坂本晶の「後悔するべからず」

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坂本晶の「後悔するべからず」

こちらは小説専門のブログです。歴史物が多い。はてなブログでも書いてます。https://blog.hatena.ne.jp/sakamotoakirax/sakamotoakirax.hatenablog.com/entries

最近の記事

伊達政宗㉓

長谷堂城を守備するのは、最上義光の重臣志村光安率いる1000の兵。 上杉方は直江兼続が指揮する18000。 長谷堂城が落ちれば、最上は須川のみが防衛線となり、上杉が須川を越えれば山形城までさえぎるものがなくなる。 慶長5年(1600年)9月15日から、上杉は長谷堂城を力攻めしたが、18倍もの兵力差がありながら、城は落ちない。 それどころか、光安は16日には200名の決死隊を率いて、春日元忠の陣に夜襲をかけた。 春日の陣は同士討ちを起こすほどに混乱し、光安は兼続の本陣の近くまで

    • カノジョに浮気されて『八犬伝』かおとぎ話かわからない世界に飛ばされ、一方カノジョは『西遊記』の世界に飛ばされました⑰

      「この世界は、壊せない……?」 悟空の如意棒が空振りしたのを見た海松は言った。 「ほらな、世界を壊せるわけないんだよ」八戒が言った。 「ーーいや、壊せる」悟空は元の大きさに戻った如意棒を見つめながら言った。 「はん、だったらなんで壊せねえんだよ」と八戒。 「俺達には何かが足りないんだ。ここから出ていくだけの何かがーーお師匠様」 悟空は海松に言った。「お師匠様はなんでここから出たいんです?」 「え?ーー」海松は口ごもったが、「あたしは彼に会いたいの」 と言った。 「彼?」 「あ

      • 後白河法皇⑯

        平家は、初めての武士の政権であるため、経験不足な面があった。 後白河法皇の幽閉などは、鎌倉幕府以降の政権では、承久の乱くらいの事件がなければ上皇、法皇の身に触れることはしなかった。 平家は日本の半分を知行国としたが、大体日本の半分以上を直接支配した政権というのは、その後衰退に向かう。元寇の後の北条執権政治も、政情不安を浮けて、北条一門が40ヶ国の守護となった。しかしその後、後醍醐天皇の倒幕運動により鎌倉幕府は滅びた。 ただ半分以上を支配した場合というよりも、統治の正統性が低下

        • 伊達政宗㉒

          最上と伊達は攻守の役割を持たされていて、最上が守、伊達が攻である。 ところがずるいことに、政宗は諸大名が最上領から引き上げたのを見ると、奪った白石城の返還を条件に、上杉と講和してしまった。 白石城を返すと言っても、政宗は返還の手続きはしない。 つまり、「実力で最上領を奪ってみろ」ということなのである。上杉が最上に勝って、中央の形成が東軍に不利ならば、政宗は上杉と手を結んで西軍に寝返る。 一方、中央で東軍が勝った時のために、政宗は留守政景を最上に派遣し、最上に加勢している。しか

          カノジョに浮気されて『八犬伝』かおとぎ話かわからない世界に飛ばされ、一方カノジョは『西遊記』の世界に飛ばされました⑯

          (なんか今回は、最初から気が乗らない話だなあ、独立した植民地の再征服なんて) そう思いながら、佑月は話を聞いていた。 その後、青い人型ロボットに乗り込んで出撃した。 (不思議なもんだな、操縦方法がわかっているというのは) 佑月は、迷うことなくロボットを操縦しながら思った。 佑月が乗るロボットは、地球連邦軍の中でも特別に優れた兵器らしい。 佑月はロボットが持つライフルの照準を定め、次々とメノン軍のロボットを撃ち落としていく。 (まあ、わかるんだけどね、戦わなきゃいけないのは。地

          カノジョに浮気されて『八犬伝』かおとぎ話かわからない世界に飛ばされ、一方カノジョは『西遊記』の世界に飛ばされました⑯

          後白河法皇⑮

          後白河は出家こそしておれども、僧としての位階は持っていない。 そこで、阿闍梨の位が欲しくなった。 阿闍梨になるには伝法灌頂を受ければいいが、後白河法皇は延暦寺から灌頂を受けたくはない。 そこで、園城寺より灌頂を受けようと思い立った。 天台宗の総本山は延暦寺だが、天台宗にはもうひとつ総本山がある。 それが園城寺である。 園城寺は壬申の乱で敗れた大友皇子(弘文天皇)の皇子大友与多王が建立した寺院で、天智天皇、天武天皇、持統天皇の三人の天皇の産湯を使った井戸があるとの言い伝えから、

          伊達政宗㉑

          慶長3年(1598年)8月18日、秀吉が死んだ。 62歳。 (ーーやっと太閤から解放されるわ) 政宗にとって、待ちに待った瞬間だった。 いや、政宗以上にこの時を待っていた者がいる。 言うまでもない。内大臣徳川家康である。 秀吉の死により、それまで水面下にあった問題が表面化するようになった。 朝鮮出兵の時に、戦場で自ら血を流してきた武断派の大名達は、現場も知らずに秀吉の近くにいて実権を握っていた、石田三成らと折り合いが悪かった。 家康はこの溝を利用して、加藤清正や福島正則など、

          カノジョに浮気されて『八犬伝』かおとぎ話かわからない世界に飛ばされ、一方カノジョは『西遊記』の世界に飛ばされました⑮

          (俺は一体ーー) 佑月は思った。(ここで何をしているんだ?) 「ヒーッ!」 と言って、黒いタイツに身を包んだ男達が、佑月に襲いかかってきた。 「ヒーヒーうるせえんだよ!」 と、佑月はパンチとキックでなぎ倒していく。 朝目が覚めたら、また知らない部屋にいた。 外に出てみると、古本屋の奥さんが殺された時代よりは大分後の時代で、現代の雰囲気が濃厚にする。 (だけど看板がなんだか野暮ったいな、なんだろう?昭和か?) そんなことを思いながら、佑月は街を歩いた。 (今さらだが、おとぎ話じ

          カノジョに浮気されて『八犬伝』かおとぎ話かわからない世界に飛ばされ、一方カノジョは『西遊記』の世界に飛ばされました⑮

          後白河法皇⑭

          近衛府の大将は、平重盛が既に右大将になっていたが、このたび重盛が左大将、宗盛が右大将に就任することになった。 武士が台頭して以来、武士は検非違使や弾正台など、武士にふさわしい官職に就いてきたが、近衛府の将官は公家が独占してきた。 独占どころか、出世コースであった。近衛府の大将から大納言、大臣へとなる公家は多い。 つまり、公家は軍事、警察などの官職は武士に与えたが、例え武力は持たなくても、『皇室は公家が守る」というのが公家の矜持だったのである。 しかし、重盛と宗盛がそれぞれ左大

          伊達政宗⑳

          噂は、政宗の耳にも届いた。 恐怖のあまり、政宗は口の中がカラカラに乾いた。 政宗は慌てて小十郎を呼んだ。 「小十郎、そなた江戸大納言(徳川家康)のところに行って、太閤殿下に此度のことの取りなしをお願い致せ」 「承知つかまつりました」 小十郎は徳川家康の伏見屋敷に出かけた。 家康はすぐに小十郎と面会した。 「ーーそれで、大崎侍従殿はこの儂にいかなる御用かな?」家康が言うと、 「は、ぜひとも大納言様には、我らの殿をお叱り頂きたく罷り越しました」と小十郎は言った。 「ほう、それはど

          カノジョに浮気されて『八犬伝』かおとぎ話かわからない世界に飛ばされ、一方カノジョは『西遊記』の世界に飛ばされました⑭

          「おい悟空!貴様の弟弟子の八戒という奴がえらいことをしてくれたな!」 牛魔王が叫ぶと、 「牛魔王の兄貴、八戒が玉面公主を殺したのは申し訳なかった」 と悟空は素直に謝った。 「お猿さん、謝ることないよ」海松が言った。 「そういう訳にはいかないでしょ」 と悟空。 「一体玉面公主にどんな罪があって殺したというんだ!」 牛魔王が言うと、 「えーー?」海松は口ごもった。 「とっととそこにいる豚野郎を差し出せ!」 牛魔王が怒鳴ると、 「これでも俺の弟弟子だ。差し出す訳にはいかん」 と悟空

          カノジョに浮気されて『八犬伝』かおとぎ話かわからない世界に飛ばされ、一方カノジョは『西遊記』の世界に飛ばされました⑭

          後白河法皇⑬

          ところが、 「菩提院殿(基房)は2年前、三条公教殿の娘と婚姻していたにもかかわらず、花山院忠雅の娘忠子を北政所にした。そのような御人のところに盛子はやれぬ」 と清盛は言って、盛子の再婚に反対してきた。 (やれやれ、また随分難癖をつけたものだな) 要するに、それだけ摂関家の荘園を手放したくないのだろう。 この件は、これで沙汰止みになった。 (慌てずに、清盛から摂関家の遺領を取り上げる時期はいずれ訪れる) そう思った後白河法皇は、直後に別の問題に見舞われた。 今度は、延暦寺と興福

          伊達政宗⑲

          「何を言うか小十郎!儂が皆のことを考えておらぬと思うたか!」 政宗も怒鳴った。「弱みを見せれば、太閤につけこまれる。そのため今は領内のことも十分に手当てできないというのがわからんのか!」 「殿、殿はもはや小田原の陣以前の殿ではござらぬ」 小十郎は思わず言った。政宗は会津を攻め取った時のように、自分を高々と維持していたいのである。 政宗は顔色を変えた。しばらく黙っていたが、 「もう良い、小十郎、下がれ」 と言った。 小十郎は退出した。 茂庭綱元は、慶長2年に伊達家に復帰する。

          カノジョに浮気されて『八犬伝』かおとぎ話かわからない世界に飛ばされ、一方カノジョは『西遊記』の世界に飛ばされました⑬

          一方、佑月はーー (なんで俺はーー) と佑月が思った時、 「この紋所が目に入らぬか!」 と、隣の男が印籠を取り出した。 その印籠には、葵の家紋がある。言うまでもなく、徳川家の家紋である。 「このお方こそは先の天下の副将軍、水戸光圀公であるぞ!」 とその男が言うと、周囲にいた者達が一斉に平伏した。 「そこの悪代官、実に不届き至極、神妙にせよ!」 と、隣にいるもう一人の男がいう。すると、 「ははーっ!」 と、目の前にいる平伏した男が声をあげた。 (なんで俺は水戸黄門になってるんだ

          カノジョに浮気されて『八犬伝』かおとぎ話かわからない世界に飛ばされ、一方カノジョは『西遊記』の世界に飛ばされました⑬

          後白河法皇⑫

          清盛は宋との国交樹立による日宋貿易の拡大のため、抜かりなく手を打っていた。 5月、奥州の藤原秀衡が鎮守府将軍に任命された。日宋貿易に用いる金を秀衡に貢納させるため、清盛が後白河法皇に働きかけたのである。 そして嘉応2年(1170年)7月3日、 摂政松殿基房は、法勝寺で法華八講を行うことになっており、法勝寺に向かっていた。 しかし基房の牛車の前に、女性の牛車が通り、基房の牛車の行く手を防いだ。 基房の従者はこれを咎め、乱暴狼藉を働いたという。牛車の中も覗いたのだろうが、問題は女

          伊達政宗⑱

          政宗は、最前線に行こうと思った。 (この朝鮮で、少しでも領土の切り取りをして、失った分の所領を回復せねば) 政宗は、伊達勢が最前線に行くように秀吉に具申した。 「おう、さすが大崎侍従、豪儀である。儂も嬉しく思うぞ) と秀吉は使者に口上を伝えさせたが、肝心の政宗がいくさに出ることについては否定した。 「我が軍は破竹の快進撃じゃ、この先良い折もあろう」 と秀吉は言ったが、秀吉は政宗がいくさに出れば負けると思っている。 (政宗め、自分が1500の兵しか率いていないのを忘れておる)