なぜ人は壁を作ろうとおもったのか?
過日は横須賀市にある農園レストラン、SYOKU-YABO農園(※1)で
竹を組んで土壁を塗るイベントをやってきました。
その時感じたことを感じたままに書き記そうと思います。
身近なもので壁を作ってみたい!!
NAO(ショクヤボのスタッフでもある(※2))のこの企画、コンセプトは身の回りである素材で作る。
言わばこんな便利な社会以前の、当時の当たり前の建築を再現するを
コンセプトに、2023年末にNAOが三浦の竹部の人たちと竹を切り出し、
それを加工して竹小舞という日本建築の壁下地をつくり、その上に
このショクヤボにある土で壁を塗ってみる!
この壁が風雨にさらされどのように変化していくか?を
見守るイベントであります。
と言うことで、切り出した竹を割いて、組むところから私はスタートです。
竹を切ったり6つ割りにする道具
なるほどなるほど。建築の仕事では下地の竹を組むことはやったことがあったけど、竹を割って、柱も組んでとなると構造力学も絡んだりしたり。
素人ながらも割と上手に出来たかな。
竹って、便利ねぇ。
今でも身近にあって、竹林を管理する上でも間引きしたほうが良いらしく、
割と手軽に手に入る。とはいえ、労力は大変なものだろうと推測されます。
三浦にも逗子市にも竹部があるようで、こういった活動にただただリスペクトするところです。(※3)
竹で下地を作るところまでで、第一回のイベントとなりました。
当日は、わわわ祭(※4)たくさんの和の若手職人さんが集結していて、和ろうそく・和菓子・畳・竹部などなど若手の日本の伝統技能のアップデートが楽しめた一日でした。
そこにある素材で。
イベントDAY2
今度は出来上がった竹小舞に土を塗っていく。そのための準備をするのです。
土壁の土は粘土質のものが良いとされ、粘土質の多いところをトレジャーハントするわけです。
今回は以前田んぼだったところのあぜを掘り下げてみました。
意外と表層はシルトとか砂の多い土。
あぜの側面を掘り下げてみると頂きました。粘土です!!
土みてほじくって喜ぶ48歳でw
後で気が付きますが、ここを掘っていると水が出てくるのですよね。
もしかしたら、水路になっていて粘土が堆積しやすいのかな?
そんな推測を立ててみます。
こうやって、土をほじくり壁にする。ちょっと罪悪感がありつつも
もしかして泥棒の語源って!!。。。。って全然違いましたw
後で調べてみてください。最下段にリンク貼っときますw(※5)
手に入れた粘土に藁を押切、混ぜていきます。
もう一つのイベント、獅子舞を研究する
DAY2もショクヤボのわわわ祭(和輪話)で、今回は獅子舞から地域のコミュニティを考察する若者(※6)とのコラボイベント
獅子舞を土の絵の具で装飾することもやってみました。
色土を細かくして絵具にしてみました。
獅子舞から見た地域コミュニティという切り口が非常に面白く、
イベントの後の和輪話タイムも非常に盛り上がりました。
土壁をぬってみたよ
もう、ここまで準備すれば後はぬるだけだ!!!
塗っちゃえ塗っちゃえ!!
竹と土で出来た壁はしなやかにエネルギーをいなすみたいだ
ということで出来上がりました。
自然なながれで、塗るところ塗らないところもあり、
この雨がまるかかりの状態の謎の物体。いつまで原型をとどめているのか。。。
実は後日談があり、このイベントの二日後に雨と風の強い日があって土が流されてしましましたw
いや、厳密にいうと。
雨の降る中の強風で、壁が揺さぶられ土が落ちたようです。
なんてこった・・・・ということで改めて塗りなおしたのがこちら。
もう落ちないかな?剥がれないかな?大丈夫かな?と心配な私w
塗り終わった後に、竹の柱を揺さぶってみた。。。。
グラングラン壁が波を打つのです。。。。
なんか心配だなぁ。。。。と思ったその時。
あ、これ大丈夫だと。
土が固まって、ものすごい風が吹こうと地震が起きようと
エネルギーを吸収して、壊れるとしても土壁が破壊されるだけで、
この竹の物体がおそらく倒壊しないなと。
自然の巨大なエネルギーをも吸収してしまうこの構造体。
日本の伝統建築の理が垣間見れたようです。ふむふむ勉強になるなぁぁぁぁ
伝統建築は大きな地震が来たら倒れるのだけど破壊されないように。
人を押しつぶさないようにもたれながら倒壊するように計算されている。
自然の驚異に抵抗することをあきらめ寄り添うしなやかな考えが
ほれぼれする。頭いいなぁ日本人って。
人類で初めて土で壁を作ろうと思った人の気持ちを想起してみた
一連のイベントは、左官とか建築などには興味がなくとも楽しんでいただけたイベントになったのではないかな?
NAOたちが企画したイベントは文字通り若いからこそ伝統の文脈も
分からずにやってしまうことが出来たり、伝統に正解など存在しないというのが私の持論でもあり、そもそも伝統とは現在進行形中であると考えています。
なので、彼ら彼女らの捉える伝統は私のそれのちょっと先をいってるかもしれない。
なんせ、こういう若者がそれぞれの文脈をもって表現していることに
大変感動するし、素直に面白いと思いました。ありがとう。
そして、私は今回のイベントを通じて分かったことが一つ。
土を掘っているときに、人類で初めて土を壁にしようとした人を
想像してみた。
スコップもない時代にもくもくと土を集め、せっせと運ぶ。
仕事じゃない。何のためだ?
家族を守ろうと必死だったんだろうなと。
大切なものを守ろうと土を掘ってたんだろうなぁと。
左官という役割の本質が見えたような。
雨風、外敵。大切なものを守ろうと
強固にするため。地震の時にはエネルギーを吸収するため。
そしてただ構造として作るだけに飽き足らず、
様々な風景を表現するために鏝という道具を発明して、
技術を研鑽してそれを伝聞のみで伝わってきて
今私の手元にもある。
なんか、表層の良いところだけでちょろちょろやってるなぁぁぁ。俺w
と改めて、無形の文化財として承認された意味も分かりました。
なんとも、純真無垢なきっかけから端を発したこのイベントに
壮大な時間と世界のロマンを感じたのでした。ありがとう。
リンク集(文章内にありました注釈リンクです)
※1ショクヤボ農園
※2NAO
※3逗子竹部
※4ショクヤボ和輪話祭
※5泥棒の語源
※6獅子舞を研究するいなむくん
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