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大相撲九月場所⑨ 照ノ富士ー高安

 九日目。NHKの殊勲インタビュー担当アナウンサー,何だか雑な印象を受けたがあんなものだろうか。


 今日は結びの一番。とにかく照ノ富士の状態が気がかりである。一人横綱,そして大関陣の体たらく。
 今,大相撲の看板を一人で背負っている。力士としての,決して長くはないであろう余命を削ってはいないか気がかりである。

 立ち合い。高安に、左にずれるように当たられる。上手を警戒してことだろう。
 照ノ富士は捕まえにいくが,高安は徹底して距離をとり,押しに徹する。
 途中ようやく捕まえかけると,高安に叩かれる。徹底して組まない。しかし,照ノ富士、よく足が出ている。叩きにも倒れない。よく見て相撲を取っている。冷静だ。
 
 が、この後、高安に中に入られる。これを嫌って逆に叩きを見せるが、これで呼び込んでしまった。膝の状態を鑑みると、これ以上の負荷をかけられなかったのかもしれない。焦りが出たか。

 土俵際までもっていかれるも、何とか凌いで、今度は滅多に見せないけ返しからの叩き。これによく反応する高安を、さらに呼び込んでしまう格好となった。金星献上。奇襲のけ返しが裏目に出た格好だが、結果如何にかかわらず、これ以上相撲が伸びることを懸念していたのかもしれない。
 
 勝った高安は好調を維持。このまま重圧に負けずに千秋楽まで土俵を盛り上げて欲しいものだ。
 二所ノ関親方がいない中で勝ち取る優勝には、高安にとって大きな価値をもつ。
 引いては大相撲の明日にも大きな意味をもつと見る。
 頑張れ高安。


 一方、照ノ富士。やはり場所も進むに従って、膝の疲労が重なってきているのだろう。土俵から降りる姿も、歩く姿も痛々しい。
 対戦相手の対策も厳しい。幕内上位の力士ともなると、どの力士も怪物ばかりである。
 加えて、連日の土俵入りである。

 横綱は土俵入りがあるため、「一日二番相撲を取るようなもの」と言われるそうだ。
 それが過言でなければ、今の照ノ富士にはあまりにも負担が大きすぎる。しかし、その苦悩を分かち合えるのは、鬼籍に入った者を含めても70人程度しかいない。その孤独感もいかなるものか。


 天下の横綱だ。慈しみの目で見るのは失礼だろう。
 だが、照ノ富士にはそうさせるだけの過程があり、それを受け付けんとする矜持も感じる。



 ただただ、照ノ富士が無事に場所を終えることを祈る。

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