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「へちもん」という言葉をご存知でしょうか?

『へちもん』とは、滋賀県の信楽で昔から使われている「風変わりなもの」「偶然の一点もの」を指す職人達の言葉です。
近年は「へちもん」を敢えて特徴とし、独自の展開をしている信楽の陶器メーカーも出現しております。

信楽の陶器は、一般的な磁器質の焼き物とは味わいが異なり、土の味や釉薬の味を様々に愉しめる焼き物です。

写真は伝統本舗より

特に人の手に頼る部分が多い手作りの陶芸は偶然性が介在し、「へちもん」が生まれるのです。

規格品であっても、全て少しづつ違う「景色」がそこにあります。

日本の伝統的美意識は自然界に準え、『不揃で不規則なものこそ美しい』とされてきました。それが『破調の美』や『わび・さび・もののあはれ・うつろい』などの日本的美意識の基軸になっているのです。

その日本の美意識は、19世紀のはじめ、ヨーロッパにも伝わっていました。

フランスの職人たちは、日本の美意識や哲学について知ると、自分たちの作品の素材となる革にはそれぞれ個性があり、その個性を活かすことが手作りの良さだということを知り、元々ある小傷などを気にしなくなったと言います。
傷やムラは「景色」と捉え、活かす方向に考えるようになったそうです。

元々馬具工房として始まり、これまで数々の伝説的アイテムを世に送り出しているエルメスは今やバッグで有名なブランドですね。

ご多聞にもれず、エルメスの創始者もジャポニスムの洗礼を受けた一人です。

彼は、日本の日常風景が描かれた金唐革の戸棚や、カニやウサギが描かれた江戸時代の鎧などを収集し、1925年にはエルメスの職人が日本の花のモチーフを型押ししたレザーのハンドバッグを制作しています。

その数年後には、メゾン初のウェアや小物ラインで、下駄に着想を得た斬新なビーチサンダルを展開しています。

その他、エルメスの製品には日本の文化やモノからインスピレーションを得て、デザインされたものも多くあります。

大相撲のパリ公演が初めて行われた1986年にはその先駆けとなるスモウバックとも呼ばれる「スマック」が発表されます。

スマック


そして、ヨーロッパの紙幣よりも大きいサイズの日本の旧1万円札が入る財布「オーサカ」も登場しています。
このように、日本人の美意識は欧米のハイブランドにも少なからず影響を与えているのです。

話は元に戻って・・・・
私達、人間も一人一人は「へちもん」なのです。
他人と違うところや、規格に収まらないところこそが個性であり、その人の最大の魅力なのだと思います。

和文化ビジネス思考 講師
成願義夫


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