担々麺はなぜ流行るのか?そして麻婆麺はこれから来るのか?

画像1 担々麺が流行ってる。 辛い料理ブームにのって5年ほど前からポツポツお店が増えてきていて、ところが最近、驚くほどの勢いで増えている。かつて新しもの好きの女性のためのラーメン…、みたいな捉え方を業界の人たちはしていたけれど、最近では「男子系担々麺」のようなお店も増えはじめ、本格的に定着している兆しを見せてる。かつてラーメンの部に担々麺課というサブジャンルがあったような担々麺が、いつの間にか「担々麺部」という独立したジャンルが確立しちゃったって感じさえする。オモシロイ。
画像2 先日、男子系担々麺のひとつ。「六坊担々面」というお店に行ってみた。 背中が大きく太い腕のおにぃちゃんがキビキビ働いているのがおいしそうで、若い子たちがたのしみながらやってるラーメン屋って感じにワクワク。悪くない。 メニューは日式と成都式の汁なし坦々麺のほぼ二つだけ。汁ありもあるにはあるけどほとんどの人が汁無しを食べていく。トッピングが何種類か。辛さと痺れを自由に選んで楽しむスタイル。
画像3 こだわりのラーメン屋さんに行くと「自由に食べる」ということがはばかられるようなムードがあったりします。うちの店の味をそのまま食べろって命令形な料理は苦手。 担々麺はそもそも最初から黒酢を足したりお店によっては痺れや辛味も自由に足せる。辛味、痺れを最初から選べるお店も結構あって、自分の好みの味を見つけながらたのしむ感じがいいのかもなぁ…、って思ったりもする。
画像4 担々麺が流行る理由のひとつが、担々麺には一定の枠組みがあってそこから大きく逸脱しない。作り手にしてみれば不自由なのだけど、ラーメン世界は自由すぎて、商品作りの決め手を見つけるのがむつかしい。 食べる側にしてみても、自由過ぎるラーメンブームをおいかけるのに疲れ果てたりすることがある。それを面倒と感じる人が、たどり着く先が中国4000年の歴史じゃないか…、どうだろう。
画像5 みんな食べたことはある。 でももっとおいしい担々麺があるかもしれないと食べ比べていくにつれて、どんどんハマっていってしまうというのは確か。例えばボクのこの店にきてみようか…、と思う気持ちも「運命の担々麺探し」という側面だと思えば説明が簡単になる。
画像6 麺は断面四角いストレート麺。 麺の下には真っ赤なタレ。肉味噌と青菜の茎と至ってシンプル。痺れほどよく辛味はのたうつように舌にからんで後から後からおいしくなってく。顔や体より先に胃袋が汗をかくようなどっしりとした辛味がたのしい。 麺は細いも硬くて、コシがあるというわけでなく鍛え上げられた麺線自体が硬くて、硬さがしかも持続する。食べ進むに従って麺の表面のデンプンがタレに混ざってねっとり麺にからんでとろける。運命の担々麺の一歩手前のおいしさに、次はどこの担々麺をとやっぱり思う(笑)。
画像7 担々麺の次に一体何が来るだろう…、と思っていたら銀座にたのしいお店ができた。「SHIBIRE SOBA 蝋燭屋」という名前。 鰻の寝床の奥が厨房。入り口脇に券売機。メニューは担々麺に汁なし担々麺。酸辣湯麺に麻婆豆腐麺という4種類だけ。最近流行りの四川風の「辛い系麺店」のなぞりではある。
画像8 ちなみに4種類の中で一番人気は麻婆豆腐麺。お店の人のおすすめもそれ。 これ、賢いなぁ…、と思いました。 担々麺が売り物の店は東京中に溢れてる。この店の近所にも担々麺の老舗専門店が何軒かある。だから担々麺を用意はするけど、それで勝負をしようとしない。
画像9 麻婆豆腐のおいしい店もたくさんある。けれどそういう店に限って、麻婆豆腐はご飯のおかずで麺と一緒に売ろうとしない。 しかも麻婆豆腐は担々麺以上にポピュラー。知らない人のない料理。「おいしい担々麺の基準」はあるようでないけれど、「おいしい麻婆豆腐の基準」は結構確立してて、そのおいしさを越える味の提案をすれば、誰にでも評価し易い味になる。だから麻婆豆腐麺で勝負をかける。 オンリーワンの市場を自ら作って、そこの王様になろうとしている…、悪くないなと思います。
画像10 カウンターに座ると紙エプロンに氷水の入ったステンレスのカップがストンと置かれるところ。センスが入った箸立てや調味料がズラリ揃ったカウンター上。工夫されてて好感持てる。 麻婆豆腐麺は辛さ3段階が選べてそれの一番辛いのたのんで食べる。汁は少な目。みずみずしい汁なし麺のような雰囲気。麺は中太。麻婆豆腐からただよってくる肉肉しい香りにお腹がグーッとなる。
画像11 辛くて痺れる。豆腐はフルフルなめらかで、タップリ混じったひき肉はクチャっと潰れて肉汁ジュワリ。歯ごたえがしっかりしていてなかなか旨い。麻婆豆腐だけを食べると舌がしびれて体がざわつく。けれど麺と一緒に食べると麺が甘いのですね。 実際、麺が甘いのでなく小麦の旨味をしびれた舌が甘く錯覚するからなんでしょう。「ぶどう山椒オイル」が味変えにいいですよ…、というので試すと、山椒の痺れに油の甘みが加わって食べやすくなる。辛いのに甘い。痺れるのにやめられない。悔しいほどにハマる味。繁盛するに違いない。

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