけだ。

 しかし、同時に注目すべきは、瞬間のダメージ量は下がっていることだ。

 ここで、体力という閾値のメカニクスが効いてくる。体力は 1 さえ残っていれば生き残りはするのだが、0 になってしまえば蘇生をしてもらわなければならない(ヒーラーさんごめんなさい)。

 つまり、単にバフをばらせばいいわけではなく、集中しなければ耐えらないということもあるのだ。

 乗算という計算の特徴がゲームの方向性を決めているというのが面白い。



8 人パーティであることの意味

 では、これらの高難度コンテンツを 8 人でやる意味はあるだろうか。

 オンラインとは言え、継続的に行わなければならないコンテンツで、8 人も集まらなければいけないのは、障壁が高いと言える。(実際、筆者もそれが一番のネックでなかなか遊べなかった)

 ただ、人数が多いから実装できる遊びもあると言える。


 FF14 のギミックというのは、基本的に位置関係を扱っている。

 予兆が出ているということは、それを回避しろ、ということだし、それに回転のマークが付いていて、敵の攻撃は東側に来るから、ここが安置だ、ということを探るようなゲームであると言える。

 ここで、人数が多いことは有利に働く。

 集合や散開といった基本的な動きができるのはもちろんのこと、4 人で分けたり、2 人で分けたり、2 + 4 + 2 とか、2 + 3 + 3 とかで分けることもできる。様々なやり方ができる。

 特に 2 次元空間で、8 人というのが良い。2 次元があり、それぞれの軸に対して、+ / 0 / - で位置付けして、中心を除くと 8 つになるのだ。ちょうど良く散開ができて、キリが良い。

 実際、マクロと言って、FF14 の高難度コンテンツでは、鍵となるギミックのやり方を文字で示したものを参考にして、動き方を決めることがあるが、9 人以上でその位置関係を表現するのは、なかなか大変だろう。

 また、最近はヴァリアントダンジョンというコンテンツが増え、これは 1 ~ 4 人で遊べるコンテンツになるが、やはり、ギミックのバリエーションが制限されていて、なかなか大変そうだな、という印象を抱かせる。

 8 人というのは合理的で、ギミックのバリエーションも確保でき、後述する部活的な遊びができるギリギリの人数(とは言っても、やはり、大変ではあるが)であるように感じている。



部活的な面白さ

 これらの特徴によって、高難度コンテンツが生み出している体験としては部活的なものが近いのではないか、と感じている。

 極コンテンツでは、野良(コンテンツファインダーという仕組みがあり、自動でマッチングをしたり、その時のパーティ募集に参加したりすること、つまり、一時的なパーティのメンバー)で遊ぶことも多いため、そうでもないと思うが、零式以上になると、固定メンバーで定期的に集まり、コンテンツをクリアしていくのが一般的だ。

 このような遊び方ができるエンターテイメントコンテンツはあまりなく、それが独特の魅力になっているのではないか、と考えている。

 TCG でも、競技勢のプレイヤーが集まり、自身の腕を磨いたり、各大会に遠征に行ったりすることが面白い、と言っている方もたびたび見受けられるが、それに近いことなのではないかと思っている。


 ただし、決定的に異なるのは、オンラインであることと、本番が(構造的には)存在しない、ということではないか。

 オンラインであることに利点はあり、時間さえあればいつでも集まれ、物理的な距離に縛られることがない。結果として、趣向が近い者同士が集まれることもあるだろう。(もちろん、オンラインゆえの問題もある)

 また、部活的なものは、本番に近いものがあるのが、一般的ではないだろうか。大会であるとか、コンクール、発表会のように、明確に異なる場があり、その結果が順位などを決定づけることがある。

 本作では、コンテンツクリアが絶対的な目標である(まあ、実際時間で最速を競う遊び方もあるが、かなり限定されている)。

 また、練習目的で遊ぶこともあるが、実際に練習と本番で遊ぶコンテンツが異なるわけではない。練習目的でやったのにクリアできれば、それはクリアであるし、本番だからと言って、失敗しても問題はない(とはいえ、クリア目的のパーティに練習目的で入るとかはやめよう)。

 こういった差もあり、独自性を感じられる。



いずれクリアできるゲームとは

 また、高難度が意味する位置付けも、他のゲームとは異なる点が見られるように思う。これは、「ファイナルファンタジーXIV」が(すべてのコンテンツではないが)いずれクリアできるゲームを目指して設計されているように思えるからである、と思っている。

 ガチャのような強さに影響を与える課金要素があるわけではないので、ソシャゲの高難度のように、持ち物検査のようにもならない。

 旧式の MMORPG とは異なり、作業量も求めない。低確率で強力な武器がドロップすることもなく、膨大な時間をかけて自身を強くする必要もない。

 むしろ、アイテムの取得には、週制限などがあり、リアルな時間がかかることも多い。つまり、(リアルの)時間の経過と共に、難度が自然と緩和されていくのだ。

 難しいギミックの様々な解決方法が発見され、共有されることも、このリアル時間による緩和に近いと言える。

 加えて、ギミックの多くもプレイしていくことによって、習熟していけるものが多い。体に覚えさせる、ではないが、コツを見つけたり、問題となる箇所が明確化することによって、対応がしやすくなっていく。

 どうしてそのギミックで失敗したか、ということも(最近のコンテンツでは特に)比較的わかりやすくなっており、修正がしやすい。

 そうやって、いずれはクリアできるゲームとしてデザインされているからこそ、高難度と言われるコンテンツであっても、長く、多くのプレイヤーに遊ばれているのではないか。そう感じた。


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