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7割を目指す講義NO.22 福祉政策の課題



まずは、現代社会、とりわけ社会変動を読み解くキーワードを3つ見ていきたいと思います。

リスク社会、ポスト工業化社会、底辺への競争です。


1.リスク社会


現代の社会というのは、リスク社会であると指摘している人がいます。これは、ドイツの社会学者であるウルリッヒ・ベック(2015年没)です。


ウルリッヒ・ベック


リスク社会については、ベックが、著書「危険社会ー新しい近代への道」(1988年)において提唱しています。

ベック曰く、これまでの近代産業社会というのは、人類にとって、豊かさや安定をもたらすとされ、富を分配していく。言ってみれば、稼いだものを分配していく社会であった。
しかし、実際のところ、この経済発展は私たちの社会に大きな悪影響も与えています。それが、原子力や放射能問題、地球温暖化や生態系の破壊などの地球環境破壊問題です。このような問題を抱える現代の社会というのは、いわゆる危険(リスク)を生産、分配する社会になっている、しかもグローバル化により世界的なリスク社会が形成されると指摘しています。
要するに、現代社会は、近代産業社会の段階を超えて、危険の分配が重要な課題となった危険社会であると指摘しています。
特に原子力発電、核兵器、放射能問題などは、全人類に対する危険の分配、リスクの分配だと指摘をしています。
そして、富の分配の場合、不公平に偏りのある分配がされる傾向がありますが、リスクの分配は遅かれ早かれ、全ての人に対して分配されます。つまり、このリスクに対しては、貧乏であっても、裕福であっても、安全でないのです。また、国単位ではなく世界社会という単位でしたしか、この問題への対処ができないとされています。
このような指摘によって、危険を生み出す経済や科学への反省と、それらを無批判に支持してきた自己への反省を促しています。そして、危険を特定の地域や集団に押し付けがちですが、危険を特定の地域や集団に押し付けることはできず、世界全体での対処が必要となると言っています。



第34回第17問の選択肢
「ベック(Beck, U.)が提唱した、産業社会の発展に伴う環境破壊等によって人々の生活や社会が脅かされ、何らかの対処が迫られている社会を示す概念として、脱工業化社会がある」との内容の正誤が問われています。

フックン いや、リスク社会だよ

その通りです。脱工業化社会を言ったのは、ベルになります。よって、この選択肢は誤りになります。


2.ポスト工業化社会


現代の社会というのは、ポスト工業化社会であると言っている人がいます。これは、ダニエル・ベルです。

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