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決意の証の藍色は愛の証

白無垢

花嫁の白には「嫁ぎ先の色に染まります」という意味があるのは皆様もご存知の通りですね。

ところで『紺屋高尾』という落語や芝居にもなっている物語をご存知でしょうか?

江戸時代、いたって真面目な藍染職人の久蔵は、ある日吉原の花魁道中で見た三浦屋の高尾太夫に一目惚れして恋患いしてしまい、仕事も手につかず食事も喉を通らず、痩せ細り、医者の蘭石先生は「このままでは死んでしまう」と宣告します。

恋患いの理由を知った蘭石先生は、久蔵をなんとか助けたいと思い、3年間みっちりと働いて十両の金を貯めれば高尾に会わせてやると約束します。

その言葉を信じた久蔵は人が変わったように働き、約束通り十両溜めるのです。

本来ならば、貧乏職人の風体では、座敷に上がることなど叶いません。

医者は約束通り手を尽くして三浦屋に久蔵と共に上がり高尾を座敷に呼ぶことに成功します。

いざ、高尾太夫と二人きりになった久蔵はここに来るまでの経緯、そしてこれで死んでも本望だと高尾に打ち明けます。

高尾はこれまで見たこともないほどの誠実な男、久蔵に惹かれ「年期が明けたらお前さんのところに行くから女房にして欲しい」と言い、久蔵と夫婦になる約束をします。

夢心地で家に戻った久蔵はそのことを親方や皆に話すのですが、誰も信じてくれません。

年が改まった二月十五日、紺屋の店先に籠が止まり、中から白無垢姿の高尾太夫が現れます。

周りの人々は大変驚き、それでも高尾の思いが信じられない人々の顔を尻目に、高尾はおもむろに真っ白い手を藍の壺に差し入れ、藍色に染めるのです。

職人の妻になる決意の証の藍色は愛の証でもあったのです。

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成願義夫 Jogan Yoshio プロフィール

伝統文様研究家、装飾画家、アートディレクター、着物デザイナー、グラフィックデザイナー、伝統産業商品開発アドバイザー
株式会社京都デザインファクトリー 代表取締役社長

●代表作と最近の活躍
関西国際空港の初代ウエルカムボードのデザイン。
長野県善光寺の納骨堂の納骨壇の扉デザインの他、納骨堂のデザインは多数。サッポロビールワインラベルなど、手がけたデザインは多数多岐に渡る。

●近況
2018年、秋、成願がデザインした金属製スマホケースが英国ウェールズ国立博物館に永久保管決定。
2018年、冬、和柄をテーマにした民放テレビ番組に解説者として出演。
2019年、春、ジョルジオアルマーニビューティー主催のイベント講師に招かれる。
2019年、夏、京都駅ビルのフォトスポット四箇所のデザインを手がける。2019年、秋、京都高島屋のバイヤー向け『伝統文様勉強会』講師を務める。2020年、埼玉県秩父市の招きで2日間に渡り講演会と伝統デザイン勉強会を開催。
2022年、NHKのテレビ番組『美の壷』に出演。

●近年はグラフィックデザイナー、壁面装飾画家、着物デザイナー、伝統文様研究家、伝統産業の商品開発アドバイザー、講演家として、テレビなどにも出演し、幅広く活躍中。 

著書は、和柄デザイン素材集を10冊以上執筆。総販売数は80万冊を突破。

また、著書の大人の塗り絵『和柄のヒーリングぬり絵ブック』(PHP研究所発行)は、累計7万冊を突破していまだにロングセラーを続けている。

成願の和柄デザイン素材集は日本中のデザイン事務所に、必ず1冊以上置かれていると言われている 。


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