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【エッセイ】俯瞰してハッピーオーラ


けやき坂46/ハッピーオーラ

陰気な話です

 まず最初に断っておくと本記事、けやき坂46ともその楽曲であるハッピーオーラとも全く無関係で、むしろハッピーと言うよりは陰気な話なのでご承知願いたい。

 実は私のプレイリストにこの「ハッピーオーラ」という曲が入っているのだが、これはなぜかというとセンターが「かとし」だったから。その一点である。

 数年前に中番で夜の遅い時刻、帰宅途中の車内でラジオを聴いていると、なんだかやや低めの声、ダルダルの喋りでしかし、司会のおっさんとの会話が変に面白い女子がいて、それが「かとし」こと加藤史帆という人でアイドルをしているとのことだった。私はアイドルに疎いので帰宅後さっそくこの人についてググっててみると、どえらい美人でどうもラジオでのダルダル女子とイメージが合わず、なんか面白い子だなーと思って気にかけていて、彼女がセンターを務めているこの曲に出会ったと、そういうことである。ちなみに他のメンバーのことは名前も知らない。

で、あるけれども、本記事は全くの別件である。


 ハッピーについて書こうと思っていて、なんとなくハッピーオーラというワード、ハッピーオーラという曲が頭に浮かんでしまったのでタイトルに持ってきたのだけど、そもそも私は自分の目に見えないものは信じないという夢も希望もないおっさんなので「オーラ」というものの存在を信じていない。
「それならタイトルを変えろよ」
という声が聴こえてくるが、私は変えない。

 居酒屋に若い者達を連れて行ってお勘定の際「ここは俺が払う」とふんぞり返っておきながらいざ勘定書きを見た瞬間にその勢いが萎み「やっぱここは割り勘でよろしく」みたいな事をすると、もうそれ以降、若者の私に対する評価は最下層に落ちてしまう。そういう「一度出して引っ込める」というようなみみっちい、けちくさい行為というのは身を滅ぼすので私はしないのだ。
 なので一度提出したタイトルは変えないことにしている。以上。

愚痴る人

 陽気な曲調希望に満ち溢れたタイトルを冠されたこの曲のMV冒頭は、陰気な顔をした人たちのオンパレードである。

 わりと現代、どこの世界に行っても現実的にこういう暗い顔をした人というのが多くいるようには思う。

 当職場において人手不足解消のため、期間工を雇い入れていて私の所属する班にも配属されている。年齢的には中年なのだが礼儀正しいし動きも俊敏だし作業にも積極的に関わろうとするという、ちょっと珍しいくらいにやる気のある人なのであるが、職場の人間関係にも馴れてきた昨今、家庭内特に細君に対しての不満をちょいちょい口にするようになっていて、それ系の話をする時は明らかにイラつき、顔つきも険しくなり、先程まで俊敏に見えた動きも俊敏を通り越して投げやりになってくるし、喋り方もダルダルでかとしのようであるのだが、そこはおっさんなのでかとしのような可愛げもなく、イラついて脳も回っていないので会話にテンポもオチもなく、ただひたすら陰気なのである。

 家庭というのは外での疲労を回復できる場所というか、リセットする場所というか、どちらかと言えばポジティヴな空間だと思うのだが、外にでてこれだけ家庭内の愚痴が溢れるということはこの人、家に帰っても疲労は蓄積されるばかりだろうしむしろ気分をリセットするのは作業中の方なのではないだろうか、家庭というのは極めてネガティヴな空間になっているのではないだろうかと心配になり、しかし当方の基本方針として「プライベートには口を挟まない」という事を徹底しているので、ただひたすら「ふんふん、なるほど」と相槌を打つだけで彼の悩みの根幹には一切変化がみられないわけである。

ハッピーな場所

 しかし私はその時、考えていた。

 この人がハッピーになるのにはどうしたら良いのか?

 で、実際にこの人がハッピーになるにはこの人自身が家庭内のギクシャクした関係を改善するためのアクションを起こす覚悟を決め、実行する以外にない。それ以外にはない、以上!

 このように確定してしまったので、この人の悩みについてはどうでも良くなってしまい、私の脳内では彼がハッピーに過ごしている映像が再生されていた。

以下、各自脳内で映像化し再生してください。

 ハッピーというとやっぱ夢の世界テーマパーク、テーマパークというとディズニーランドみたいなありきたりな妄想。

 ここで登場するのは彼本人のみであるということを周知していただきたい。ハッピーは個人的なことであり、細君やご子息はちょっとここでは遠慮をしてもらうことにする。
 ハッピーの象徴「東京ディズニーランド」、そこに38歳のおっさんが一人でやってきてソワソワと行列に並びゲートをくぐった途端に両手を広げ、時折ジャンプしながらパーク内を駆け抜けていく。
 まず彼は売店でキャラクターモチーフのポシェットを購入、それを方から斜めがけにし、更に巨大ネズミの耳を模したカチューシャを購入して七三刈り上げの頭部に装着、アーケードを全力で駆け抜けフォトスポットではひとりスマートフォンを掲げて自撮りを決める。
 その後はひたすらアトラクションを巡っていくわけだが、わりと二人掛けだったりするシートにひとりで乗り込み、満面の笑みではしゃいでいて、その有様を見る周囲のカップルやら修学旅行の女学生やらはあからさまにドン引き、時折どこからともなく「キモッ」という声さえ聴こえてくるしかし、彼は一切意に介さず、どこまでも全力でパークを楽しみ抜いている。
 でっかいポップコーンのバケツを抱えて顔面が変形するほどに頬張り、スキップを踏みながら巡り歩く。
 やがて時は夜。クロージング・タイムである。
 彼はうら寂しい気持ちになり少し涙ぐんでいる、そこに。
 ドッカーンという凄まじい轟音を伴って特大の花火が打ち上がると、かれの気持ちも再び頂点までぶち上がる。
 花火が上がるたびに、両手両足を広げて大きくジャンプ!
 周囲のカップルはギョッとして飛び退り、修学旅行の女子学生はキャッキャと喜んで彼を撮影し始める。
 やがてゲートを抜け、パークの外にでた彼の表情は、狂気を孕んだ幸福に満ち溢れていた。


やべぇぞ、画像生成AI (笑)

俯瞰

 このような妄想、妄想と言ってしまうと身も蓋もないのだけど、これをたとえば自分を主人公として再生してみる。

 実に気持ち悪い。

 いやでもね、主人公は自分でも他人でも良いのだけど、こういう外からの視点、言い換えればカメラのような視点でハッピーな時を過ごしている空想をすると笑えることは多々あるわけで、同僚に陰気な顔で陰気な話をして相手から陰気な返事をされて更に陰気な気分に堕ちるよりは、多少無理はありながらもそれでも人は安く簡単に誰にも迷惑をかけないでしあわせに過ごせるんじゃないかなーと。

ふと。

ほんとうにふと。

想ったりしたわけ。

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