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大豆イソフラボンはPMS対策として効果的?

PMSの症状を和らげる方法として、大豆製品の摂取が一般的に良いとされています。公益財団法人豆類協会によると、大豆はたんぱく質を多く含むだけでなく、飽和・不飽和脂肪酸やリノール酸といった脂質、ビタミン類などといった栄養素を含む食材です。

パルシステム共済生活協同組合連合会によると、生理前に多いプロゲステロンと、生理後に多いエストロゲンといった2つの女性ホルモンがうまく切り替えられないことでホルモンバランスを崩し、PMSを発症します。対策として、大豆に含まれるイソフラボンが体内でエストロゲンと同じ働きをするとして、大豆製品を食事に取り入れることを推奨しています。

NIKKEI STYLEは、大豆イソフラボンの摂取で頭痛や胸の張りといったPMSの症状が改善すると指摘しています。

果たして、大豆イソフラボンはPMS対策として効果的なのでしょうか?

大豆イソフラボンで、身体的な症状の軽減が期待できる

大豆イソフラボンの摂取と、PMSによる身体的な症状に関連が見られたという研究がいくつか存在しています。

「Intake of dietary soy isoflavones in relation to perimenstrual symptoms of Korean women living in the USA.」では、特定の月経症状については食事から摂取する大豆イソフラボンとの関連が見られたため、大豆イソフラボンとPMSの間にも関連する可能性があることを示唆しています。

研究は、28〜40歳のアメリカに在住する韓国人を対象におこなわれました。対象者はMDQ(月経前および月経期間中に起こる身体的・心理的な症状の変化を測定するためのアンケート)と食物摂取頻度調査をおこないました。

結果として、イソフラボンの摂取量と月経期間中のMDQの総計スコアには有意な相関があったことが報告されています。また各項目のうち、自律神経と行動に関して有意な相関が見られたと述べています。

「Effect of consumption of soy isoflavones on behavioural, somatic and affective symptoms in women with premenstrual syndrome.」では、大豆イソフラボンを含む分離大豆たんぱく(大豆たんぱくの原料となる脱脂大豆から、たんぱく質だけを分離したもの。たんぱく質分が90%前後の製品)が、PMSの特定の症状を軽減する可能性があることを示唆しています。

研究は、18〜35歳の23名を対象に

・大豆イソフラボンを摂取した実験グループ
・乳たんぱくを摂取したプラセボグループ

の2グループに分けておこなわれました。研究の結果として、大豆イソフラボン摂取によって頭痛と胸の張りといったPMSの症状に減少が見られたと述べています。また生理痛やむくみの症状も減少し、乳たんぱくを摂取したプラセボグループと比較して、統計的に有意な差が見られたと報告しています。

「月経前症候群に及ぼす大豆イソフラボンの影響」は、イソフラボンを含むサプリメントが、PMSによって起こる身体的な症状を軽減するために効果的な処置となるかもしれないと示唆しています。

研究は、18〜21歳の日本人女性54名を下記2グループに分けておこなわれました。

・1日20mgのイソフラボン錠とプラセボ錠を摂取するグループ(26名)
・1日40mgのイソフラボン錠とプラセボ錠を摂取するグループ(28名)

対象者は、イソフラボン錠とプラセボ錠を2周期と3周期に分けて摂取しました。調査前・調査期間中に、身体・心理的な症状などを記入するアンケートと、卵胞ホルモンと黄体ホルモンのピーク時に採尿と採血がおこなわれました。

調査の結果として、1日40mg大豆イソフラボンを摂取したグループで腹痛や腰痛、頭痛などの身体的な症状は軽減しており、統計的に有意な差が認められたと報告しています。心理的な症状は身体な症状と比べて症状の軽減が見られなかったものの、不安感のみ軽減したと述べています。

ただしこの研究は、論文内に公益財団法人不二たん白質研究振興財団から2003年度に助成を受けている旨が明記されていないことなど、中立・公平性に疑義が残ることを指摘しておきます。市販されているPMSサプリメントの科学的根拠には、関係機関などから支援や助成を受けた研究がもとになっているケースもあるので、慎重になる必要があります。

一方で否定的な見解も

「Soy, fat and other dietary factors in relation to premenstrual symptoms in Japanese women」は、大豆製品や大豆イソフラボンの摂取と月経前の症状は関連していなかったと報告しています。

研究は、19〜34歳の日本人を対象におこなわれました。対象者は日本語に翻訳されたMDQと半定量的食物摂取頻度調査(食品の摂取頻度と摂取量を測定するアンケート)などをおこないました。

結果として、大豆製品と大豆イソフラボンの摂取量は、月経期間(月経前と月経期間中)のMDQの総計スコアとは有意な相関がなかったと報告しています。ただし、総脂肪と飽和・一価不飽和脂肪酸、穀物・じゃがいも・デンプンを摂取した場合は、月経前のMDQの総計スコアと有意な相関があったと述べています。

大豆イソフラボンによる体への影響を指摘する意見も

しかし、大豆イソフラボンとエストロゲンの関係については懐疑的な意見もあります。

ハーバードメディカルスクールによると、イソフラボンは骨などの部位ではエストロゲンのような役割を果たすものの、他の部位では異なる可能性を示唆しています。たとえば乳房であれば、細胞の成長と分裂によって、がんの発生リスクを増加させる可能性があると指摘しています。

またイソフラボンに、抗エストロゲン効果がある可能性についても示唆しています。イソフラボンはエストロゲンの効果と競合・妨害することや、ホルモン生産に関与している酵素を阻害して、エストロゲンレベルを抑制する可能性についても述べられています。

大豆が、抗エストロゲンもしくはエストロゲンのような効果を持っているかは、そもそも体内のホルモンがどれだけ存在するかで決まるかもしれないと述べており、大豆イソフラボンとエストロゲンの関係はまだ十分に明らかになっていないことが強調されています。

大豆イソフラボンだけに頼らない

これらの研究を踏まえると、PMSの身体的な症状(頭痛や腹痛など)は大豆イソフラボンの摂取によって症状の軽減が期待できる可能性があります。しかし心理的な症状に関しては、不安感のみ軽減したと報告されている研究はあるものの、身体的な症状と比べて根拠が十分ではないように見えます。

月経期間中に起こる症状に対しては、大豆イソフラボンによって症状の軽減が期待できるとしている研究もあるため、月経期間に身体的な症状の悩みを感じているなら、豆乳や大豆製品など手軽に取り入れられる大豆製品から大豆イソフラボンの摂取を試してみても良いかもしれません。

しかし見解が対立している点や、大豆イソフラボンが体に与える影響を危惧する声があることを踏まえると、大豆イソフラボンの効果だけに頼らず、医療機関への相談などとあわせた選択肢の1つとして考えておくべきでしょう。

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