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実はうつ病だった件

先生は言う。ある病気の人の言動にぴったり合致するんですよね。
え、俺って病気なの?ちょっとメンタルが風邪的な状態とかじゃないの?


最近、メンタルが安定しない。
月末に控えたイベントの準備に追われ、はちゃめちゃな数を叩き出すtodoリストを見ていると、考えが全くまとまらない。
あれをやらなきゃ・・・あの人に電話しなくきゃ・・・あれを準備しなきゃ・・・なんて考えている間に、俺の頭のキャパシティはあっという間に満タンになって、思考が感情に変化し、イライラが噴き出す。
こうなるともう、仕事になんかならない。
ただひたすらにイライラし、イライラしていることにイライラして・・・そうこうしているうちに、午前中が終わってしまった。
不思議なことに、昼飯を食って昼寝をしたら、心は落ち着いていた。
朝飯を抜いたから低血糖だったのかなーなんて楽観的に思いつつもなんとか仕事をこなし、本日の業務終了である。

今日は残業もなく、長くハマっているゲームでもしながらのんびり過ごそうと家路につくが、どうしても仕事が頭から離れない。
けどまぁ、ゲームをしてれば仕事を考える余裕もなく、時はあっという間に過ぎて、もう風呂に入って寝る時間だ。

順調な夜のリラックスタイムに終わりを告げたのは、風呂に入っている時だった。
あれがきた。どこからくるかわからない、あれだ。
激烈な怒り。猛烈な不安。
仕事のことなのか、人生そのものなのか、何がいやなのかわからないが、不意にこうした感情に飲み込まれ、全身は硬直し、歯軋りが止まらなくなる。
トリガーは日々のちょっとしたひっかかり。お気に入りのシャンプーがない、ゴミを捨てにいくのが面倒だ。そんなたわいもないことで、俺の心の中にあるドス黒い何かが全身を覆い始め、終いには自由が利かなくなる。
こうなってしまうと、ひたすらに体を震わせ、歯軋りし、手を握り締め、場合によっては自分の頭をぶん殴って、怒りが引くのを待つしかない。
怒りが引く、というよりも、脳が疲労して怒れなくなる、といった感じだが、経験上、しばらくすると落ち着くことはわかっている。
しかしまぁ、辛いものは辛い。リラックスしていたはずが、いつの間にかとんでも無く怒っているのだから。

さすがに私生活でもこんな状態で、仕事にまで影響が出始めた時、メンタルクリニックを受診することにした。

適当にググって見つけたそのクリニックは、驚くほど子どもが多く、やや騒がしい空気は、初めての病院にいる緊張感を少し和らいでくれた。
受付で渡された白い紙に「実のなった木を描け」と言われた時は、いかにもな精神鑑定っぽいのきたな、なんて、少し楽しんでいた。
適当にりんごの木らしきものを描いてしばらくすると、診察室へ入れと、機械音声に呼ばれ、ようやく診断の時間だ。

早口な先生は名前も聞き取れず、この人大丈夫かななんて思っている間に、俺との問答にある特徴を見出したのか、先生は言う。

俺の受け答えは、ある病気の人の言動にぴったり合致すると。

心臓が少し早くなる。

まさか病気て、確かにメンタル豆腐だけど、そんな病気ってほど?

しかしそう言われたら、聞かざるを得ない。
何の病気ですかと。

うつ病です。

・・・・・

うつびょう・・・?
え、俺、うつ病なの?
先週友人とサーフトリップだなんていって離島旅行いってゲラゲラ笑ってたし、先月は妻と新婚旅行いって沖縄を満喫して、最近毎週海行って遊んでるけど、うつ病・・・?

さらに先生は続ける。うつ病の人間は自分はうつ病ではないと振る舞おうとする。うつ病であってはならないという深層心理はうつ病になりやすい人の特徴である。真面目で仲間思い出責任感が強く・・・・・ひたすら、俺のことを言われているようだった。
あくまでうつ病に罹患しているものの話をしているのに、それは一字一句俺のことだった。

あぁ俺、うつ病なんだ。ここまで言われると、認めざるを得ない。
しかし認めてみると、ショックな反面、なんだかしっくりきた。
後になって妻に言われたことだが、体をガチガチに固めて歯軋りを続けるのは普通ではない。妻は俺ほど驚いてはいない様だった。そりゃそうか。ガチガチ歯軋りも一度や二度じゃないもんな。むしろ、なぜそれが普通だと思っていたのか、うつ病だと認めた今では、明らかに異常な行動だと思う。

そもそも、周りの人間皆が楽観的に見えていた。
妻も、しょっちゅう会う友人も、なぜ人生に絶望し憂鬱になりイライラしないのか。いいないいな羨ましいな見習いたいなと思っていたが、どうやら、俺のメンタルが圧倒的にねじれ、病気だったようだ。

そんなわけで、withコロナの世の中でwithうつ病な生活が始まったが、今後どうしたらいいのか。
とりあえず、仕事を休むか。しかし休むといっても家に篭った方がいいのか、好きなことを好き勝手したらいいのか・・・
現時点では、全くわからない。

まずはゆっくり休んでみようかと思うが、その先に、「うつ病でない自分」がいるのだろうか。

うつ病が治ったかなんてわからない、それは、長くうつ病であるからそう言ってしまうんですよ、先生はそういっていた。もしかしたら5年、10年、15年ぐらい前から罹患していた可能性もあるとも言われた。

そうなるともう、うつ病=普通になってしまった俺の感覚は、この先どうなっていくのだろうか。
治した先にスーパーハッピーが待っているのか、そんなことはなく、穏やかで安定したメンタルを手に入れるのか・・・・

こうして、35歳にして、長く続きそうな、俺のうつ病ライフが始まった。
その記録を、今後少しづつ書いていこうと思う。



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