マエストロ・セイルーロの構造化されたトレーニング(Entrenamiento Estructurado)

今回、ここに紹介するのは、長年FCバルセロナでフィジカルコーチを勤めていたフランシスコ・セイルーロのイニエスタについて書かれた論文からの抜粋です。
(尚、スペイン語から日本語へ訳しているので、翻訳の間違いは多々あると思いますが、お許しください)

私はイニエスタが世界最高の選手だと思うので、あなたに質問することができてうれしい。
アンドレス・イニエスタは12歳から昨年まで、ラ・マシア(FCバルセロナの選手寮)で生活をし、コンディションに構造上の問題はなかった。
だが、彼自身の生物学上の具体的な実践の結果、彼には体力がなく、スピードもなく持久力もなく、柔軟性もなかった。
あなた方は言うだろう。「うそだろう!?」 でも、これは「真実なのです」。「それは、どういうことか?」彼は非常に弱く、ほんの少しの持久力しかなく、速さもなく、すべてにおいてほとんど何もなかった。彼は良いパスを出し、パスをつないでボールを保持することをとてもよく楽しみ、ゴールを決めることはない。彼は自分の正面にいる敵がどんな相手で、どんなシチュエーションでも対応することができる。彼と対戦する相手は大きな問題をかかえることになる。なぜなら、彼は未知の状況を創造し、試合を展開することにおいて高い能力を示す。イニエスタは相手に対して「見せかけ(相手をだます)」のプレイで相手に勝り、いつでもゲームを構築することができる。現在のイニエスタに私たちの練習を行ってもらうとコンディションが良くなり、さらに彼の有能なタレント性が発揮されているように思う。ゲームにおいてのスピード、持久力やゲームの中でのどんな任務も遂行できるように見える。少年期早期の身体能力(コンディション)の素晴らしさにだまされてはいけない。私たちは数多くの小学生から高校生までのサッカー選手の例を知っている。強くて、大きくて、高くて、タレント性のある選手を。彼らはとても有能だった。なぜなら、ゴールを決め、グランドの真ん中を支配し、非常に長い距離を長い時間走ることができ、とても速く、素晴らしいヘディングシュートを決め、素早いジャンプができた。だが、その少年期に素晴らしい身体能力を示した選手は20歳になったときに、他の選手と身体能力も人間のバイオエネルギーも同じになってしまい、素晴らしさが失われてしまう。その理由は、その素晴らしかった選手は今まで何もしなかった。身体能力(コンディション)を最適化することもしなかった。残されているのは彼らの現在の身体構造のみだ。そう子供頃のイニエスタのように。

サッカーは陸上競技ではない

それは、当たり前だと思われる人も多いと思う。
ただ、サッカー選手を評価する時、その選手の1試合の走行距離で評価したり、試合中、この選手は時速何キロで走りましたというようなデータでサッカー選手としてのスピードを評価していないだろうか。

当然、1試合の走行距離が10キロを超えていたら、それは体力がある選手の評価になると思うし、走る速度が速い選手は本当に脚が速いのだろう。
身体が大きくて跳躍力のある選手もヘディングが強いのかも知れない。

はたして、それが本当にサッカー選手の評価になるのか、又、選手をチームにスカウトする、セレクションに合格させる基準になるのか、私はそれが非常に疑問である。

アンドレス・イニエスタの場合

ご存知の方も多いと思うが、イニエスタはスペイン代表として、2010年に南アフリカで行われたワールドカップで決勝ゴールを決め、スペインサッカーの歴史上初めての優勝に貢献した偉大な選手であり、また、FCバルセロナの選手としても、数多くのタイトルと伝説的なゴールやプレーで私たちを魅了してきた選手である。

彼は12歳でFCバルセロナにスカウトされ入団した。

彼のどこが良かったのだろうか?

サッカーというスポーツの特殊性を考えてみたい。サッカーは、誰かがスタートの合図をしてくれるわけではなく、試合中の走行距離を競うわけでもなく、ジャンプ力の高さを競う競技でもない。「いつ、どこで、誰が、なにをするか」が大切であり、自分の意思で自ら考えて行動しなければならないスポーツである。陸上競技のようなテスト、50m走を何秒で走ったとか、12分間走で何千メートルの距離を走ることができたということと、サッカーが上手いということは無関係であると言うことだ。

12歳当時のイニエスタはフィジカル的にどのような選手だったのだろう。
25年に渡り、FCバルセロナのフィジカル・コーチを勤め、現在はFCバルセロナのスポーツ全体のメソッド部門を担当し、大学教授でもあるフランシスコ・セイルーロはイニエスタのプレーの特徴(12歳当時)をこう言っている。

「彼は良いパスを出し、パスをつないでボールを保持することをとてもよく楽しみ、しかし、ゴールを決めることはない。彼は自分の正面にいる敵がどんな相手で、どんなシチュエーションでも対応することができる。彼と対戦する相手は大きな問題をかかえることになる。なぜなら、彼は未知の状況を創造し、試合を展開することにおいて高い能力を示すからである。彼は相手に対して見せかけ(相手をだます)のプレーで相手に勝り、いつでもプレーを構築することができる」

このプレーを構築する能力、試合を展開する能力というのは、数字で計測することは難しく、スカウトや監督、コーチ陣のサッカーを見る力、選手を分析する力にかかっていると思われる。FCバルセロナのスカウトや監督・コーチ陣はその才能を見抜く力があったと言うことだ。

少年期早期の身体能力(コンディション)の素晴らしさにだまされてはいけない。

私たちは数多くの小学生から高校生までのサッカー選手の例を知っている。強くて、大きくて、高くて、タレント性のある選手を。
彼らはとても有能だった。なぜなら、ゴールを決め、グランドの真ん中を支配し、非常に長い距離を長い時間走ることができ、とても速く、素晴らしいヘディングシュートを決め、素早いジャンプができた。

だが、その少年期に素晴らしい身体能力を示した選手は20歳になったときに、他の選手と身体能力も人間のバイオエネルギーも同じになってしまい、素晴らしさが失われてしまう。

その理由は、その素晴らしかった選手は今まで何もしなかった。身体能力(コンディション)を最適化することもしなかった。残されているのは彼らの現在の身体構造のみだ。そう子供頃のイニエスタのように。

フランシスコ・セイルーロが言っていることは、サッカー選手を評価する場合、少年期初期から高校生ぐらいまでの年代の選手は、身体能力で選手を評価することの危険性を私たちに伝えてくれている。

少年期に身体能力の素晴らしさによって、相手選手を上回っていた選手は、それしか頼るものがなく、20歳になり身体能力が平均化されたときに(フランシスコ・セイルーロは20歳になると身体能力は平均化されると言っている)、自分は何も持っていない、できない、ということに気がつかされる。
例えば、パスも上手くできない、シュートも取られる、ヘディングで勝てない等。

なぜなら、20歳になるまでの年齢で、パスやシュート、フェイントなどのサッカーのあらゆる技術や戦術を身につけずに大人になってしまったからである。

反対にイニエスタのように少年期に身体能力が低い選手は、どうしたら相手をかわすことができるのか、どうしたらパスが通るのか、どうしたらシュートを決めることができるのか、どうしたら相手からボールを奪うことができるのかを考えてプレーしていたのである。

20歳になったときに、いままで身体能力で上回ることができた選手と、身体能力が低かった選手、どちらが良い選手かはっきりするはずである。

この現実を知るにあたり、私たちサッカー指導者は、もしかしたら、数多くのサッカー選手の能力を発揮する前に埋もれさせてきた可能性と少年期に身体能力が高い選手に何も教えず、才能を潰してきた可能性がある。

日本にも、イニエスタやシャビ、グアルディオラ、メッシのような選手が本当はいたかも知れないが、原石を原石のまま、埋もれさせてしまっているのかもしれない。

グアルディオラ(元FCバルセロナの選手、元FCバルセロナ監督、現バイエルン・ミュンヘン監督)の名前を上げたが、スペインでは、彼はスペインサッカー史上最高のスピードを持った選手だったと言う評価である。

何がどう凄いのかは、今ここで、グアルディオラについて書くと、とてつもなく長くなるので、また次回にしようと思う。
スペインと日本ではフィジカルの捉え方が少し違うのかも知れない。

参考文献:
Sobre Andrés Iniesta como Mejor Jugador de Fútbol del Mundo
Francisico Seirul.lo de Vargas 5 de febrero de 2010より抜粋

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坂本 圭 EVOLUCIÓN DEL FÚTBOL ...

スペインサッカーコーチングライセンス・レベル3(S級相当)取得。2016-2017シーズン CF Badalona (2部B)で試合分析を担当。FC バルセロナアカデミー品川大井町校でコーディネーター兼コーチ。フットボリスタ・ラボ。浜辺健太フットボールラボ。

マエストロ・セイルーロの構造化されたトレーニング

FCバルセロナで長年フィジカルコーチとして、クライフやペップ・グアルディオラとともに働き、現在はFCバルセロナのメソッド部門ディレクターや大学教授をしているセイルーロの「構造化されたトレーニング」について、彼の論文を引用しながら、このトレーニング理論を説明していきたい。
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