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大相撲九月場所⑤ 熱海富士ー豊山

 五日目。
 
 北の富士氏が推す新鋭、熱海富士の一番。
 対するは豊山である。

 どちらもいい四股名だなあと思う。前者は地元の期待を感じるものだし、後者は五穀豊穣を祈願する大相撲の象徴的な四股名といえなくもない。
 デーモン閣下であったか、
「最近の力士は音読みが多い」
なるほど、と。貴景勝、逸ノ城、妙義龍、千代翔馬…そのような四股名が珍しくもなくなったこの時代に、大相撲の古き良さを感じさせる名ではないか。(もっとも、豊山は先代がいるのだが…)

 さて、肝心の取り組みである。
 実は恥ずかしながら熱海富士の取り組みを見たことがあまりないのだ。だから、楽しみでもある。お手並み拝見。

 立ち合い。あれ、熱海富士、腰高くない?
 上体だけ突っ込んだように見える。だから上手が横から回り、回しが遠くなるのでは?そして、深く差されてしまうのでは?
 実際に大きく左の腕を返されているし。
 だから、足腰がそこまで強くないのだろうと思った。

 だが、恵まれた体躯に搭載された力で粘り強く自分の形にもってくると、琴奨菊を思い起こさせるがぶり寄り。
 天性のバネだろうか、伸びやかで若々しい、向日葵のような(季節遅れも甚だしい)相撲を見せていただいた。
 もっと腰を下ろし、下から上手を取るような動きが備われば、もっと相手を押し上げる圧力を伝えられるだろう。


 やや脱線するが、私は「相撲は体重の奪い合い」だと考えている。
 相手の体の下に自分の体を入れることで、自分の体重を増し、安定感を得る。一方で、体重を奪われた相手は軽くなる。
 だから、体重を奪われまいと、そして奪わんと、下から下から攻めるのがセオリーなのだ。

 だからこそ、より腰の下りた、膝の曲がった立ち合いを、と思ってしまうのである。

 その点、さすがは白鵬である。



 対する豊山もこんな番付で燻っているような力士ではない。早く体調を万全にして、上で暴れてほしいものだ。


 心身の疲労はピークであるが、何と充実した本場所開催期間であろう。

 私も大相撲を放さない。

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