夜間飛行

「夜間飛行 / サン=テグジュペリ」読了。20世紀初頭、当時では前代未聞だった夜間の郵便飛行。暴風雨の中、果敢にフライトに挑んでいった操縦士と、地上で時に冷酷に指揮を下す社長の一夜の悲劇が時にリアルに、時に詩的な文体で書かれている。自分の使命や信念は果たして一人の人の命を超えるか(28)

作者のサン=テグジュペリは「星の王子様」で有名だけど、実は生涯に渡って飛行機に乗り、幾度となく墜落事故に遭い、命の危険を何度も感じた。戦時中、偵察機で飛び立つも行方がわからなくなったのが彼の最期であり、近年になって海中深くから彼の遺品が発見された。

「夜間飛行」には彼が実際に経験したこともきっと沢山反映されているのだろう。真夜中の暴風雨の中、主人公が死を悟り飛行機を上昇させ、雲海の上、静謐な星空の元まで飛行機を上昇させる場面は、あまりにも穏やかで、神秘的で、そして悲しい。まるで時間が止まっていた。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?