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遡る大相撲② -藤井康生-

 テレビで大相撲を観戦していると,当たり日というものがある。
 
 今でいうと,解説に北の富士氏,宮城野親方(元横綱白鵬)などの日がそうである。

 実況も同様である。今なら太田アナや船岡アナがそれにあたる。(あくまでも個人的な嗜好の話だ。)
 
 
 この実況について,少し遡る。(どれくらい遡れば良いかはよくわからない)
 本当に豪華な面々だったと思う。刈屋アナ,吉田アナ,白崎アナ,そして,今回取り上げる藤井アナ。
 声色にも特徴があり,テレビをつけて3秒以内に今日の実況者を当てる,という一人遊びもますます私を浮世から離してくれた。
 

 中でも藤井アナの実況は異彩を放っていた。
 例えば大相撲ならではの言い回し。「柝(き)の音は東から…」
 例えば行司の装束の説明。
 例えば弓取り式の由来。
 
 
 実況をしつつ,相撲文化の伝承という役割も担っていた。実況という仕事が,目の前で起こっていることを声に表す,というものであるならば,藤井アナのそれは明らかに実況の仕事を超えていた。いわば,相撲文化の伝道師。私は藤井アナをそのようにとらえている。
大相撲に対する深い造詣がなければとてもできることではない。
 
 また,相撲文化の護り手としての側面も担っていた。

 本当にこの日の実況が藤井アナでよかった。行司も勝負審判も解説までも口をつぐむ中,藤井アナだけがこの大横綱に苦言を呈してくれた。それが,長く歴史に名を残すことになる白鵬の,そして大相撲の品位を損なうものであることを危惧して。
 
 
 
 すでにNHKを退職された。テレビ中継ではもう藤井アナの実況を聞くことはできない。
だからこそ思う。実況としてではなく,解説として藤井アナを起用してはどうだろうか。
 
立場上,解説を元力士の親方や舞の海氏に譲ってはいたが,実は親方衆の中に交じっても勝敗を分けたポイント,技術面など,かなり正確な解説ができるのではないかと思っている。


 遡るシリーズ第二弾。早速力士から離れてしまった。
 ただでさえ受け取り手の少ない発信をしているのに,さらに横道に逸れる。
 
 しかし,こんな外道をも許容してくれるのが大相撲だと信じている。  

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