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石焼きビビンパまでおいしい焼肉店

熊本県の南部。人吉という盆地の町に「正園」という焼肉店がある。木立の中に建つ蔵造りの建物。プライバシーを感じる落ち着く店内。
厨房を見せてもらうと作業台は見事に磨き上げられていて、ステンレスに顔が映るほど。
その大きさはコンパクトで、いかにも焼肉専門店という面持ち。

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和牛のロースとモモに牛たん。
どれも几帳面に形が整えられていて、もも肉なんてどれもほとんど同じ大きさの長方形。おいしい予感をたたえて並ぶ。
和牛の牛たんなんてのは、なかなかお目にかかれぬ稀少な食材で、色気たっぷりの色合い、姿にまずうっとりです。写真を撮るのも忘れてロースターの上に置き、脂がじんわり滲み出し艶々してくる。じっくり焼いてこんがり表面が焦げはじめるとおいしい匂いが漂ってくる。

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焼き上がったタンのまたうつくしいこと。
断面ロゼ色、焼けた表面は小さな穴が無数にあいている。
噛むとさっくり。
軽く歯切れて噛み続けるとネットリとろける。
そのやわらかさと肉汁のほとばしり出ることうっとりするほど。
ロースはとろける。唇ひんやりするほどたっぷりの脂がとけだし噛み続けると繊維を残さずとけていく。

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肉は繊維の塊です。その繊維をまるで感じずとけていくように感じるということ。それだけ肉はきめこまやかで脂肪とまじりあって一体となっているというコトで、なのに脂っこいかというと決してそんなこともない。それだけ脂がおいしいというコトなんでしょう。
モモもザクザク歯切れて強い旨味を残して消える。もっと味わっていたいのになんでこんなにすぐになくなってしまうんだろう…、ってしみじみ思う。お名残惜しや。

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ここは石焼ビビンパもおいしいんだ…、というのでひとつもらってみんなで分ける。
正方形の木枠の中に分厚い石釜。
中身に比べてサイズは大きく、お米や具材を踊らせるように混ぜられる。
石釜の底には和牛の脂を入れる。
硬めに炊いたご飯をふっくら、軽く装い具材はナムルに和牛のひき肉。
そして生の玉子の黄身。

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辛味ダレをちょっと注いで、スプーンで軽く混ぜていく。
かき混ぜるのでなく、2つのスプーンでやさしくご飯を持ち上げて、ひっくり返しながら具材とご飯が混ざり合うようそっと、やさしく何度も何度も。そのたび空気がご飯とご飯の間にたっぷり抱き込まれ混ぜ始めよりカサが増えたように感じる丁寧さ。
石焼ビビンパを仕上げるときに鍋肌に押さえておこげを無理やりつけようとする店がある。確かにおこげはつくけれどご飯の粒がつぶれてベタッと重たい仕上がりになってしまう。ここはそういう無粋はせず、混ぜては休ませまた混ぜて、ご飯が自然に焦げていくのを待って仕上げる。

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最後は2つに折りたたみ、オムレツ状にして出来上がり。表面パリパリ、淡いきつね色に焦げて仕上がりおいしそう。
ご飯が驚くほどにパラパラです。焦げたところはバリッとしていて、けれどそれ以外のご飯はふっくら。余分な水分を焼かれて吐き出し、タレの旨味とほのかな辛味がご飯の粒に染み込み凝縮されている。

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おいしい。食感にぎやかで、しみじみおいしくしかもお腹を重たくしない。今までいろんなお店でいろんな石焼きビビンパを食べてきたけどこれほどおいしく印象的なものはなかった。キムチもスープもしっかりとした味。感心しました…、オキニイリ。


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