中編「天使の病室」 2015
その女の子が僕の病室に突入してきたのは、僕がベッドで目を覚ました次の日のことだった。
スライド式のドアを開け放ち、突風の勢いで飛び込んで来た彼女の姿を隠すように、宙に舞い上がった長い黒髪が遅れてその肩に滝のように降り注いだ。簾のように顔にかかる髪の隙間で、彼女は俯き大きく肩で息をする。ぜえ、はあ、と喉の奥で嵐が鳴って、細い手足はそれに合わせてぐらぐらと揺れていた。まるで老婆だ……。杖の代わりに携えているのは、点滴の袋がぶら下がるキャスターだった。
震える右手でもこもこと