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【ADVゲームレビュー】Return of the Obra Dinn / Nintendo Switch(2019)

Return of the Obra Dinn / Nintendo Switch

日本在住のゲームクリエイターであるルーカス・ポープの開発によるインディーゲーム。

あらすじ

1802年、ロンドンから喜望峰へ半年間の航海を行っていたはずの「オブラ・ディン号」が消息不明になった。
しかし、1807年、オブラ・ディン号は突然、イングランドのファルマス港にボロボロの姿で発見される。
船に何が起こったのか。
船員や乗客はどうなったのか。
プレーヤーは、東インド会社の保険調査官として、損害額を確定するために特殊なアイテムを手に調査に出向く。



概要/感想(ネタバレなし)


2018年にPCゲームとしてリリースされ、その翌年にPS4、 Xbox One,、Nintendo Switchに移植されている。
ゲームの肝となるのは、懐中時計「メメント・モーテム」。
死体にかざすことで、その残留思念を読み取り、死んだ瞬間の船の様子を再現できる代物である。
プレーヤーが求められるのは、60人分の名簿と、船内画家が残した絵、および残留思念から読み取れる情報から、その死体が誰なのか、死因は何か、殺されたとしたら犯人は誰か、を特定すること。
アドベンチャーゲームとしては、そこで起こったストーリーに注目したくなるところだが、あくまで損害額の確定が目的であり、主観の描写はなく淡々と作業が進んでいくので、独特な世界観を醸し出している。

また、本作の大きな特徴となるのが、1ビットのグラフィック。
3Dで感覚的に動き回れる一方で、ゲームボーイ時代に遡ったかのようなモノクロ画面により、非常にレトロな質感が強まっていた。
カラーではないせいで、人種の違いを筆頭に、色からの情報が読み取りにくいなど、被害者名や死因の特定の難易度を上げる結果にはなっているが、時代設定の古めかしさを表現するにはぴったりな演出だと言えるのかもしれない。
微妙な色味の違いがあるOSごとの画面イメージをそれぞれ再現しているのも、こだわりがうかがえるのでは。

面白いのは、死体の発見順に情報を集めることになるため、時系列はバラバラであること。
ある程度、章ごとにまとまって情報が開示されるようにコントロールされてはいるものの、おおかた結末が先にわかって、徐々に過去に遡っていく構成になっているので、倒叙的なワクワク感を高めている。
ストーリーが後半になるにつれ、登場人物が減っていく=序盤の不慣れなタイミングでのチュートリアルとして機能する、という配慮かもしれないが、没入感の面でも奏功しているのは間違いない。
それでも、何が起こったかはわかっているのに、被害者が誰だか特定できない、というやきもきを誰もが味わうことになるだろうが、3つ正解が出たところで当たり判定が出る仕様も手伝って、ある程度絞り込むことが出来ていれば総当たり作戦も有効。
腰を据えて短期集中でプレイするのに適したゲームであろう。



総評(ネタバレ注意)



推理については、残された会話の内容から推測できるものもあれば、着ている服から階級や国籍を突き止めたり、どの部屋で仕事をしているかで職務を推定したりして行う。
被害者とは直接関係ない人物の行動に、特定のキーがあったりするので、難易度はかなり高め。
雑学的な知識も必要となり、あてずっぽうでは選択肢が多すぎて当たらず、メモをとったり、検索したりしながら、腰を据えて取り組まないと解決の道はない。
その作業を楽しいと捉えるか、苦痛と捉えるかでプレーヤーを選ぶゲームかもしれない。

ストーリーについても、語ることができる人物がすべて死人になってしまっているので、なんとなく理解するしかできない。
最後に真相が明らかになってのカタルシスや、意外などんでん返しがまっているわけではなく、調査結果が語られておしまい。
もちろん、そこに辿り着けたという達成感は物凄いのだが、光る貝の正体や人魚たちの秘密、王族との関係性など、謎のまま考察に委ねられる部分も多く、もう少しウェットに当時何が起こったのかを説明してほしかった気持ちがないわけではない。

全体的に、やや不親切な感があるものの、ゲームシステムには大いに可能性を感じる。
ファンタジーでもあり、ミステリーでもあり、アドベンチャーゲームを好む層にハマりそうなツボは押さえており、なんだかんだで夢中でプレイしていた。
要望としては、カラー化による視認性の改善と、一度見た残留思念をいちいち現場に戻らなくても見れるようにしてほしい......かな。
前者については、モノクロであることによって流血等の残酷描写の衝撃性を抑えている部分はあるので、一長一短かもしれないのだが。



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