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機会を創るだけで貧困問題の解決に繋がるのか?Vol.1


今年の7月で、インドで貧困問題の解決に携わり始めて、4年が経つ。

これまで、スラム街の女性の経済的自立を目指した、お掃除サービスの会社を経営したり、NPOで貧困地域の子どもの教育支援、女性のエンパワーメントなどに取り組んできた。

同時に、日本の高校生や大学生向けに、社会問題について知り、解決策を考案してもらう研修プログラムや講演も多数行ってきた。

社会問題の解決を志す人たちと話していると「どのように社会問題を解決するか?」(=HOW)に焦点を当てることが多いと感じている。

貧困とは、教育、仕事、食料、保健医療、飲料水、住居、エネルギーなど最も基本的な物・サービスを手に入れられない状態のことである。

貧困問題を解決するための解決策(=HOW)は、例えば、
・教育にアクセスできない子どもたちに、質の高い教育を提供するために、オンライン教育を導入する
・読み書きのできない女性に、スキルトレーニングを行い、自社雇用をする
などである。

もちろん、貧困問題の原因やその解決策を考えることは重要だ。
私自身も、そういった「教育」「雇用」などの機会を創ることが解決に繋がると信じて取り組んでいる。

ただ、活動する中で、単に機会を創るのではなく、もっと大切なことがあると気づかされたので、それについてシェアしたいと思う。



私はこれまで、スラム街の女性たちにお掃除のスキルトレーニングを提供し、自社雇用する事業を行ってきた。

SAKURA Home Serviceのお掃除スタッフ

彼女たちは、家庭が貧しく学校に通えず、読み書きができず仕事を得られるスキルもないため、建設工事現場での日雇い労働や、個人家庭でお掃除や皿洗いなどのメイドとして生計を立てている。不安定な雇用で、低収入なため、生活は困難である。

スラム街の様子

さらに、インドにはカースト差別や男尊女卑的な考えも根強く残っており、貧困地域に住む女性たちは、社会的にも経済的にも排除され、周縁化された人々だと言われる。

私が行ってきた事業は、そういった女性たちが付加価値の高いスキルを身に着けることで、安定した収入を得て、経済的に自立することを目的としていた。

その取り組みについて、過去にメディアのインタビューを受ける機会があった。

そこで、インタビュアーが、スラム出身の女性スタッフたちに「早貴さんの会社に入って、良かったと思うことはありますか?」と尋ねた。

彼女たちの回答は、当時の私にとっては、意外だった。

「収入が増えて、子供を私立学校に入れたり、貯蓄をして、保険にも入れるようになったことはもちろん嬉しいし、これまでの私の人生では想像できないことだった。

でも、それ以上に嬉しいのは、"人として対等に接してくれること"、ここでは働く人たちには、"リスペクト"がある。

床ではなく、テーブルで共に食事をすること。
分からなくても、怒鳴らずに、分かるまで教えてくれること。


世界の社会問題の解決に取り組む、社会的企業に投資などを行う、インパクト投資ファンドAcumenのファウンダーも、

「収入が向上することよりも、Dignity(尊厳)が大事である」

と書いており、著書を読みながら、自身の経験を振り返って驚くと同時にとても共感したことを覚えている。



単に、教育や雇用の機会を創れば解決というわけではない。

彼ら彼女たちは、たまたま経済的に貧しい環境に生まれただけである。

他者にどのように接してもらったら嬉しいだろうか?
どのように扱われたら嫌な気持になるだろうか?

そんな想像力をもって、社会問題の解決に取り組んでいくと、意義のある取り組みになるのではないかと思う。


~つづく~


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