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願いは叶うべきか

1990年代、「意志」「願い」をテーマにしたマンガ・アニメがありました。『魔法騎士レイアース』と『天空のエスカフローネ』です。この二つを御存知ない方は、ネタバレを含む内容ですのでお引き取りを。どちらも傑作です。

前者では全てが意志の力で決まり、後者は願い・幸運で全てが決まる事を否定しました。

願えば全てが叶う世界、願っても運命に抗えない世界、とだけ書くと前者が圧倒的に耳触りが良いですが、本当にそこは理想郷なのでしょうか?

(原作を御存知の方は、前者『レイアース』が功利主義的悲劇の上に成り立つ世界なのは御承知でしょうが、そこは今回無視致します)

後者『エスカフローネ』の最終盤、願えば幸運がもたらせられる世界が実現し、願いや欲望の暴走のまま、人々は殺し合いを始めてしまいます。意志の力で全てが決する中では、人々は我先にと、我欲の追求に走ってしまうのです。

意志で全てが決する世界、そこには最終的に、殺戮の後に荒廃した大地のみが残るのです。

ここまではフィクションの話ですが、ここからは現実の話になります。

現実の人間の欲深さを知る大人なら、意志で全てが決まるなど真っ平御免でしょう。しかし同時に、数え切れない挫折をも容認せねばならない事も御承知でしょう。

我々の生きる現実世界は、『レイアース』と『エスカフローネ』のどちらでもない事を欲しますが、昨今、努力は環境が許す者の特権とされる事実が明らかにされつつあります。固定的身分制度にならぬ事を祈りますが、さて。

人間が願いを抱く、それはごく自然な事です。しかし願いが叶えば必ずしも良い事だとは、思えないのが私の本心です。

以上です。

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