超自然フリーター ※実話です

伊藤潤二大先生の『超自然転校生』という短編をご存知だろうか。
ある日なんの変哲もない町に、散歩を趣味とする束野と名乗る転校生がやってくる。
超自然を愛する超自然同好会の面々は、同じ匂いを放つ束野を歓迎するが、実はそいつがとんでもないやつだった!
目玉のついた植物、不思議な力を宿す滝、挙げ句の果てに太古の生物が生息する湖。
彼が行くところにはありとあらゆる超自然現象が起こり、町はたちまカオスと化し、、、。

そんな不気味で突拍子のない話、漫画の中だけの話だろうと、みんな思うかもしれない。
しかし実は、僕にも、束野のような力が、宿っている。

始まりは、一ヶ月前。
アパートに帰る途中、ふと空を見れば、何か、大きな円盤が、あり得ない軌道で空を飛んでるではないか!
恐る恐るその様子を伺っていると、それはあろうことか、僕のそばでホバリングを始めたのだ。
あっけにとられる僕をよそに、その円盤は僕の前を歩く数人を、キャトっていったのだ!
でもそれだけでは終わらなかった。
ある日、暇潰しに海沿いを散歩している時だった。
なんだか、海が騒がしい。
そう思い目を向ければ、海辺を慌てふためいて走り回る人々の姿。
一体全体、何が起きてるんだ、、、。
僕は目を凝らす。
するとどうだろう!
波打ち際付近に、食らった人々の血で皮膚を染めた、首長竜の姿が!
袋の中に頭がパラダイスになるなにかしらを入れてすーはーしたことも、ハッピータンの粉を鼻から吸い込んだことも、断じてない。
そいつらは確かに、僕の目の前に、存在していた。
実害も出ていた。
ビーチにいた何人かが、食われたらしい。
その後も、山にハイキングに行けばイエティ的な何かに襲われて、コンビニのそばで鵺の声を聞き、最寄りの駅にはチュパカブラ!

一体全体、この町はどうなってしまったんだ、、、。

しかしふと、僕は気づく。
そう、やつらは、僕の行く先にしか、現れないのだ。

なんてこった。せっかくコロナの規制がなくなったってのに、僕はまた一人、自粛生活をしなきゃならねえのか。
しかし、アパートに篭ればこもったで、隣人の家にメリーさんが来たりとか、踊り場に誰彼構わず私綺麗?と聞きまくる女が現れるかもしれん。
これはまずい。
どうしたものか。
このままでは、この町どころか、世界すら滅ぼしてしまうに違いない!

悩みに悩んだ末、今日僕は、地球を離れる決断をした。
そう、僕がこの星からいなくなれば、超自然現象も終わる。
ありがたいことに、僕の前で数名の人間をキャトっていった円盤は、まだ町の上空にいる。
大きな雲が一つ、ずっと動いていないのがその証拠だ。
味をしめたらしい。
僕は今から、あれにキャトられに行こうと思う。
そうしてどうにか、この地球から離れてもらえるよう、交渉してみる。
いいさ、どうせこんな世界、未練はない。
ただ一つ、不安要素が。
それは僕が、日本語しか話せないことだ。
彼らは日本語を、理解してくれるだろうか、、、。
まあ、Google翻訳があれば問題はないだろう。
ああ、雲が動き出した。
今夜もまた、誰かをキャトる気だ。
時間がない。もうこれ以上、罪のないやつらをキャトらせはしない。
それではみなさまお元気で。ありがとう。

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