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【銀座】香りゆたかな洋食 煉瓦亭

 去年の今ごろ、推しのライブがあったので東京国際フォーラムへ。
 平日だけど、半日の有給休暇をとって、
「お仕事より推し事が大事!」
 と叫び、会社を飛び出したのだ。

 で、東京駅。
 開場の17時半までは時間があったので、まずはご飯。てくてく歩いているうちに……、
「待って。ここまで来たら、もはや銀座じゃん。ていうか……ここ、煉瓦亭の近くだよね!
 重大な事実に気づき、きゅうきょ予定を変更したのであった。

〔煉瓦亭〕は昔なつかしい感じの漂う、
『これぞ日本の洋食』
 というお店で、明治時代からやってるらしい。
 店内へ一歩入れば、うっとりするほど芳醇な洋食の香りただよう、豊かなお店なのだ。
 大学時代。
 お洒落にはちっともお金を使わないかわりに、本や美味しいものには惜しみなくバイト代を注ぎ込む日々を送っていたが、この〔煉瓦亭〕もまた、あちらこちら行きまくってたお店のひとつ。
 当時、部活の仲間にこんなことを言われた。
「そんな食べ物ばかりにお金使って、何も残らないじゃん」
 彼女は演劇ファンで、さまざまな劇団の公演を観にゆくのが何より好きな子だった。
「いや、演劇とそう変わらないよ。美味しい料理は、舌を過ぎ去っても、心に残るから」
 もし美味しいご飯への出費が『何も残らないもの』であるなら、演劇だって同じ。見終わったら何も残らないものってことになるんじゃね?
 ……と返したら、彼女はとても不機嫌そうに引っ込んでいったものだった。

 ちな、わたしも大学時代は、そこそこ演劇も観に行ったりもしてたから、好きではある。
 何事も好きなものってのは、たとえ形には残らなくても、幸せの経験がちゃんと残るよね。

煉瓦亭

 なんてことを憶い出しながら〔煉瓦亭〕へ。
 まだ五時前なので、とても空いている。
 二階席へ案内されて、身だしなみのきっちりしたボーイさんに案内され、わくわくしながらメニューを眺める。
 洋食の定番として、カツレツ、オムライス、チキンライス、ハヤシライス、各種コキールなどなど、どれにしようかとても迷うけど……。
 久しぶりだったので、ここは超ど定番として『元祖ポークカツレツ』に決めた。ライスもつける。
 前はもうちょい優しいお値段だったけど、びっくりするくらい、のきなみ値上がりしている。
 これは……仕方のないことだよね。
 大学時代から、ちょい財布には厳しくても食欲の方が優っていたので、頑張って捻出してたし。
 いや、今までが値上がりしなさすぎてた。
 ただ、
(わたしのお給料も、いい感じで値上がりしてくれぇぇ……!)
 せつに、祈る。

煉瓦亭のポークカツレツ

 やがて出てきたポークカツレツは、ほどよい厚みの黄金色で、ウスターソースをででんと掛け回し、洋芥子も念入りに塗りつける。
 ナイフで切ってみると、ざっくり衣が剥がれて、ポークが顔をのぞかせる。
 それをぱくりと口へ放り込むと、途端、ラードの香りがふんわり拡がり、全身を満たしてくれる。
 照明が明るすぎない、落ち着いた雰囲気の店内で、ただひたすらにこの幸せを味わい続けた。

 そろそろ、東京国際フォーラムのライブ会場は、開場の時間。
 席を立って、お会計へ。
 入り口付近のレジには『煉瓦亭カレーせんべい』なんてものが陳列してあった。100円なり。
 いつの間にこんな……と思いつつ、これもいただいて、あわせて金2800円なり。

煉瓦亭のカレーせんべい

 東京国際フォーラムへ戻ると、すでにして長蛇の列ができていた。
 しめて5000人。
 列の長さ、えぐ過ぎ……とおもいつつ、最後尾に並ぶ。
 高校生、大学生から20代女子が圧倒的に多く、中学生くらいになると母親と一緒というパターンも。
 男の人も最近は多くなってきて、10人に1人くらいの割合。
 ここにいる人たち全員、平日にもかかわらずやってきた、ガチ勢なんだよな……わたし含めて。

 推しのライブもまた、形としては残らないけど、そこで得られたエモさやテンションは、後々まで心をあっためたり熱くしたりしてくれるんだよね。
 さて、チケットはOK、ペンラもOK。
(明日のお仕事は、一日中ずっとふにゃふにゃしながら過ごすだろうな)
 ちらり、そんなことが脳裡をよぎったが、知ったこっちゃないとばかり会場の入り口へ吸い込まれていった。
 いざ、テンションMAXではしゃぐ態勢は、ととのった!

ライブグッズのペンラ

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