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あの頃の私をアップデートする:『エトセトラVOL.2』(特集:We LOVE 田嶋陽子!)

実のところ、この特集を読むまで私にとってのフェミニストは上野千鶴子だけだった。論理的で時に挑発的な文章はとても魅力的だったし、20代前半の頃に『発情装置』を読んだことは強烈な体験として今でも心に残っている。

それに対して田嶋陽子はといえば、正直フェミニストというよりタレントだと思っていた。80年代生まれの私の家でも、やはり毎週TVタックルが流れていたし、私が知っている田嶋陽子は、その中で口論する姿だけだった。

だから今回の特集名が最初に発表されたとき、本当は少し暗い気持ちになった。知人となんとなくフェミニズムの話題になった時「こわいから」と言って取り合ってもらえなかったこともあったし、「フェミはこわい」という世間のイメージを垣間見ることもある。その度に「田嶋陽子がテレビであんなに怒らなければ」と思っていたのだ。

でも、そうではなかった。エトセトラブックスのnoteの試し読みを読んで、壮大な誤解と勘違いだったことに気付いた。そして手に入るとすぐ、申し訳なさを募らせながら一心不乱に読んだ。

結果として、私も津村記久子の言うような「家出娘」の一人だった。しかもろくに話も聞いていなかったのだからついでに不良娘でもあった。若竹千佐子のように、大きなお腹を抱えて図書館に通いつめたこともある。フェミニズムや社会問題の本を読んで、どうにか自分の生き方を正当化しようとした。

北原みのりが書くように、私の母も田嶋陽子の言葉に救われていた一人かもしれない。女だからという理由で教育を受けさせてもらえず、結婚相手を選べなかった母は、「女に生まれた時点で負け」と私によく言っていた。子供の私にはわからなかったが、もしかしたら祈るような思いで毎週テレビを見ていたのかもしれない。

すべての記事において熱量が高く、すべての記事に感じるところがある。

不良娘で家出娘な私は、あの頃を生きなおすことは出来ないけれど、多少は勉強して社会を知った今なら、田嶋陽子のやってきたことの偉大さと困難さ、そして彼女の魅力がよくわかる。今からでも遅くない。これからは私も一緒に「We LOVE 田嶋陽子!」と笑顔で大きく手を広げて言いたい。そう思っている。



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