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列車に乗って北朝鮮(1)~中国・丹東駅~

これからいよいよ旅へと出発です。

●まずは丹東へ

スタートは中国の丹東駅。
ここから列車に乗りますよ。
隣の駅はもう北朝鮮の新義州駅だという
まさに「国境の駅」です。

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中国と北朝鮮を結ぶ国際直通列車と言えば
北京―ピョンヤン間をまる一日かけて走る
寝台急行がよく知られていて
これだと大都市北京から乗り込めてラクチンですが
その列車が運転されるのは週に4往復だけ。
でも丹東を朝出て夕刻ピョンヤンに着く
夜行ではない列車は毎日運転されてるんです。
なので旅行日が設定しやすい(笑)

そのため乗車前日にはるばる丹東まで行って前泊し
翌朝現地の旅行会社スタッフから
ビザやキップを受け取る段取りです。

丹東駅の発車時刻は午前10時なのに
指定された時間は駅前に8時半だと。
国際線飛行機のチェックインかよ。
なんでまたそんなに早くから~と
眠い目をこすりつつホテルを出て駅へ。

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でも駅前はもうすでにかなりの混雑。
もちろん中国人が多いんですが
なかには胸に例のバッジを付けた人も。

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北朝鮮へ行くんだなぁという実感がわきます。

そして駅前には巨大な毛沢東の像。
なんか、よく見ると中国と北朝鮮って
こういうとこらへんの雰囲気が似ていますよね。
街の建物の画一性や重厚感も。
どちらも共産主義社会なのでそりゃそうか。
中国だけじゃなく、ロシアとかウクライナとかとも似てる。

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そうこうしているうちにスタッフさんと合流。
無事にビザとキップを受け取りましたが
挨拶もそこそこに早く早くと急かされ中へ。
なんだどうしたと思う間もなく
厳重な荷物検査と身体検査を通過して

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あっという間に改札内へと送り込まれました。
会ってわずか10分もしないうちにもうお別れ。
慌ただしすぎてピンときませんよ。
結局顔も名前も覚えてないやw

ともかく待合室へ向かいましょう。
国際列車専用の待合室は2階にあるとのこと。

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そしてエスカレーターを上がると…おお!

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ピョンヤン行き列車の表示です。

いよいよ実感がわいてきました。

●乗るまでが大変…

と、2階へ上がってびっくり。

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ものすごい人波です。
同じ色のパーカーを着た
団体旅行らしき人もたくさんいます。

もちろん国際列車ですから
税関検査、出国審査と関門があるんですが
とにかくどこも通勤ラッシュのような混雑。

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そのうえやっぱり、というかなんというか
割り込み当然、書類不備なども続出で
列は乱れてなかなか前進しません。

なるほど。
集合時間が早かったのも
現地スタッフさんがやたらと急かしたのも
コレだからかぁ。納得です。
そして40分以上かかってようやく突破。
待合室でほっと一息つきます。

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ほぉ、さすが国際列車の待合室。
イスも豪華でゆったり。
ちょいセレブな感じですね。

ここで初めて
さっきもらったキップをゆっくり観察。
表紙はこんな感じです。

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代金はしめて212元なり。
ざっと3,700円ほどですね。安っ!!

中には乗車券と指定席券が
1枚ずつ綴じられています。
こちらが乗車券。

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ピョンヤンが中国語読みで英語表記されてます。
ピンリャン、かな。
下の値段の欄にある
「瑞士法郎」ってなんやねん?と思って調べたら
「スイスフラン」だって。

「ずいしほうろう」→「すいすふらん」…う~む。

でもまぁ答えがわかったら「なるほど」ですかね。
中国語の漢字表記はすごいなw
しかしなぜにスイスの値段が必要なのかは不明。
とりあえず乗車券が26スイスフラン=177元らしいので
差額の35元が寝台料金ということですね。

で、こちらが寝台券兼用の指定席券。
国際列車の乗車券だからか、
大切な欄には時計やベッドなどのイラストが。

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発車時刻は10時、
車次(列車番号)は95列車、
車廂(号車番号)は15号車、
席位(寝台番号)は16番中段…と
中国語がわからなくても
これだと一目で理解できますね。親切。

実は20年ほど前にも
一度乗ったことがあるんですが
その時は手書きのキップでした。
こんな感じ。

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素っ気ないっちゃぁ素っ気ないw
なんか、いくらでも複製できそうです…いやいや。

座席番号がいっぱいあるのは
当時団体旅行で乗車したからです。
いちいち書くのがメンドくさかったのか
全員分が1枚で発券されてました。
さすがに今はコンピューター発券かぁ…などと
しみじみ感慨にふけっている間に
まもなく改札が始まりそうです。

中国の列車改札は日本と違って
発車20分前くらいにならないと始まりません。
なので、つかの間のお上品な雰囲気も
改札時間が近づくとまた全員が殺到…

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再度もみくちゃの洗礼を受けることになります。
もう乗車前から汗だく。
「理性、平和…」と書いてあるのにね。読んでるか?(苦笑)

●ついに列車とご対面

「苦難の行軍」(?)の末、
ようやくたどり着いたホームには
すでに列車が入線していました。

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お、なんか想像よりキレイ(←失礼)。
かつてのゴツい緑の客車ではなく
エアコン完備のスマートな車両です。
荷物車1両+客車5両の6両編成。
この列車は中国国鉄の車両と
北朝鮮国鉄の車両が
毎日交互に使われているんですが
この日は念願どおりの北朝鮮車両。
車体の横には行先表示のほかに
「朝鮮民主主義人民共和国」と刻まれた
北朝鮮の国章が掲げられていますよ。

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これが国際列車仕様の客車の特徴で
中国国鉄の車両なら中国の国章が取り付けられています。

かつての車両は「大陸色」ともいわれる
緑色に黄色のライン入り。
車体の強度を上げていた名残の波状加工も入ってました。

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おっちゃん的にはこっちのほうが好きだなぁ。

ま、時代が時代なんですが
なんか旅情が掻き立てられる気がしますもん。
まさに、古き良き~みたいな(笑)

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    (※1998年撮影)

さてこれが北朝鮮の国章。
アップにしてみましたよ。

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手作り感がにじむ丁寧なつくり。
頂上に赤い星、
両脇を稲穂の束が囲み、
真ん中には代表的な水力発電所、
その向こうに聖地の白頭山が
あしらわれています。
社会主義国的な感じがしますね。

撮影ついでに客車の番号表示もアップで。
さぁここで忘れていた鉄ちゃんの血が騒ぎますw

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上の4文字は朝鮮語で
「一般寝台」と書かれていますよ。
夜行列車ではないけれど
客車は寝台車を使うんですね。
下の段は車両番号。
「タチム30 5322」です。
どうでもいい情報ですが
これ、ニッポンの車両分類と似ています。
「クモハ」とか「オハネフ」とかの。

ここで2文字めの「침(チム)」は
「침대차(チムデチャ=寝台車)」の「침」。
1文字めの「다(タ)」は車両の等級です。
日本語で言う「あいうえお…」が
朝鮮語では「가・나・다・라(カ・ナ・タ・ラ)…」なので
その順番で「タ」は3番め。
特等、1等、2等と数えていくと
「다침(タチム)」は2等の寝台車というわけ。
1等寝台車にあたる「나침(ナチム)」もあって
こちらは「上級寝台」と呼ばれます。
さらに上の「가침(カチム)」は…あるのかなぁ。

…と、ちょと鉄道ファン以外にはわかりにくいですね。
すみません、マニアックな話で。

●いよいよ乗り込み

さて時間もあまりありませんし、
とっとと乗り込みましょう。
すでにたくさんの人が荷物持って列をなしてます。

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どんだけ持ち込むねん!という大荷物の人も。

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これリアルに迷惑やろ…

各車両の入り口には1人ずつ乗務員が立って
乗客のキップをまたチェックします。
さっき改札通ったばかりなのになかなか厳重。
で、そこで気づいたのが
乗務員がおっさんばっかりだということ!

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いや、自分もおっさんなので
エラそうに批判できる立場ではありませんが
かつては北朝鮮の列車乗務員と言えば
飛行機のCAよろしく
若い女性揃いってのが相場だったのに。
正直ちょっと期待してたのでこれは残念…

あとで聞いたところでは
最近は列車の乗客が急増したことで
乗車時や車内でのトラブルも増えて
若い女性ではナメられるようになり、
それに対応するために
年配の男性を配置するようになったんだそう。
これも時代なんですかね。

さて車内。
ドアのない開放コンパートメント型です。

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その内部は向かい合わせの3段寝台。

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日本のブルートレインと同じような感じですね。
…と言っても、
今では「ブルートレイン」を知らない人も増えてきました。

ブルートレイン。それは幼き頃の憧れ。

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今でも大切に持っています。
…いや、そうじゃなくて(笑)

「ブルートレイン」とは
かつて日本各地を結んで走っていた夜行寝台列車のこと。
客車がすべて青色に塗られていたのでそう呼ばれていました。
いま話題の豪華クルーズ寝台列車とは違うんですよ。
あくまでも一般の移動用定期列車です。
それでも当時の鉄ちゃん小中学生にとっては
一度は乗ってみたいあこがれの乗り物でした。
現在は新幹線や高速バス、格安飛行機が発達したので
次第に需要がなくなり消えてしまいましたけどね。

おっと話がずいぶんそれてしまいました。

そう、それを思い出させるようなこの列車の雰囲気。
ちょっと窮屈ではありますが
おっちゃんにはなんか懐かしいな。
車両も新しいのでキレイですよ。

ということで
なんともバタバタとした感じながらも
とりあえず無事に乗車完了。

ここからは一路ピョンヤンへ向けて
およそ5時間の旅の始まりです。

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