思春期の水曜日 其一八

 前席の女子が、学級委員との紙片のやり取りで一喜一憂している。
 他人の恋路に一喜一憂するなんて、くだらなくて幼い――――とは言えない。おれも、一喜一憂した人間の一人だ。何故なら、おれも女子学級委員に恋していた者だからだ。手を繋いでの登校風景を見て、おれは傘を落とし、しばらく呆然として動けなかった。雨に濡れ、涙を流し、立ち尽くした。同じ思いを味わった生徒は、男女双方に何人もいたはずだ。
 あの二人は、あらゆる要素に恵まれた存在だ。整う姿、文武両道の実績、人望、芯の強さ……今のおれには全ての面で太刀打ちできない。
 しかし、今に大きな事をして、世界一になってやる。何の世界一かは、これから決めるとして……

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