見出し画像

南蛮は南蛮胡椒にネギのコト…。

南蛮を名乗る料理が沢山あります。

南蛮酢に、その南蛮酢で漬けた南蛮漬け。
チキン南蛮。
鴨南蛮に天南蛮、あるいは単純に南蛮そば。
南蛮味噌に南蛮菓子なんてものもある。

南蛮菓子の名前の由来は簡単です。
南蛮渡来のハイカラ菓子で、カステラ、ドロップ、金平糖。ボクが生まれて育った松山には「タルト」というカステラであんこを巻いてグラニュー糖をまぶした和菓子とも洋菓子とも区別がつかないお菓子がある。

それ以外の料理としての南蛮の由来を調べると、案外、単純な理由が見つかる。
ネーミングの決め手は「唐辛子」と「ネギ」。
どちらも南蛮からやってきた食材だと言われてる。
ちなみに唐辛子のかつての呼称は「南蛮胡椒」。南蛮酢には必ず赤唐辛子が風味付けとしてくわえられ、それが南蛮を名乗る由来となっている。
仙台牛たんのサイドに必ず添えられる「南蛮味噌」。刻んだ青唐辛子と味噌を混ぜ寝かして食べるものだけど、それをずっとなんで「南蛮」と呼ぶのか不思議に思ってたんだけど、青唐辛子は南蛮胡椒。ひとつ賢くなりました。

鴨南蛮の名前の決め手はネギ。
江戸時代の南蛮人がネギを好んで食べていたから、ネギを使った料理に南蛮をつけるようになったんだという。
でも、それまでも日本人はネギを食べていたわけだから、南蛮人の食べ方がそれまでの日本人の食べ方と違っていたのかなぁ…、どうなんだろう。そこは新たな疑問で残る。調べなきゃ。


…、というようなことを思いながら、今日のお昼は鴨南蛮。
ひさしぶりの「大庵」。

大人ムードのテーブル席や厨房を眺めながら食事ができるカウンター席。個室もあって使い多彩な使い勝手に対応できる懐深さのあるお店。
ボクが好きなのは表の街路樹を眺めることができるカウンター席。
端から端まで18席。とはいえひとり客は二席分を使わせてもらえるので隣の人が気にならない。お店の外を向いて座るから、当然、背中は客席側を向く。けれど背中の後ろは網代の壁で目が気にならない。
にぎやかなお店の空気を感じつつ、ここだけ違ったのんびりとした空気が流れているようで、蕎麦を楽しむことに集中できるところがオキニイリ。

鴨南蛮。去年あたりから気になるようになった料理で、ここの鴨南蛮は食べてなかった。
鴨南蛮と一口でいってもお店、お店で姿は異なる。
そのほとんどが鴨扱い方で一番多いのはほど良き厚さの鴨胸肉を脂も一緒にこんがりと焼き、薄くそぎ切り並べたスタイル。
レアの鴨肉の肉感的なボルドー色に思わず喉を鳴らす一品。
ところがここの鴨は細切り。しかもももや胸とパーツさまざま。ネギと一緒にフライパンで転がしながら焼いてるようで、肉の表面に脂がツヤツヤ光って見える。
ゴリゴリ歯ごたえたのしめるのもあれば、むっちりとろける部分もあって、ネギには鴨の風味と旨味がまとう。もしこの鴨とネギを平皿にキレイに飾れば鴨の料理が一品できそうな、そんな味わい、食感、たのしい。

相変わらず蕎麦はねっとり粘って歯切れる。どっしりとした醤油の風味の汁に浸かって、徐々にやわさを増していきけれどバッサリ、歯切れる感じは失わないのが上等な汁そばのたのしいところ。
汁の表面がいつも以上にキラキラしてる。天ぷらそばの汁の表面もキラキラします。それは衣から滲んででてくる植物性の「油」の光。ところがこれは「脂」です。それでかキラキラの粒は頑丈。ふっくら膨れてひとつ、そしてまたひとつと脂の粒がまとまり徐々に大きくなってく。
木匙で器に汁をすくって、蕎麦湯を注いでごくっと飲みます。
まったりしている。濃厚な味。口の隅々を脂が覆ってツユと一緒に剥がれてスルンとお腹の中に流れ込む。大人のゴチソウ…、甘露なり。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?