フットボールのダイヤモンド・オフェンスにおける攻撃サポートの構造化 16  2.2.4 パスのアングル・オプション

2.2.4 パスのアングル・オプション(視野と周辺視野)

「内側レーン」から「セットオフェンス」を開始することが重要であると考える。なぜなら、ボール保持者が「内側レーン」でボールを保持することが、ボール保持者の「視野および周辺視野」においていくつかの利点があるからだ。

なぜ、「内側レーン」から「セットオフェンス」を開始するのか?

「内側レーン」から「セットオフェンス」を開始する効果の1つとして、「内側レーン」にポジションを取るボール保持者が視野の優位性を獲得することができるからであるが、ボール保持者の視野の優位性を説明する前に、視野と周辺視野について説明する。

図23:ボール保持者はダイヤモンド・オフェンスを内側レーンから開始する。


視野と周辺視野

「視野」と「周辺視野」についてSpielverlagerung .com. "The Half spaces"(2014)にこのような説明がある:

視界もしくは視野は、中心窩(ちゅうしんか)と周辺視野からなる。
視力を最大限に利用し、ターゲットと視線を正確に合わせる中心禍と、それとは対称的に、周辺視野はぼやけた、歪んだ映像を提供する。原理的には、周辺視野でも物体は「見える」。視野は、両眼で水平方向に約180−200度、垂直方向に約130度である。

視野の水平方向(約180-200度)と垂直方向(約130度)を念頭に置いて、「5レーン」の「センターレーン」と「内側レーン」にプレーヤーがポジションを取った場合の視野について考察する。

※ここでは便宜的に垂直方向と水平方向の視野および周辺視野を180-200度と仮定する。

Spielverlagerung .com. "The Half spaces"(2014)では、視野の優位性について、「5レーン」の「センターレーン」と「内側レーン」にプレーヤーがポジションを取った場合について、このように説明している:

センターレーンにポジションを取った場合

センターでは両チーム共にゴールの正面に立つことになるので、視野は垂直である。

Spielverlagerung .com. "The Half spaces"(2014)が言うようにゴールに対して正面に立ったときの視野が180-200度であると仮定すると、グラウンドの前方は見えるが、背後は見えない。次に「センターレーン」で、プレーヤーが横向きにに立つとグラウンドの半分は見ることが可能であるが、もう半分はほとんど見ることができないことが推測できる。ゴールも半分が見える程度である。

図24:センターレーンにポジションを取った場合の週


内側レーンにポジションを取った場合

内側レーンの位置からの視野は垂直ではなく、斜めである。

先程と同じ条件(視野が垂直と水平で180-200度と仮定)で「内側レーン」に「斜め」にポジションを取った場合、ゴールが斜め前方に見えることだろう。

図25:内側レーンにポジションを取った場合

次に、Spielverlagerung.com. The Half spaces” (2014)によると:

「内側レーン」にポジションを取るプレーヤーは、中央のプレーヤーと同じくらい多くのオプションを持っている。そして、斜めを維持することでパスゲームをするためのゴールが見える。中央から離れているのでもなく、「外側レーン」でプレーをする必要もない。

つまり、「内側レーン」でボールを保持するプレーヤーは、「センターレーン」でプレーするのと同じくらいのオプションを持っていることになる。なぜなら「内側レーン」の利点はグラウンドの斜め前方内側を見るだけで、相手ゴールが視野に入り、グラウンド中央から離れていないのでプレーの選択肢もセンターでプレーをするのと同じくらいあり、「外側レーン」にも近いので、「外側レーン」でプレーをするのと同様の効果も期待できるレーンであるからだろう。


「内側レーン」で「セットオフェンス」を開始することの利点

Spielverlagerung. com. “The Half spaces” (2014)によると、ボール保持者が「センターレーン」にポジションを取った場合と「内側レーン」にポジションを取った場合の視野および周辺視野についてこのような説明がある:

「センターレーン」でボールを受けた場合のパスのアングルオプション
ボール保持者のパスコース、視野、身体の向き(ゴール正面)を考慮する。

プレーヤーはセンターレーンから相手ゴールに向かって水平に見える。3つのパスオプション(縦パス、斜めのパス、横パス)を見ることができる。

図26:「センターレーン」から見える3つのパスのオプション(縦パス、斜めのパス、横パス)


「内側レーン」でボールを受けた場合のパスのアングルオプション(斜めの視野):

プレーヤーは中央からゴールを斜めに見る。4つのパスのオプションを見ることができる(縦パス、斜め内側と外側へのパス、横パス、バックパス)。
視野はファイナルゾーン(ゾーン3)の方に確保されている。左外側レーンのミドルゾーン(ゾーン2)は見ることができない。しかし、そのゾーンはオフェンス時には重要ではない。

図27:「内側レーン」から見える4つのパスのオプション(縦パス、斜め内側と外側へのパス、横パス、バックパス)

「内側レーン」から「セットオフェンス(ダイヤモンド・オフェンス)」を開始する利点がこの図に示されている。ファイナルゾーン(ゾーン3)の「内側レーン」では、相手ゴールに向かって斜めの視野を確保してプレーをするので、ダイヤモンド・オフェンスのプレーの優先順位にある4つのパスのすべて「縦パス、斜めのパス、横パス、バックパス」が含まれているからである。


左右の「内側レーン」のチェンジは、サイドチェンジと同じ効果がある

Spielverlagerung. com. “The Half spaces” (2014) は、左右の「内側レーン」のチェンジは、サイドチェンジと同じ効果があることをこのように説明している:

内側レーンのチェンジは、戦略的な観点から非常に効果的である。なぜなら、ボールをスペースから他のスペースへ動かすサイドチェンジと同じような選択と機能の自由を持っているからである。

例えば、「右外側レーン」から「左外側レーン」へのサイドチェンジは非常に効果的であるが、技術的に難しい。なぜなら、長いパスをしなければならないからだ。しかし、「内側レーン」のチェンジは、距離にして約20〜25mであるので、短いパスを使って、サイドチェンジと同じような効果が得られる。

図28:「内側レーン」のチェンジ

例えばボール保持者が「右内側レーン」にポジションを取った場合、右外側とセンターのレーンの2つにパスオプションがある(もちろん、縦パスもある)。相手ディフェンスは縦パスのコースを切りながら、外側かセンターかのどちらかの方向にボール保持者を方向付けし、ディフェンス全員でコンパクトな状態で相手オフェンスプレーヤーにプレッシャーをかけなければならない。

反対に「センターレーン」でボールを保持した場合は、もっともダイレクトにゴールへ向かうことが可能であるが、ディフェンスは中央を密にディフェンスするのでセンターレーン内での縦パスや斜めのパスは難しくボールをサイドに展開する必要が出てくる。右サイドか左サイドかというのはあるが、「内側レーン」のようなセンターにも外側にもどちらにも行くことが可能な2つの選択肢はなく、外側へ展開する1つのオプションしかない。

そのように考えていくと、「内側レーン」でボールを保持するということは、センターでボールを保持するよりも相手ディフェンスの密度も少なく、プレーの選択肢も多いので、相手ディフェンスは対応に苦慮すると考えられる。


相手の背後を取る

この章ではオフェンス時の視野と周辺視野について述べたが、相手ディフェンスの立場に立って考えることも大事だ。相手ディフェンスは基本的にボールとマークの両方を同時に見ようとするので、視野および周辺視野は水平方向に180-200度であると仮定する。(プレーをする場所によっては、視野が斜め、横になることもあるが。例えばタッチライン際の1対1のディフェンスなど)。

よく、オフェンスプレーヤーは相手ディフェンスの背後にポジションを取ることが重要であると言われるが、相手ディフェンスの背後にポジションを取るとは、相手ディフェンスの視野外にポジションを取ることであると考える。オフェンスプレーヤーがボールを受けようとする時、自分をマークしている相手ディフェンスプレーヤーがどこを見ているのか、相手ディフェンスプレーヤーがボールを注視しているなら、相手ディフェンスプレーヤーの背後でボールを受けることが可能である。逆に相手ディフェンスプレーヤーがマークしているオフェンスプレーヤーを注視しているなら(そのようなことは頻繁にないが)オフェンスプレーヤーはチームメートにスペースをつくるためにポジションを移動すると良いと考える。フットボールというスポーツは、相手の各ディフェンスライン(FW、MF、DF、GK)の背後をパスやドリブルを使って超えていくスポーツであると考えるので、相手ディフェンスラインの視野外(相手の背後)にポジションを取り、フリーな状況でボールを受けることが非常に大切であると考える。

引用・参考文献:

Spielverlagerung.com. The Half spaces. (16, 9, 2014). http://spielverlagerung.com/2014/09/16/the-half-spaces/

Take it easy (2018/01/05). The Half-Spaces ハーフスペース 翻訳 前編. https://tomex-beta.hatenadiary.jp/entry/20180105/1515155500



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