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「トーネードスプラッシュ2」の感想


 以下の文章は全て個人的な見解です。権利者の方々による指摘や、個人的な気付きによって、予告なく変更・削除する可能性があります。
 また、視界が狭い人間なので、色々とご指摘いただければ幸いです。




前提

  • 5人プレイ。

  • 厳密なルールでない可能性がある。

  • 「トーネードスプラッシュ」の1はプレイしていない。



感想

卓上のモーターボートレース

 類似する作品があまりない、個性的なアナログゲームだ。

 プレイヤーはそれぞれ、担当するモーターボート(木駒)があり、それをカードを使って、前方へと進めていく。ターン箇所を示すブイが2つ置かれており、それを目印として、2回のターンが行われる。1周行えば、ゲームが終了し、最も早くゴールしたプレイヤーが勝利する。

 各ラウンドの開始時に現在の順位を確認し、最もゴールに近いプレイヤーから手番を行っていく。手番では、3マス分進むためのカードを手札から出していく。これらのカードは縦長になっており、1~3マスが書かれている。つまり、1~3枚のカードを出すことになる。

 カードは、基本的にその前に出したカードに付ける形で出すことになる。カードには、白い射線が入っており、それに底面を合わせる形でカードを出すか、単にカードの先端にカードを合わせて出す。前者であれば(角度が生じるので)カーブに該当する操舵となり、後者であれば直線状に進むということになる。

 色々と細かい処理はあるが、基本的にはカードを出して、それに沿って駒を進めていき、ゴールを目指していくレースである、ということだ。



カードによる速度と角度の表現

 個人的に、本作の最もよく出来ていると感じた実装がこれだ。

 前述の通り、各プレイヤーはカードをプレイしていき、それがボートの進行を示すことになっているのだが、この設計が素晴らしい。

 まず、『各ターンには必ず3マス進む』という条件を用意し、『各カードに1~3マスと角度を書く』という実装が素晴らしい。

 各カードには、1~3マスが書かれているのだが、そのマス数が大きいほど、書かれている射線の角度が急になっている。これは何の表現なのかと言えば、低速の方が、より急に曲がれる、ということを表現しているのだ。

 つまり、『各ターンには3マスだけ必ず進む』というのは、いわば固定の時間を表現していると言ってよい。そして、その間、どれだけ進むのかというのを『カードに書かれたマスの量とその間の長さ』で表現しているのだ。ターンベースを採用しており、時間が固定になるのだから、距離を変化させることで『速度』を表現している。そして、それが曲がる際の『角度』という要素に紐づいている。とてもシンプルだ。

 多くのレースジャンルの類似作品と比較してみた時、他の作品では、速度のようなステータスを用意し、それによって曲がりにくくなるようなメカニクスを実装していることが多い。

 一方、本作は速度というステータスを持たせることなく、しかし、速度が表現できているし、それがゲーム的に面白い。そして、それが1~3マスと射線が書かれたカードだけで表現しているのだ。これはモーターボートレースという比較的最高速度に到達しやすいスポーツをテーマにしている兼ね合いもあるのかもしれないが、素晴らしい実装だと感じる。



テーマとゲームとの親和性

 おそらく、トップダウンのデザイン(テーマが決まり、それをゲームに落とし込む形のデザイン)だと思うが、そもそもがゲームに向いた題材というべきなのか、構造がよく出来ている。

 基本的にはインコースが有利であるが、カーブする角度がカードによって定義づけられているために、すぐに曲がることができず、ターンの際に膨らんでしまう可能性もある。その逆もしかりだ。

 ターンが2回あることで、1回目の反省を1ゲーム中に生かすこともできるし、ターンと直線のメリハリも効いている。

 先頭のプレイヤーから手番を行うのだが、プレイヤーの駒に重なるようにカードを出せない、というルールにより、先頭が有利だ。これはモーターボートレースを踏襲しているのだろう。

 ただ、先頭であることが単に有利というだけではない。詳細は省くが、先に置かれた(が、まだ進んではいない)カードの上にカードを置くことによって、それを無効化する(有利にしてしまうこともあるが)こともできるようになっている。これが発生するカーブでは、順位が目まぐるしく変わることもあり、盛り上がる。


 また、ビジュアル面での素晴らしさも言及すべきだろう。

 置かれていくカードは、波濤のようなデザインがされており、その先頭に木駒が並ぶ様子は、まさにモーターボートレースといった風体だ。デッキのカードが足りなくなると、(ゲームに影響を与えない)以前のカードは回収されてしまうのだが、それすらも現実に波が消えていくかのようだ。

 同人ゲームということもあり、カード枚数が(5人プレイでも)不足しがちなのは残念だが、その価格と特殊サイズのカードであることを考えれば、むしろ、贅沢な悩みというべきだろう。



テーマとわかりやすさと駆け引き

 一方で、わかりにくいと感じられる部分もある。

 ゲームの開始時には、簡単な競りのようなものを行い、インコースに入る順番を決めた後、スタートダッシュのようなことをするのだが、ここがゲーム中一度しか発生しない一方で、少し煩雑な処理になっていると感じた。

 手札の枚数(初期かつ最大6枚)を減らすことによって、競りを行う(各ターンには3枚補充されるが、最大で3枚使用するので、保持している手札が多いと選択肢が広がる)のだが、ゲームに慣れていないプレイヤーにとっては少し難しいかもしれないし、アナログゲーマーにとっても、ゲームの開始時の競りであるため、これ(インコース争い)がどれぐらい価値があるものなのか測ることは難しく、過剰に加熱してしまうとゲーム中の展開がシュリンクしてしまう危険性もある。

 また、これが決定した後、各プレイヤーは任意の分だけボートをスタートラインから後ろに下げ、そこからカードを3マス分出すことによって、ゲームが開始される。いわば、0手番目のようなことをする。これは、実際のモーターボートレースのスタート方法を再現したものだと思われる(筆者も本作をやるまで知らなかった)が、ゲーム開始時に行う手順としては、少し難しいものだと感じた。

(ボートレース公式サイト 参照リンク)
https://www.boatrace.jp/owpc/pc/extra/enjoy/guide/level1/l1_01_01_04.html

 実際のレースと同じく、これに失敗してしまうと大きなペナルティ(脱落)があり、流石に厳しいと感じる。

 ただ、これらの処理は、(ゲーム本編と比べれば)多少煩雑であるとは言え、それ自体には駆け引きの面白さはあるし、テーマの再現的な部分もあり、興味深く感じた。


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