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【詩】卑怯者

闇の中で盛る暗朱の焔をぼうとながめている
自らの臓物をひろげあの焔に投げたところで
この腐敗はきっと止まること無く続くのだ

あの日きみから奪ったことを
あの日のきみであそんだを
あの日きみを欺いたことを

きみを禁忌の淵に投げ落とし そして

あの日きみから逃がれたことを
そしてきみから隠れたことで

不形に踊る火の中で歪むその
喜悦驚嘆悲嘆痛苦恥辱憎悪そして

諦念そして

絶望それが

そのすべてのきみの顔が

いつまでも循環しながら
いつまでも いつまでも

熱波とともに私にからみ
いつまでも 嘲笑わらう私を灼きながら

まとわりつくのだ
逃さんぞ逃さんぞと
今度は私を 嘲笑わらうのだ
永劫 いつまでもいつまでも

あの日きみから奪ったことも
あの日のきみであそんだことも
あの日きみを欺いたことも

きみを禁忌の淵に投げ落とし そして

あの日きみから逃がれたことも
そしてきみから隠れたことですら

私は悪と感じない

愛を語って奪い
愛を騙ってあそんだ
愛を足元に散らしながら欺き

きみを
禁忌の深淵に突き落として私は逃げ
隠れた

疲れたのだ飽きたのだ飽きて棄てたのだ
傲慢だよ しかし

私は悪と感じない
罪だよ しかし

私は悪と感じない
善と悪はせめぎ合わず私の中で分離する

悪ではないが悪ではないが

逃げて隠れたその村で

奪った
    贈られた
もてあそんだ
    求められた
欺いた
    欺かれた

アカノタニンに刻むが如く
禁忌の深淵で喘ぐきみを貶めたその時

それはなによりも醜い異形の腐肉

 私は

卑怯に堕ちた

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