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NYCB〈スプリング・ガラ〉でオンライン公開されたソフィア・コッポラ映像・上演作品についての二言三言とヴィンテージ資料少々初公開---覚醒の喜びと別れの気配が交錯する32分の愉悦

〈 contents 〉
NYCB史上、もっとも太っ腹な2021デジタル・スプリング・ガラ
覚醒の喜びと別れの気配が漂うソフィア・コッポラ映像
作品①ロビンズ振付『ダンシズ・アット・ア・ギャザリング』
作品②バランシン振付『デュオ・コンチェルタント』
作品③バランシン振付『リーベスリーダー・ワルツァー』
作品④ ジャスティン・ペック振付『ソロ』
作品⑤ バランシン振付『ディヴェルティメント第15番』

 ソフィア・コッポラが監督した、オーロラ姫の夢を追体験させるかのような映像作品だった。
 灯りの消えたニューヨーク州立劇場。深閑としたロビー。無人の客席。出番を失った無数のトゥシューズとチュチュ。年末定例の『くるみ割り人形』で使われるはずだったネズミの被り物。劇場内部を淡々と映し出すモノクロ映像が、劇場を襲った眠りの唐突さと眠りにつくまでの刹那の恐怖を浮き彫りにし、いつ覚めるともしれない眠りの長さを見る者に体感させる。眠りについた劇場は、ふと男性が現れたのを機に覚醒し始める。彼はオーロラ姫の幻影を追い求めるデジレ王子だろうか。ロビーで、あるいは舞台袖で1組の男女が夢ともうつつともつかないデュエットを踊り、また別の男性が舞台に立ち、無人の劇場と語らうかのようにソロを踊る。そして画面はカラー映像に切り替わり、オーロラ姫とデジレ王子の婚礼さながらの祝祭感溢れるバレエが始まった。

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